HPKIカード(医師資格証)とは? 利用するメリットから申請方法、今後の動きまで徹底解説|医師の現場と働き方

HPKIカード(医師資格証)とは? 利用するメリットから申請方法、今後の動きまで徹底解説

近年医療DXの推進とともに、医療福祉分野でHPKIカード(医師資格証)の普及が推進されています。HPKIカードは具体的にどのようなもので、利用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。

本記事ではHPKIカードの概要や利用するメリット、申請方法、などを解説します。電子処方箋の導入が推し進められている今、HPKIカードも今後さらに普及していくと考えられています。本記事を参考にして、HPKIカードへの理解を深め、必要に応じて申請を行いましょう。

<この記事のまとめ>

  • HPKIカードとは、医療従事者や福祉従事者の持つ国家資格や管理者等資格の証明書となる運転免許証サイズのカード。
  • HPKIカードを利用すれば、医師であることの証明が簡単にできるようになる他、電子処方箋の発行・閲覧も可能になる。
  • 2024年7月31日の集計で医師全体のHPKIカードの取得率は23.6%となっており、まだまだ高いとはいえないが、今後電子処方箋の普及とともに取得率が上がっていくと考えられる(※)。


※参考:日本医師会 電子認証センター「医師資格証 保有者数の推移 2024年7月31日集計」

DXが進んでいる病院の医師求人
をご紹介します。

先生の希望条件をぜひマイナビDOCTORの
キャリアパートナーにご相談ください。

1.HPKIカードとは?

HPKIカードは、医師をはじめとした医療従事者・福祉従事者の持つ国家資格や、管理者等資格を証明することを目的としたカードのことです。HPKIはHealthcare Public Key Infrastructureの略称で、日本語では保健医療福祉分野の公開鍵基盤と言い表されます。

HPKIカードを発行できるのは、厚生労働省の準拠性検査に合格した認証局のみです。医師の場合、HPKIカードを発行するのは日本医師会認証局になります。日本医師会認証局は公開鍵基盤(PKI)の枠組みを使って設立された機関です。

例えば医師の場合、HPKIカードに搭載されたICチップには医師資格を証明する電子証明書が格納されており、コンピューターやICカードリーダーで読み込めば、医師資格を持っていることを証明できます。また、カード自体にも医師資格保有者であることが分かるように記載があり、コンピューターやICカードリーダーがない場面でも、医師であることを証明することが可能です。

カードの種類によっても異なりますが、HPKIカードには以下の内容が記載されています(※)。

●資格証の名称(医師の場合「医師資格証」)
●HPKIロゴ(2017年1月以降発行分に限る)
●氏名
●生年月日
●資格登録番号(医師の場合「医師会員 ID 番号」や「医籍登録番号」)
●資格証の有効期限(医師の場合5年)
●カードID
●カード発行日
●資格証所持者の写真
●資格保有者であることを示す文言
●発行機関(医師の場合「公益社団法人 日本医師会」)

いずれの内容も日本語・英語で記載されているため、国外でもご自身が医師であることを証明できます。

※参考:日本医師会 電子認証センター「医師資格証について」

2.HPKIカードが導入された背景

HPKIカード導入の始まりは、厚生労働省医政局に設置されている医療情報ネットワーク基盤検討会が2004年9月にまとめた最終報告書までさかのぼります(※1)。

この最終報告書は、2000年に成立した「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」や、2005年に全面施行が決まっていた「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」を踏まえて、医療情報ネットワーク基盤のあり方を提言したものです(※2)。最終報告書では、「今後の医療現場でのIT推進を効果的に運用する仕組みとして、保健医療福祉分野の公開鍵基盤の整備が必要である」と提言されました。

これを機に具体的な保健医療福祉分野の公開鍵基盤の整備が進められ、2005年にはHPKI認証局の共通運用ルールとして「保健医療福祉分野 PKI 認証局証明書ポリシ」が策定されています(※3)。また厚生労働省はHPKI認証局を設立し、証明書ポリシにのっとった認証局との相互承認を認める認証局構築や運営を開始しました。

厚生労働省の政策として提言されたにもかかわらず、導入当時、HPKIが浸透したとはいえませんでした。しかし、2023年1月に電子処方箋の運用が開始されたことや、2023年4月にオンライン資格確認が原則義務化となったことにより、HPKIの重要性が再度見直されるようになり、HPKIを管理するためのHPKIカードの認知度も高くなってきています(※4)(※5)。

※1 参考:日本医師会 電子認証センター「HPKIと日医認証局について」

※2 参考:一般財団法人医療情報システム開発センター「はじめてのHPKI 〜実装の手引き〜」

※3 参考:一般財団法人医療情報システム開発センター「はじめてのHPKI 〜実装の手引き〜」

※4 参考:厚生労働省「電子処方箋の運用開始日について」

※5 参考:日医on-line「「オンライン資格確認の導入の原則義務化」と「オンライン資格確認等システムを通じた患者情報等の活用に係る診療報酬上の評価の見直し」について」

3.HPKIカードの役割

HPKIカードの役割は、カード所持者が国家資格や管理者資格を有していることを証明することです。HPKIカードは以下の27の国家資格と、管理者等資格を証明できます(※)。

▶国家資格
 ●医師
 ●歯科医師
 ●薬剤師
 ●臨床検査技師
 ●診療放射線技師
 ●看護師
 ●保健師
 ●助産師
 ●理学療法士
 ●作業療法士
 ●視能訓練士
 ●言語聴覚士
 ●歯科技工士
 ●管理栄養士
 ●社会福祉士
 ●介護福祉士
 ●救命救急士
 ●精神保健福祉士
 ●臨床工学技士
 ●あん摩マッサージ指圧師
 ●はり師
 ●きゅう師
 ●歯科衛生士
 ●義肢装具士
 ●柔道整復師
 ●衛生検査技師
 ●公認心理士

▶管理者等資格
 ●病院長
 ●診療所院長
 ●管理薬剤師
 ●薬局開設者
 ●その他の保健医療福祉機関の管理責任者

4.HPKIカードを利用するメリット

医師がHPKIカードを利用すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。2つのメリットをご紹介します。

4-1.医師資格の証明が楽になる

医師がHPKIカードを利用するメリットの一つは、医師資格の証明が楽になることです。

日本では、特定の資格を持つ人だけが独占的に業務に携わることを認める業務独占資格があります。医師や看護師、薬剤師も業務独占資格の一つで、その他にも弁護士や行政書士なども業務独占資格です。例えば弁護士の場合、弁護士バッジが資格を有している証明になりますが、これまで医師を証明するものは医師免許証しかなく、物理的に携帯が可能な資格証明がありませんでした。

運転免許証と同サイズで財布などに入れておけるHPKIカードなら、簡単に持ち運びができるため、いつでも医師であることを証明できます。厚生労働省医政局が公示した「公益社団法人日本医師会が発行する医師資格証の提示による医師の資格確認について」では、医療機関などでの採用の際、医師免許証の提示による資格確認に加えて、HPKIカード提示による資格確認も認めるとしています。

また、券面に必要な情報が記載されているので、災害時など緊急事態においては、HPKIカードを提示することで医師であることを証明することが可能です。日本医師会は医師がJMATなどの災害派遣チームとして派遣される際は、HPKIカードを携帯するように推奨しています。日本航空が航空機内で医療援助が必要になった場合にスムーズな援助を可能とするために設けている「JAL DOCTOR登録制度」では、登録の際にHPKIカードが必要です。

すぐに医師であることを証明できるようになれば、その他の緊急性の高い場面でもスムーズに人命救助に貢献できる機会が増えるでしょう。

4-2.電子処方箋の発行・閲覧ができる

電子処方箋の発行・閲覧が可能になることも、HPKIカードを利用するメリットです。

前述した通り、HPKIカードには電子証明書が格納されたICチップが搭載されています。この電子証明書を使用すれば電子処方箋への署名ができ、閲覧も可能です。HPKI電子署名を用いることで、医療文書の保管や交換もできるようになり、よりスムーズに医療情報へアクセスできるようになります。

さまざまな研修会でスムーズな受付ができるようになることも、HPKIカードを利用するメリットです。医師資格証向け出欠管理システムを導入した医師会が実施する生涯教育制度や認定医制度、かかりつけ医機能研修制などの研修会では、機器にカードをかざすだけで受付が完了します。また、医師確認証ポータルを利用すれば、これまでに受講した研修会履歴が簡単に確認でき、単位管理も行うことが可能です。

5.HPKIカードの申請方法

HPKIカードを申請する流れをご紹介します。

5-1.必要書類を厚生省の認証局へ送る

まず厚生労働省の認証局に必要書類を郵送しましょう。

必要書類は以下の通りです。

発行申請書(原本) 6カ月以内に撮影した無背景の顔写真を貼り付ける
住民票の写し(原本) 発行日から6カ月以内で、個人番号・住民票番号が無記載のもの
身分証(コピー) 以下のうち1点
●日本国旅券(有効期限内のもの)
●運転免許証(有効期限内のもの)
●運転経歴証明書(2012年4月1日以内に発行されたもの)
●住民基本台帳カード(有効期限内のもの)
●マイナンバーカード(写真付き / 有効期限内のもの / 表面のみ)
●官公庁発行職員身分証明書(写真付き / 張替防止措置が施されているもの)
医師免許証(コピー) A4サイズに縮小コピーする(縮小が難しい場合は原寸サイズでも可)
裏面に記載がある場合は、裏面も同封する

発行申請書は、日本医師会電子認証センターのホームページでダウンロード可能です。身分証のコピーでマイナンバーカードを使用する場合、通知カードは利用できません。

また、医師資格証で旧姓や通称を併記したい場合や、申請書に記載する姓と提出する書類の姓が異なる場合は、旧姓もしくは通称が分かる公的書類の原本も必要です。

医師の場合、上記の書類の送付先は「日本医師会電子認証センター」になります。

住所:〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16

ただし2024年8月現在、ICカード不足により、HPKIカードの発行は一時的に停止されており、カードレス型の「HPKIセカンド電子証明書」の先行発行が行われています(※)。HPKIセカンド電子証明書は、本来HPKIカードに次いで発行されるもので、HPKIカードに格納されている電子証明の代わりとしての利用が可能です。

※ 参考:日本医師会 電子認証センター「医師資格証(HPKIカード)新規お申込み」

5-2.発行費用を支払う

次に発行費用を支払います。

ただし日本医師会会員の場合は、新規発行時もしくは5年ごとの発行の際は料金がかかりません。紛失や破損など、全ての再発行は原則5,500円(税込)かかります。有効期限が切れた場合や、戸籍の変更を伴う姓の変更があった場合、再発行料はかかりません。

日本医師会の会員でない場合、発行には5,500円(税込)がかかります。発行費用が発生する場合は支払用払込票が届くので、指示に従って支払いを完了させましょう。ただし、マイナポータルからの新規発行申請のみ、当面は無料です。

日本医師会の会員でない場合、戸籍の変更を伴う姓の変更による再発行を除いて、原則全ての再発行に5,500円(税込)がかかります。以前は年間利用料が発生していましたが、2021年4月請求分からは無料となっています(※)。

※ 参考:日本医師会 電子認証センター「医師資格証(HPKIカード)新規お申込み」

5-3.発行完了通知を受け取る

医師資格の確認や、データ登録など全てのプロセスを経て問題がなければ、発行作業完了後にハガキによる発行完了通知が送付されます。

発行完了通知には、HPKIカードを受け取れる期間や場所などが記載されているので、詳細を確認しましょう。また、受け取りを希望する医師会に連絡を入れ、受取日時を相談してください。

5-4.医師会へ出向いてHPKIカードを受け取る

事前に相談した日時に、希望した医師会に出向いてHPKIカードを受け取ります。

受け取りの際は、受け取った発行完了通知と身分証明書の原本が必要です。忘れずに持参しましょう。受け取りの際には発行完了通知に署名し、担当者に渡します。

6.申請から受け取りまでの期間

HPKIカードの申請から受け取りまでにかかる期間は明確には示されていませんが、通常数カ月程度かかるとされており、目安は申請から1.5〜2.5カ月程度です。特に支払いが発生する場合は、受け取りまでに時間がかかるので、できるだけ早めに申請を済ませましょう。不備があればさらに時間がかかるため、必要書類をしっかりと確認した上で、申請を行ってください。

また前述した通り2024年8月現在、HPKIカードの発行は一時停止となっており、代わりにHPKIセカンド電子証明書が発行されています。申請を行って、HPKIセカンド電子証明書初期登録用QRコードが発行・発送されるまでの期間は、以下の通りです(※)。

●日本医師会会員:1.5カ月程度
●日本医師会非会員:発行費用の支払いから2.5カ月程度

7.HPKIカードの普及率

2024年7月31日に集計されたデータによると、HPKIセカンド電子証明書の先行発行を含めたHPKIカードの取得率は医師全体で23.6%です。日本医師会会員に限定した場合の取得率は、30.3%となっています(※)。

電子処方箋の運用が開始された2023年1月以降、取得率は急激に上昇していますが、まだそれほど取得率が高いとはいえません。これは電子処方箋がそれほど普及しておらず、現状HPKIカードの利用機会が多いとはいえないことが影響していると考えられます。

また、日本医師会会員と非会員で取得率に差があるのは、日本医師会の会員でない場合、取得時に費用が発生することが影響していると考えられるでしょう。

※参考:日本医師会 電子認証センター「医師資格証 保有者数の推移 2024年7月31日集計」

8.HPKIカードをめぐる今後の動き

以前と比べるとHPKIカードは認知されつつありますが、前述した通り、現在はまだ十分に普及していないのが現状です。

今後電子処方箋がさらに普及すれば、電子証明書が必要不可欠になるので、HPKIカードの普及は進んでいくと考えられます。ただし2023年12月27日から、医師が電子処方箋へ署名する際に必要な手続きが、マイナンバーカードでできるようになりました(※)。そのため、マイナンバーカードを取得しているのであれば、HPKIカード取得にそれほど必要性を感じない可能性もあります。

しかし、HPKIカードは電子処方箋以外にもさまざまな場面で利用できるので、今後利用シーンが整備されれば、取得はさらに進むと考えられるでしょう。

※参考:デジタル庁「マイナポータルを通じた国民生活の利便性向上」

9.HPKIカードをはじめとする医療DXの進んだ病院を選ぼう

医療DXが進んだ病院への転職を希望しているのなら、医師専門の転職支援サービス「マイナビDOCTOR」もご活用ください。専任のキャリアパートナーが、転職活動を全面サポートいたします。

DXが進んでいる病院の医師求人
をご紹介します。

先生の希望条件をぜひマイナビDOCTORの
キャリアパートナーにご相談ください。

[キャリアの情報収集におすすめ]
勤務事情に関する記事一覧はこちら

NEW CATEGORY ARTICLE医師の現場と働き方

RECOMMEND ARTICLEおすすめ記事

CATEGORY記事カテゴリ

医師転職ナレッジ
意外と知らない医師の転職市場。ここでは、医師の転職市場全体の動向や、診療科目別のトレンドなど希望のキャリアを実現するナレッジを紹介いたします。
医師の現場と働き方
このコンテンツでは、勤める環境によって、医師がどんな働き方になるのかをデータや現場レポートを交えて紹介いたします。
DOCTORY(ドクトリー)
「Doctor=医師」+「Story=物語」+「Victory=成功、喜び」から成る造語です。第一線で活躍される先生方のキャリアや生き方に関するお話をうかがい、若き医師たちの指針となるようなメッセージをお届けします。
スペシャルコラム
最新の医療関連情報はもちろん「開業」のヒントや「お金」の話など、医師のライフスタイルを豊かにする情報満載。
世界の医療NEWS
世界の医療ニュースの中から、厳選した記事をギュッと凝縮して紹介します。1日数本を1分で、サクッと読むことができます。日々の情報収集、話のネタ探しにお役立てください。

求人検索

まずは【勤務形態】を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください