忙しすぎたり、満足な収入が得られなかったり、スキルアップに不安があったりと、医師が転職を考えるきっかけはさまざまです。実際に転職活動を始めると、勤務地や勤務時間、当直の有無、勤務内容など、転職先に求める条件が複数あがってくるのではないでしょうか。理想の職場に転職するためには、自分にとって重要な転職条件は何かを見極めることが大切です。今回は、医師が転職条件を考える際におさえておきたいポイントをお伝えします。
- 医師の転職の条件は、転職の目的を明確にすることから始まる。代表的な目的は、収入アップ、ワークライフバランス向上、スキルアップ、人間関係のリセットなど。
- 転職先の条件が複数挙がる場合は優先順位をつけることが、転職後のミスマッチを防ぐコツ。
- 転職先の人間関係や産休・育休の取得状況など、外から分かりにくい情報は転職エージェントから情報収集をするのがおすすめ。
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1.転職する目的を明確にしてから転職条件を決めることが大切
転職条件を考えるうえで、大切なのが転職する目的を明確にすることです。転職の目的が明確になるほど、目的達成につながる転職条件を考えやすくなります。医師はどんな目的をもって転職を考えているのか、主な例を見ていきましょう。
目的①収入アップ
現在の収入が仕事量に見合っていないと感じるときや、他の病院で働く医師の収入を知って、自身が納得できる収入を得られていないと感じたときに、転職を考えることがあるでしょう。
一般的に、大学の医局から民間病院への転職では、収入アップが見込みやすいといわれています。一方、民間病院から民間病院への転職では収入アップが難しいケースもあり、収入が上がったとしても手術件数や当直回数が想定している以上に多く、現職よりも激務になる可能性も考えられます。収入アップを目指すのであれば、年収の確認だけでなく、勤務時間や平均残業時間、手術件数や当直の回数、オンコール対応などといった勤務条件がどのようになるのかもしっかりチェックしましょう。
目的②忙しさから解放されたい
忙しい状況が続くと心身ともに疲れてしまい、「余裕のある働き方をしたい」と思うものです。忙しさを緩和するために転職を考えるのであれば、まずは現職が「忙しい」と感じる理由を具体的に挙げてみましょう。外来・入院の担当患者さんが多すぎるからなのか、拘束時間が長いのか、診療以外の業務が負担になっているのかなど、忙しさの要因は状況によって異なります。忙しいと感じる理由を掘り下げることで、具体的な転職条件が見えてきます。
目的③スキルアップ
スキルアップとひと言でいっても、その目的はさまざまです。「環境を変えてさまざまな知識やノウハウを身につけたい」「内視鏡などの手術件数を増やしたい」など、今の診療科の専門性を高めることを目的とするほか、専門外の診療科でのスキルアップや、場合によっては転科を考えることもあるでしょう。
医師は即戦力を求める傾向があるだけに、転科を検討する際には未経験でも受け入れてもらえる医療機関を探すことになります。外科から美容外科、皮膚科から美容皮膚科など、関連のある診療科であれば転科は比較的容易ですが、まったくの異なる分野でゼロからキャリアを積み上げる場合は、受け入れてもらえる医療機関を見つけるのに時間がかかる場合があります。そのため、転科を検討しているならばなるべく若手のうちに行動に移すことが重要です。また、転職エージェントを活用するなどして新たなキャリアを積む医療機関を見つけ出すことをおすすめします。
目的④人間関係をリセットするため
職場の人間関係にストレスを感じて転職を考えることもあるでしょう。医師の場合、医師同士だけでなく、患者さんや看護師、コメディカル職種などさまざまな立場の人との交流がありますので、うまくコミュニケーションをとっていく必要があります。
人間関係の改善を目指した転職の場合、「人間関係が良い職場」という転職条件を考えるかもしれませんが、実際のところ転職先の環境は入職してみなければ分からないことが多いものです。入職する前に情報を得る方法としては、その職場で勤務をしたことがある知人やその職場の事情に詳しい友人に話を聞くなど、リアルな意見を聞くことができる口コミでの情報収集をおすすめします。また医療機関の内部事情を知る転職エージェントから情報を得て、労働環境を確認しておくという方法もあります。
目的⑤専門医を目指す
専門医の資格取得・更新をするためには症例数などの活動実績が必要です。地方の病院や専門病院などに勤務していると、診療科によっては必要な症例数を確保することが難しいことがあり、経験症例数を増やすために転職を検討するケースもあるようです。
このようなケースでは、転職の際の条件として「症例数の多さ」に注目をすると思います。ですが、病院全体の症例数は多くても自身が担当できる症例が限られる場合や、指導医が不在もしくは退職予定のために、専門医の資格取得が難航する場合もあるため、入職前に状況を詳しく確認しておくことをおすすめします。また、入職後に、学会参加や勉強時間などの資格取得のための時間が確保できるかどうかも、あらかじめ確認しておきたいポイントです。
目的⑥プライベート重視の働き方を実現する
厚生労働省の資料「医師の働き方改革について」(第1回医療政策研修会、2019年6月)によると、病院勤務医の労働時間の区分別割合は、もっとも割合が大きかったのが週50~60時間の23.6%、2番目に大きかったのが週40~50時間の20.7%、次いで週60~70時間の18.4%でした。週40時間未満の割合は15.1%です。こうした状況から、病院勤務医の8割以上が週40時間以上の労働を行っていることが分かります。
労働時間が長く、プライベートの時間が確保できないことを理由に転職を考えることがあるかもしれません。家族と過ごす時間を優先したい場合や自分の趣味の時間をたっぷり確保したい場合などは、残業やオンコールが少ない職場、勤務時間が短い職場が転職する際の重要な条件になるでしょう。
目的⑦出産や子育てに理解のある職場で働きたい
とくに女性医師の場合、結婚や出産、子育てなどのライフイベントが今後の働き方を考えるきっかけになることが現実的に多いようです。日本医師会女性医師支援センターが行った「女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」(2017年8月)の調査結果からも、子育てと仕事の両立に悩む女性医師の割合が高いことがわかっています。特に、子どもが幼いうちは、発熱やケガなどで保育園から呼び出しがあったり、深夜に腹痛や下痢など体調を崩して翌日の仕事を休まなければならなくなったりするかもしれません。
出産や子育てに理解のある職場への転職を条件とする場合、産休・育休制度の有無だけでなく、取得実績も確認しておくことが大切です。また、産休・育休取得後に復職した医師や、子育て中の女性医師がいるかなども同時に確認しておきましょう。すでに経験者がいる職場であれば、同僚の理解を得やすい可能性が高まります。加えて、突発的な欠勤・早退に対応してもらえるかも確認しておくと、出産後も安心して働き続けられるでしょう。
2.医師が転職活動を始める前に考えておきたいこと
転職活動を行う際には、まず転職条件の優先順位を考え、転職スケジュールを明確にしておくことが大切です。転職するまでの段取りを整えることで、転職活動をスムーズに進められます。転職条件に関するチェックポイントをまとめました。
2-1.現職のまま、希望の条件を実現できる可能性を検討する
転職を考える前に、まずは現職で希望の働き方に近づける方法がないのかを検討してみましょう。収入アップという目的をかなえたいならば、現職で役職を目指す、当直回数を増やすといった方法があります。人間関係が問題なら、異動を申し出る方法もあるでしょう。交渉次第で現職にいながら希望の働き方ができる可能性があります。転職を検討するとき、同時に「転職しない」という選択肢があることも心に留めておきましょう。
2-2.転職条件に優先順位をつける
現職での改善が難しいなら、改めて転職に向けた条件を絞り込んでみましょう。その際、大切なのが優先順位の設定です。収入アップや勤務時間、通勤時間といった勤務条件だけでなく、専門医の資格取得を目指すための環境確保や人間関係の変化など、やりがいや働き方も考慮する必要があります。ただし、全ての条件がそろった完璧な転職先を探すのは難しいものです。数ある求人のなかから、いま自分にとって何が大切なのか、また将来的に医師としてどのようなキャリアを歩んでいくのか、長期的な視点も交えて考えてみましょう。優先順位を明確にして転職先を選ぶことで、転職後のミスマッチも防げます。
2-3.退職交渉を含めた転職スケジュールを組む
医師の転職活動は、情報収集から新しい職場への入職まで短くても3ヵ月、長ければ1年ほどを目安に行います。というのも、転職活動そのものにはそれほど時間がかからなくても退職交渉に難航するケースが現実問題として多いためです。どの職場にとっても医師確保は重要な課題ですから、退職を申し出ても慰留にあったり引き継ぎに時間がかかったりして退職交渉が長引いてしまう可能性があります。
現職の状況に配慮しながら遅くとも3カ月前には退職の申し出を行い、スムーズに転職ができるような準備を整えておく必要があります。
3.医師が転職で失敗しないために
転職条件を見極めるには、転職の目的を明確にすることが大切です。複数の転職条件がある場合には、優先順位をつけ、どの条件が目的達成につながるのかを考えてみましょう。もし、明確な理由や条件が見えないまま転職してしまうと、ミスマッチが起こり働き続けること自体が負担になってしまうかもしれません。転職に失敗しないためにも、転職エージェントをうまく活用するなどして効率的に情報収集を行い、計画的に転職活動と退職交渉を進めていくことをおすすめします。
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