在宅医療専門医とは?医師の役割や年収、求められる資質やスキルを紹介|医師の現場と働き方

在宅医療専門医とは?医師の役割や年収、求められる資質やスキルを紹介

患者さんの気持ちに寄り添い、生活に根ざした医療行為を提供する在宅医療専門医の需要は高まりつつあります。待遇も高年収になりやすく、社会的にニーズが大きな領域で活躍したいと望む医師の選択肢のひとつです。

本記事では在宅医療専門医の役割や求められる背景、年収、必要なスキルや資格について解説します。在宅医療の現状や第一線で活躍するためのスキルが分かるので、キャリアの方向性に悩む医師の方はぜひご覧ください。

〈この記事のまとめ〉

  • 在宅医療専門医の仕事は、計画に基づき定期的に患者さんの元を訪れる訪問診療がメイン
  • 在宅医療専門医は特定の診療科目にとらわれない幅広い医学知識や手厚いサポート力が求められる
  • 転職で役立つ専門医資格は「在宅医療専門医」「老年病専門医」「家庭医療専門医」

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1.在宅医療専門医とは?

在宅医療専門医は、自宅や入居施設など患者さんが住み慣れた場所で医療行為を提供する医師の中で、日本在宅医療連合学会によって一定の経験・専門性を認定された医師のことです。以前は在宅医療に対応できる医師は少ない傾向にありましたが、今や都市部を中心に一般的な治療となりつつあります。在宅医療専門医が求められる背景や治療内容は以下の通りです。

1-1.在宅医療専門医が求められる背景

在宅医療専門医へのニーズが高まった理由には、少子高齢化に伴う在宅医療の需要増が挙げられます。2020年9月時点での高齢化率は28.7%に達しました。(※1)2025年には団塊の世代が全て高齢者になり、高齢化率はさらなる上昇が見込まれます。

※1 出典:総務省統計局「1.高齢者の人口」

高齢者人口は増加の一途をたどる反面、少子化で労働人口の減少がみられます。医師も例外ではなく、病院に駆け込む高齢者を担う受け皿が確保できないという深刻な問題が生じています。このような事情から医療の場を医療機関から患者さんの自宅へと移そうとする動きが活発化し始めました。

医科診療のうち在宅医療が占める割合にも増加の傾向がみられます。数値は3.4%と小さいながら、2008年から2018年で点数は約1.8倍に伸長しました。医科診療全体に占める点数の伸びは約1.3倍なので、需要が激しい医療領域でも在宅医療は右肩上がりの分野だといえます。(※2)

年齢階級別の伸びでは、0〜19歳、20〜39歳、75歳以上で2008年比で2倍以上の利用率に達しました。老化や病気の影響で通院が難しい高齢者に限らず、若年層でも在宅医療を希望する割合が増えています。

「令和元年版高齢社会白書」によると、治る見込みがない病気を発症した場合、60歳以上の人の約半数(51.0%)が「自宅」で最期を迎えたいと希望しています。(※3)理由には「住み慣れた場所で最期を迎えたい」「最期まで自分らしく好きなように過ごしたい」「家族との時間を多くしたい」などが考えられます。高齢者の心情と合致する在宅医療を担う医師への需要は高い状態が続くでしょう。

※2出典:経済産業省「高齢者だけじゃない!需要増す在宅医療」
※3出典:内閣府「令和元年高齢化白書」

1-2.往診との違い

医師が患者さんの自宅に訪問して診察を行う場合、往診と訪問診療に分かれます。両者は定義が異なるため、正しい意味を把握して混同しないよう注意しましょう。

往診は予定外の事情で、突発的に医師が患者さんのいる場所に出向いて診療することです。けがや病気の影響で通院できない方が診察を受けるための緊急の手段と扱われます。一方の訪問診療は医師が通院不可の状況を理解して、診療計画に基づき定期的に自宅や入居施設に赴いて行われる治療のことです。

一般的に在宅医療は医師が患者さんやご家族と話し合いを経て、計画的に行う治療や経過観察などの行為が該当します。つまり、訪問診療が在宅医療のメインです。医師による診察の他、看護師が訪問して身の回りの世話をする訪問介護、理学療法士による訪問リハビリテーションなどが含まれます。

また患者さんがいる場所と医療機関との距離によっても、訪問診療が受けられるかどうかが変わってきます。自動車で30分以内に到着できる距離感が理想的で、少なくとも16キロメートル以内の距離にある位置関係が求められます。容態が急変した時に訪問できない環境では十分な医療サービスの提供につながらないためです。

2.在宅医療専門医の役割

在宅医療専門医の役割を知るには、まず在宅医療の定義を明確にすることが重要です。全国在宅療養支援医協会による定義は以下の通りです。(※)

在宅医療の定義として、「医療を受ける者の居宅等において、提供される医療。」と定義する事が出来る。外来・通院医療、入院医療に次ぐ、「第3の医療」と呼ぶ場合もある。

※出典:一般社団法人全国在宅医療支援医協会「Geriatric Medicine 高齢者の在宅医療 -実践ガイド-」

平たくいうと、在宅医療は病気や老化の影響で医療機関に赴くのが難しい患者さんに対して、医療従事者が提供する医療行為です。

在宅医療を考える際に切っても切り離せないのが地域包括ケアシステムです。患者さんが住み慣れた地域で最後の時間を有意義に過ごすために、医療や介護、住まい、生活支援サービスが一丸となって住民をサポートする体制を指します。

在宅医療専門医は、介護施設や自治体などの外部と適宜連携を図りながら医療に励む必要があります。例えば、日常的に患者さんの様子を知っているケアマネージャーから情報を受け取ることで、生活状況も取り入れた診断を行えるようになるでしょう。地域包括ケアシステムによって、医療と介護を両立させていくことが大切です。

また在宅医療専門医は地域医療の担い手になることや、医療チームのリーダーになるという役割があります。さまざまな医療従事者・関係者を統括し、体制を構築したり指示を与えたりしていかなければなりません。一口に医療従事者といっても、訪問看護の看護師や訪問歯科診療の歯科医師・歯科衛生士、訪問リハビリテーションの理学療法士・作業療法士、栄養指導の管理栄養士などさまざまです。職種や所属を越えた連携が求められるため、高いコミュニケーション力やリーダーシップを備える必要があります。

3.訪問診療という働き方はきつい?

訪問診療に対して、オンコール対応が伴うハードな勤務だと考える方はいるでしょう。しかし、実際には常勤医と非常勤医で役割分担がなされ、メリハリのある働き方が可能との声もあります。在宅医療専門医が医療行為を提供する施設ごとに労働実態を確認しましょう。

3-1.施設への訪問診療

医師の配置義務がない老人ホームやグループホーム、高齢者賃貸住宅などに訪問する訪問診療では、在宅医療専門医は主に診察や保護観察を行います。施設内のまとまった人数を相手に医療行為を提供するのが、個人宅への訪問診療との決定的な違いです。

また施設への訪問診療では診療報酬に加えて、在宅時医療総合管理料と施設入居時医学総合管理料が上乗せされます。個人宅への訪問診療より患者数が多いため、人員や設備の確保に苦労するケースも見受けられます。

3-2.個人宅への訪問診療

個人宅への訪問診療では、1日に対応できる人数に限りはあるものの、患者さんとじっくり向き合えます。

施設への訪問も個人宅への訪問も、いつ来るか分からない連絡に備えて24時間いつでも対応できる体制を整える厳しさはあります。しかしチームで情報共有やシフトごとの対応体制があれば話は別です。例えば医療や介護チームだけが確認できるSNSのグループを作り、患者さんの情報を逐一共有する方法などがあります。

変化を察知したホームヘルパーがSNSに連絡をいれ、看護師や非常勤医がいち早く初動対応するという仕組みを作れば、在宅医療専門医の負担は和らぐでしょう。在宅医療専門医自らの健康管理ももちろん重要です。休める時に休んで十分にリフレッシュできない方は、長時間労働の在宅診療では不利になるでしょう。

4.在宅医療専門医の平均年収

在宅医療専門医における年収の目安は、約1,500万〜2,000万円です。医師全体の平均年収と比較すると、高い金額になっています。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、賞与などを除いた医師の年間給与額は1050.4万円です。(※)

在宅医療専門医の平均年収が医師全体より高い理由には、開業医の多さや診療点数が高い往診、訪問診療の多さなどが挙げられます。医師や看護師が患者さんの元に赴く際には、複数人の体制の確保と医療機器の準備が必要です。このような労力を考慮して、診療報酬は通常の外来と比べて10倍程度の水準に設定されています。また大都市を中心に介護施設に不足がみられ、在宅診療への需要が高まっているのも要因のひとつとして考えられます。他にもオンコールありの24時間対応に加え、車による移動を伴うハードワークが避けられないことも在宅医療専門医の待遇が良い理由です。

在宅医療専門医は年収の高さが魅力ですが、過酷な労働環境に体が持たなくなる恐れもあります。求人に応募する際は業務範囲や医療の提供体制にも目を向け、ワークライフバランスが保てる環境か確認しましょう。

※参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査」

5.在宅医療専門医に求められる資質

在宅医療専門医は医療機関の勤務医とは性質を異にするため、求められる素質も異なります。高齢者が多く、患者さんと近い距離間で接するという特性を踏まえると、総合的な診療能力やご家族も含めて寄り添うサポート力が必要です。

在宅医療は高まる需要に合わせて進歩の最中にあるため、常に新しい情報をキャッチアップする姿勢も大切です。ここからは、在宅医療専門医に求められる資質について詳しく解説します。

5-1.総合的に症状を判断する思考力

在宅医療では内科的な疾患から外科的な疾患、皮膚病、がんの緩和ケアに至るまで、特定の診療科を超えたあらゆる可能性を加味して原因を突き止めて対策を検討する思考力が求められます。なぜなら在宅医療専門医は目の前の病気を取り除くことはもちろん、患者さんの日常生活や家族関係、経済状況も踏まえたオーダーメイドのアプローチが必要となるためです。

患者さんひとりひとりと深く関わり合い、病院での診察に限らない密な接し方ができるのは在宅医療の利点です。実際には診察や定期的な健康診断、リハビリテーション、看取りまで担当します。自身の専門分野に限らない総合的な知見を有する方は、在宅医療専門医でも活躍できる可能性が高いといえます。

5-2.患者さんと家族の意思に寄り添えるサポート力

高齢者が多く終末期の緩和ケアの意味合いが大きな在宅医療では、患者さんやご家族の希望に寄り添う対応が求められます。医師は適切な治療方法を提案しますが、受け入れるか判断を下すのは治療を受ける側であり、押し付けるような対応はご法度です。

また在宅医療では、必ずしも病気の治癒が患者さんの希望に沿うものであるとは限りません。終末期を迎えると、愛着がある自宅で家族がいる中で往生したいと考える方もいます。自宅の過ごし方に関する希望を叶えるのも、患者さんに身近な存在である在宅医療専門医が担う重要な役割です。

患者さんの生活やご家族の思いを汲み取り、要望に即した対応を行えることも在宅医療専門医が備えておくべきスキルのひとつだといえます。

5-3.在宅診療の知見を刷新できる対応力

在宅医療は、新しい技術や治療方法が次々と増えていく日進月歩の世界です。在宅医療専門医の一流の人材として活躍したいなら、自身のスキルを鍛えるにとどまらず業界ニュースに触れて知見を広げる必要があります。

在宅医療は病院での診療と比べて制限が多く、使用できる医療機器や設備が限られます。状況に応じて適切な治療方法を提示するには、柔軟な思考力や的確な判断力も重要になるでしょう。

6.在宅診療医に必要なスキル・資格

在宅医は内科をはじめ、複数の診療科目で求人の募集が見受けられます。一定の年数以上の臨床経験があれば採用の可能性はありますが、採用確度を上げるためには在宅医療専門医の資格取得がおすすめです。在宅医療の性質を踏まえると、老年科専門医家庭医療専門医も転職活動のアピール材料になり得るでしょう。

6-1.在宅医療専門医

在宅医療専門医は、日本在宅医療連合会が主催する専門医認定制度です。取得要件は「医師免許を取得し、医師として5年以上の経験を有すること」「1年以上の在宅研修プログラムを修了し、試験で合格点を獲得すること」のふたつです。(※)

在宅研修中は研修施設での常勤医として働き、一単位・半日の訪問診療に関する研修を週4単位以上受講します。また1年以上の在宅診療プログラムを受ける場合、次の条件を満たすことが必要です。

●半年間以上内科での研修を修了すること
●3カ月相当の緩和ケア講習を受講すること

在宅医療専門医は在宅医療に励む医師に必須の資格ではありませんが、転職やキャリアアップの際に役立ちます。すでに在宅医療を5年以上自ら実践している方は研修が免除され、実績に基づき専門医試験を受けられるコースで専門医資格を取得できます。

※参考:一般社団法人日本在宅医療連合学会「専門医制度」

6-2.老年科専門医

日本老年医学会の老年科専門医も、高齢者の患者さんを相手に医療を提供するための認定医制度です。高齢者は若年層とは治療に対する反応が異なり、慢性的な疾患を複数抱えることから薬害が起こりやすいのが特徴です。

老年科専門医は年齢に応じた特性を把握し、過少でも過剰でもない適度な水準の医療行為を行えることを意味する資格です。日本老年医学会の会員である必要があり、資格を保持し続ける場合は5年に一度、研修を受ける必要があります。

6-3.家庭医療専門医

一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療専門医は、患者さんの家族にも親身で誠実に向き合う在宅医が取得したい資格です。家庭医療専門医の資格は地域の住民との繋がりを大切にし、継続的かつ包括的な医療・保健・福祉に関する医療や学術活動を担う医師を学会として認定する目的で設けられました。

日本専門医機構が運営している総合診療専門医で定められている資質や能力と整合性を保つ形で新・家庭医療専門医では、レベルの見直しや項目の追加などが行われています。取得した資格は5年ごとに更新の必要があり、教育単位の取得やポートフォリオを含む報告書の提出が必要です。

7.需要が高まる在宅診療専門医のキャリアプランを検討してみよう

今後、少子高齢化が進むことを考えると、在宅医療専門医への需要はさらに増大すると予想されます。今の診療科でキャリアを形成しようか迷っているならば、在宅医に舵を切るのもひとつの選択です。

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