患者さんの症状は日々変化し、緊急の対応が求められることも多い医師の仕事。そうした業務の特性から、「医者は休みがない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。働き方改革が進む昨今において、実際に、医者はどの程度の休みがあるのでしょうか。
今回は、医者には休みがないとされる理由や現状とともに、しっかり休みを確保しながら働くポイントを解説します。
こんな方におすすめの記事です!
- 忙しさに追われて「医者に休みはない」と感じている
- 休日を確保しやすい医療機関の特徴を知りたい
- 今よりも働きやすい職場や勤務形態を検討している
目次
医者の休みが少ない理由

医師が「休みがない」と言われる背景には、人手不足や職場風土・医療現場特有の事情といった複数の要因があります。以下で代表的な理由を紹介します。
人手不足により休みにくい環境にある
医療従事者不足が続く昨今において、施設ごとの人員不足により、休日が取りにくい環境になっていることがあります。医療機関は、働き方改革を進めるなかで、医師の負担を減らすための人員確保が求められます。しかし、地域によっては医師不足だけでなく、タスクシェアできる医療スタッフが不足している場合もあります。このような状況では、代わりに勤務できる医師がいないため、休みを取りたくても取れないことがあります。現場の医師からは「休みを取るより患者対応を優先してしまう」という声も少なくありません。責任感の強さが、結果的に休みにくさにつながっている場合もあります。
「休みが取りにくい」職場風土
「上司に休みたいと言いだしにくい」「休みの話題になると、いい顔をされない」といった職場風土によって、休みが確保しづらい場合もあります。通常の休日だけでなく、有給取得や、介護や育児で起こりがちな突発的な休みの取得に対する理解が乏しい上司や同僚がいる場合もあるでしょう。医療機関側が、福利厚生として特別休暇などが設けていても、活用例がなく、取得が難しいケースも見られます。さらに、休日出勤する医師を高く評価する職場もあり、結果的に休みを取りにくい雰囲気になっていることもあります。
緊急対応が求められる医療現場の特性によるもの
医師は、医療現場の特性上、急患対応や緊急オペ・処置などの予測不能な業務が多くあります。他の医師による対応が難しい場合には、休みを返上する場合もあるでしょう。
現在は、働き方改革の施行に伴い、労働時間管理に配慮し、非常勤の採用を増やして対応する施設も増えています。しかし、小規模の施設では「宿日直許可という名目で、連続勤務が正当化されている」という指摘もあり、解決が求められています。
参照:国保診療施設における 医師の働き方改革の現状報告書 令和 6 年度調査|全国国民健康保険診療施設協議会
医者は、本当に休みがない?休日確保の現状

ここまで、医師の休みが少ない理由を紹介しました。では、実際の勤務環境はどのように変化しているのでしょうか。時間外労働や休日労働の状況について、資料をもとに現状を見てみましょう。
医者の休みの現状
2024年に「医師の働き方改革」が施行され、以前と比べて医師の休日労働時間が減り、プライベートの時間が取りやすくなっているのが現状です。
厚生労働省は、施行に向けて大学病院の本院と都道府県を対象に、定期的に「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」を実施してきました。具体的には、医師の「時間外・休日労働時間の把握状況」「調査時点における時間外・休日労働が年通算1,860時間相当超の医師数」を把握するための調査です。
参照:参考資料1|第3回 医師等医療機関職員の働き方改革推進本部|厚生労働省
令和5年6月~7月に実施された最新(第4回)では、都道府県を対象に行った調査において、同じく「調査時点で年通算1,860時間相当超の医師数」は516人(病院:515人、有床診療所:1人)でした。これは第2回調査と比べて、大きく減少しています。
| 調査時点における副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間数が年通算1,860時間相当超の医師数及び医療機関数 | ||
|---|---|---|
| 都道府県 | 大学病院の本院 | |
| 第2回 (令和 4 年7月~8月) | 993 人 (病院:886人、 有床診療所:107人) | 1,095 人 (56 病院)/ 81病院中 |
| 第4回 (令和 5 年6月~7月) | 516 人 (病院:515人、 有床診療所:1人) | ― |
時間外・休日労働で長時間勤務をする医師は徐々に減少しており、以前より休日が確保しやすくなったことがわかります。
なお、第4回調査では、宿日直許可の取得や、医師の労働時間短縮の取組を実施したケースにおいて、時間外・休日労働時間数が年通算1,860時間相当超見込みとなった医師数は、83人(病院:83人、有床診療所:0人)に激減しています。
医師の勤務時間管理や休みの整備が進められていることが把握できますが、実際に医師の休日の取得状況についての調査は実施されていないため、不明な点が多いのも事実です。
また、前述の調査では申請上は基準内に収まっていても、施設によっては実際には完全に労働環境が整えられているわけではない可能性もあります。
参照:国保診療施設における 医師の働き方改革の現状報告書 令和 6 年度調査|全国国民健康保険診療施設協議会
一般労働者平均との比較
医師の時間外・休日労働時間が減っているものの、具体的な休日数についてはどうなのでしょうか。医師を含めた一般労働者の休日数平均と比べてみました。
厚生労働省の資料「令和6年 就労条件総合調査の概況」によると、令和5年の年間休日総数として、1企業あたりの平均は112.1日、労働者1人平均は116.4日でした。
なお、前年調査では、1企業あたり110.7日だったことから、休日数が増えていることがわかります。
一方で、勤務医の多くはシフト制で、「何らかの週休2日制」になることが多い傾向にあります。全国で医療機関が運営している独立行政法人国立病院や日本赤十字社、民間医療法人グループの求人情報等を参考に休日制度を確認したところ、勤務体制により「4週8休制」「月8日以上」とされていました。(情報収集日:令和7年9月23日)
条件によって異なるものの、年次休暇は20日程度+在籍期間に応じた日数とされており、仮に20日の休暇全てを取得できた場合の年間休日数は122日と計算できます。(月間休日8日×12か月+年次休暇20日+年末年始休暇6日)。
施設によっては、リフレッシュ休暇を設けるほか、福利厚生の一環として特別休暇制度があるところもあります。実際に取得できれば、一般的な労働者の平均よりも高い割合で週休2日を得ることが可能です。職場の運営状況や風土によって、年次休暇などの取得割合などは変化する可能性がありますが、勤務医が取得可能な休日数は一般労働者の平均よりも多い傾向にあると考えられます。
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土日休みや休日数が多い職場の選び方

勤務先によって実情は異なるものの、できるだけ土日休みや休日数が多い職場を選ぶポイントを紹介します。
入院施設のない無床クリニックや健診機関などを検討する
入院施設のない無床クリニックや健診機関は、緊急対応の可能性が低く、週休2日制が実施されているケースがほとんどです。また、外来を中心に運営する施設や健診機関では、入院中の患者さんの対応がないため、ある程度計画的に業務をこなすことが可能で、残業になりにくいのもメリットです。
ただし、施設によっては土曜に開院している場合もあります。勤務する曜日や時間などをきちんと確認したうえで、検討しましょう。求人を検索する際には、「土日祝日休み」を提示している施設を選択することも大切です。
医師数が多い施設を検討する
医師数が多い施設では、休みが確保しやすい傾向にあります。シフト管理が柔軟で、代替勤務や有給休暇の取得などが行いやすい環境にあります。ただし、土日に休みが取れるとは限りません。また、自身も、他の医師が休みとなる時に代替勤務ができるような柔軟性が求められることも理解しておきましょう。
臨床に携わらない企業や国・自治体での勤務を検討する
企業勤務や公務員は、臨床現場と比べて休みが取りやすい環境にあります。これまでの経験を活かす場合には、産業医や公衆衛生医師として活躍できる職場を検討するのもよいでしょう。特に、公衆衛生医師のように、地方公務員や国家公務員として勤務できれば、基本的に土日や祝日が休日となります。
また、製薬会社でメディカルドクターとして勤務する方法もあります。新薬開発や薬の有効性・安全性の検証に携わったり、メディカルアフェアーズなどを担ったりするのが主な業務です。製薬会社の社員として、就業規則に沿った週休2日制になることが多いでしょう。
参照: 公衆衛生医師の業務|厚生労働省
求人情報だけでなく、実際の運営体制を確認する
求人情報に「週休2日」「土日休み」と記載されていても、実際には院内業務で休日が減ってしまうケースも考えられます。面接の際に休日の取得状況を具体的に質問し、可能であれば施設見学をして、現場の医師に話を聞いてみましょう。医師専門の転職エージェントでは、一般公開されていない情報を提供してもらえることがあります。休日の状況や制度の有無などを確認するとよいでしょう。実際の勤務体系や休暇取得の実情を知ることで、入職後のギャップを防げます。
フリーランスとして働く
フリーランスの医師になれば、自身で勤務時間や休日を設定しながら働くことができます。定期非常勤として勤務日が選択できる職場を選ぶとよいでしょう。ただし、正規雇用の勤務医と比べて、収入が下がってしまう可能性があります。副業やアルバイトなどと組み合わせて収入を確保しつつ、休日数を増やす働き方を検討してみましょう。
休み確保を目的とした転職活動の前に考えたいこと

プライベートを充実させたい、または介護や育児のために休日を増やしたい場合、転職は選択肢のひとつです。しかし、転職を検討する前に、まずは現在の職場で「どこまで休みを確保できるか」を確認してみることも大切です。たとえば、タスクシェアの提案や、業務効率化の工夫、有給休暇取得の申請方法を見直すなど、提案が受け入れられる可能性もあります。とはいえ、人材不足の解消といった問題がある場合、個人の努力には限界があります。現状のままでは、これ以上休みを確保するのが難しいと判断した場合、転職を検討してみてはいかがでしょうか。
休みを十分に確保したいなら転職も検討してみよう
医師の働き方改革が進んだことにより、医師の休日は以前よりも増えている傾向にあります。しかし、実際の取得状況は施設ごとに異なるようです。そもそも、医師も労働者の1人であり、人として休む権利があります。医師は責任感が強く、つい自分のことを後回しにしてしまいがちです。ですが、まず自分の心身を大切にすることが、患者さんを支える力の源になるのではないでしょうか。もし、現在の職場風土や制度の影響で、思うように休みを確保できないのであれば、転職を考えるのも一案です。自身に合った働き方を検討する場合や、職場探しに悩んだ時には医師専門のエージェントに相談するのもおすすめです。
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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)
医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。
