新型コロナ後遺症の実態とは?~日本呼吸器学会・横山彰仁理事長インタビュー|スペシャルコラム

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新型コロナ後遺症の実態とは?
~日本呼吸器学会・横山彰仁理事長インタビュー

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐっては感染時の症状のみならず、陰性になった後も後遺症に苦しめられるという報告が相次いでいます。このような事態を受け、2020年7月、日本呼吸器学会は後遺症の実態調査・研究を開始することを発表しました。国内外で報告されるCOVID-19の後遺症の実情について、日本呼吸器学会理事長の横山彰仁先生にお話を聞きました。

9月から1000人の調査開始

日本呼吸器学会の後遺症実態調査はどのような調査ですか。

横山彰仁(よこやま あきひと):日本呼吸器学会理事長。1983年富山医科薬科大卒。シカゴ大リサーチフェロー、広島大大学院分子内科助教授などを経て、2007年より高知大医学部教授(呼吸器・アレルギー内科学)。20年5月より現職。
横山彰仁(よこやま あきひと):日本呼吸器学会理事長。1983年富山医科薬科大卒。シカゴ大リサーチフェロー、広島大大学院分子内科助教授などを経て、2007年より高知大医学部教授(呼吸器・アレルギー内科学)。20年5月より現職。

呼吸器疾患の専門医集団の社会的使命として
中等症から重症患者の後遺症の実態を明らかにし
後遺症の治療・予防に役立てたい

加藤勝信厚生労働大臣が、7月に記者会見で、COVID-19の後遺症の実態調査をすると発表しました。そのうち、入院中に酸素投与が必要だった中等症Ⅱ(呼吸不全あり)と重症の成人患者さん1000人の調査を、厚労省の特別研究として、日本呼吸器学会が担当します。研究代表者は私が務め、9月から本格的に実態調査・研究を開始する予定です。

イタリア呼吸器学会などの報告では、退院後も約半分の患者さんに肺機能の異常がみられるようですが、日本での実態は不明です。呼吸器専門医の学術団体である呼吸器学会の社会的使命として、日本での後遺症の実態を明らかにしなければならないと考えました。

調査に参加する施設数は?

日本呼吸器学会の旧専門医制度認定施設の代表指導医を対象に、7月末、この調査・研究への参加意思などを問う予備調査を実施しました。予備調査で参加の意思を示した、北海道から沖縄まで全国約80施設が、本調査に参加する予定です。

肺機能、心身の症状を 広範に調査

調査項目を教えてください。

肺機能検査、肺のCT検査、健康関連QOL尺度のSF-8、うつ病スケールのHAM-D尺度、睡眠障害の有無を調べるピッツバーグ睡眠質問票など、調査項目は多岐にわたります。リハビリを実施したか、その効果がどうだったのかということも質問項目に入れています。

後遺症の原因としては、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や、狭いところに閉じ込められて家族にも会えない拘禁反応のような精神的な因子もあるのではないかと考えています。もう一つは、人工呼吸器に長期間つながれたことで、筋力が低下したり栄養状態が悪くなったりした影響です。そういった因子とウイルス感染そのものによる後遺症とは、区別して解析する必要があると考えています。

どの時点での後遺症を調査するのですか。

まずは、退院してから3カ月後(±1カ月)に、症状があってもなくても来院してもらい、その時点での後遺症の有無と症状を調べます。後遺症があった人には、その3カ月後にも来院してもらい、経過を診ていきます。

検査数値と後遺症の 関係性も分析

海外で報告されている後遺症はどのようなものがありますか。

5月末に、イタリア呼吸器学会が、「COVID-19から回復した人のうち3割に呼吸器疾患などの後遺症が残る可能性がある」と指摘したと共同通信などが報じました。JAMA誌に掲載されたイタリアの大学病院の報告では、COVID-19発症後約2カ月の時点で、53.1%に倦怠感、43.4%に呼吸困難がみられたとしています。

また、ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)誌に、5月、退院患者110人のうち47.2%にDLco(一酸化炭素肺拡散能)の低下、25%に拘束性障害がみられたとの中国からの報告が掲載されました。フランスからも、約半分の人に肺機能障害があったとの報告が出ています。

中国とフランスの報告では、人工呼吸器を用いた重症者は除外しています。ARDS(急性呼吸窮迫症候群)のような状態になって人工呼吸器を用いた人は肺の線維化が残るのでDLcoが低下すると思いますが、そこまで重症ではなかった人の約半分に、肺機能障害が残るというのは驚きです。

原因は分かっていますか。

分かっていません。サイトカインストームによって血管障害が生じ、肺の線維化が起こる可能性はありますが、あくまで仮説です。

私たちが実施する後遺症の実態調査では、患者さんの検査数値と後遺症の関係も含めて分析します。例えば、予後が悪いと言われるDダイマーが高値の人は肺機能障害にもなりやすいのか、KL-6(シアル化糖鎖抗原)が線維化の危険因子なのかなど検査数値との関係性も明らかになればと思います。

線維化した肺は元に戻るのですか。

完全に線維化していなければ、徐々に元に戻る可能性があります。それも含めて、経過を診ていく必要があります。

肺機能障害以外の後遺症にはどのようなものがありますか。

発症から4週間後の時点で1割の人に嗅覚・味覚異常が残っていたとの報告もあります。発熱が続いたり、聴覚障害、脱毛、睡眠障害、うつ、頭痛、認知機能障害が生じるなど、国内でも退院後、長期間にわたって後遺症に苦しんでいる患者さんがいるようです。

ただ、その症状は可逆的なものなのか、本当にCOVID-19の後遺症としてポピュラーなものなのかも分かっていません。まずは日本での後遺症の実態を把握し、重症度と関連する後遺症は何なのかを明らかにできればと考えています。

今年度末までに結果報告

後遺症実態調査の結果はいつ頃発表する予定ですか。

COVID-19の今後の感染状況にもよりますが、厚労省の特別研究としては、今年度末までに報告書を出すことになっています。呼吸器学会に設けるCOVID-19後遺症研究委員会で、さらに調査が必要だということになれば、学会として調査を継続することも検討したいと考えています。

今後の抱負をお願いします。

この調査・研究を科学的な形で進め、後遺症の治療や予防に役立てたいと思います。患者さんの治療で非常に忙しい中申し訳ありませんが、後遺症の実態調査に参加する病院の先生方には、ぜひ、ご協力をお願いします。

COVID-19の治療もそうですが、後遺症の治療や予防などの対策は、当学会だけではなく、他領域の学会や研究グループと共にオールジャパンで進める必要があると考えています。
(聞き手・福島安紀)

出典:Web医事新報
※本記事は株式会社日本医事新報社の提供により掲載しています。

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