コンパニオン診断とは?コンパニオン診断薬や今後の展望も解説|医師転職ナレッジ

コンパニオン診断とは?コンパニオン診断薬や今後の展望も解説

「コンパニオン診断」は臨床検査の1つで、主にがんの薬物療法を行う際に活用されています。診療科によっては使用機会が少ない可能性もあり、詳しくわからないという方もいるかもしれません。今回は、コンパニオン診断とは何か、その仕組みや役割をはじめ、使用される薬剤や今後の展望について解説します。

<この記事のまとめ>

  • コンパニオン診断とは、特定の治療薬を使用するにあたり、その患者さんに効果があるかどうかを事前に見極めるために行う検査のこと。
  • 主にがん治療を行っている患者さんが対象となり、費用の目安は25,000円~180,000円。
  • 「個別化医療」の拡大につながるものと期待される反面、感度や信頼性については課題が残る。

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1.コンパニオン診断とは?

コンパニオン診断とは、特定の治療薬を使用するにあたり、その患者さんに効果があるかどうかを事前に見極めるために行う検査のことです。状態の異なる患者さん個々に適した治療を行う「個別化医療」を提供するために欠かせないものであり、主にがん領域で活用されています。

1-1.コンパニオン診断の仕組み

コンパニオン診断は、ゲノム医療の発展に伴い「分子標的薬」の開発が進んだことで活用が広がりました。ゲノム医療とはDNAに含まれる遺伝子情報全体(ゲノム)の結果をもとに、病気の診断・治療に活用する医療を指します。分子標的薬とは、遺伝子の異常に適合した薬剤であり、がん細胞に対して選択的に作用する治療薬となります。従来の抗がん剤とは異なり、正常な細胞への作用を避けることが可能です。

具体的には、コンパニオン診断薬を使用し、患者さんの標的分子の発現量、関連遺伝子変異、遺伝子多型などのバイオマーカーなどを調べます。対象となる遺伝子の変化があるかどうかを確認したうえで、検討している薬剤の効果が期待できるかどうかを判断します。

ただし、分子標的薬がすべての患者さんに適応するとは限りません。
例えば、特定の遺伝子Aに変異がある病気に有効な分子標的薬があったとします。しかし、同じ疾患であっても、患者さんに特定の遺伝子Aに変異がなければ、その治療薬は効果が期待できません。患者さんに、その治療薬を投与して効果が期待できるかどうか、有用性や安全性などを確認するためには遺伝子変異の有無を調べる必要があります。そこで行われるのが、コンパニオン診断です。

1-2.コンパニオン診断の使用目的

厚生労働省は、日本におけるコンパニオン診断の使用目的として、以下の3点を挙げています。

▶効果がより期待される患者を特定するため
コンパニオン検査では、対象疾患患者さんに対して検討する治療薬が実際に投与された際に期待される効果を適切に判定できます。そのため、効果を期待できない治療薬を患者さんに投与することを避けることが可能です。

▶特定の副作用が発現するおそれの高い患者を特定するため
コンパニオン診断により、対象患者にとって重篤な副作用を生じさせる可能性のある治療薬を事前に把握できます。

▶用法・用量の最適化又は投薬中止の判断を適切に実施するため
コンパニオン診断は、治療効果のモニタリングとしての役割を担うことが可能です。この診断結果は、患者さんごとの薬物の投与計画や投与量の変更および治療中止の決定に必要な情報となり、根拠に基づいた適切な判断を導けるようになります。

1-3.コンパニオン診断が活用される「個別化医療」とは

個別化医療とは、検査を通して患者さんの遺伝子や疾患を詳しく調べ、患者さん個人の状態に応じて治療薬や治療法を選択することを指します。患者さん一人ひとりの体質や、疾患のタイプから、最も効果的な治療薬や治療法を選択するもので、「オーダーメイド医療」や「テーラーメイド医療」とも呼ばれます。

がん治療において、従来の一律した治療では、患者さんによって効果や副作用の現れ方に差があり、効果的な治療薬を選択することが難しい場合がありました。技術の発展により、薬剤の効果や副作用の現れ方には、患者さんそれぞれがもつ遺伝子が関係していることがわかり、同じ疾患でもタイプが異なることが判明しています。患者さん個々の状態を遺伝子レベルで個別化し、より効果的な治療につなげるためにコンパニオン診断が活用されています。

2.コンパニオン診断薬(CDx)とは

コンパニオン診断薬(Companion diagnostics:CoDx/CDx)とは、コンパニオン診断をするために用いられる検査薬のことです。一般的な治療薬とは異なり、「体外診断用医薬品」とも呼ばれます。特定の治療薬に対してそれぞれ異なる診断薬が提示されており、診断方法もさまざまです。

2024年8月時点で、コンパニオン診断等を行う必要がある医薬品は42種類です。1つの治療薬に対して、適応判定に利用可能なコンパニオン診断薬が複数あるケースもあります。

例えば、アービタックス注射液(100 mg、500 mg)は、KRAS/NRAS遺伝子変異を検査する必要があり、それに対するコンパニオン診断薬として5種類が提示されています。どの診断薬を使用するかも検討する必要があるでしょう。

なお、承認されたコンパニオン診断薬について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が一覧で公開しています。詳しくは以下をご覧ください。

参照:医薬品の適応判定を目的として承認された体外診断用医薬品又は医療機器の情報|独立行政法人医薬品医療機器総合機構

3.コンパニオン診断の対象や検査にかかる費用、期間

コンパニオン診断を実施する検査対象や検査にかかる期間、費用などをまとめました。

3-1.検査対象

コンパニオン診断の対象となるのは、主にがん治療を行っている患者さんです。すでに保険適用となっている薬剤療法(抗がん剤)のなかでも、分子標的薬の使用を検討している場合に用いられます。
一方で、標準治療がない希少疾患の場合や、標準治療を終了した患者さんは対象外です。保険適用ではないもので、何らかの効果的な薬物療法を検討することを目的とする場合には、が選択されます。「がん遺伝子パネル検査」とは、がんの原因となる複数の遺伝子の変化を、一度にまとめて調べる検査です。コンパニオン診断とは異なり、薬の利用を検討するために遺伝子変化を見るのではなく、遺伝子変異をまとめて確認した後に、それに合致する薬剤等を検討することになります。一部にはコンパニオン診断としても活用できる、がん遺伝子パネル検査も存在します。

なお、血縁者にがん罹患者が多い場合、コンパニオン検査だけでなくがん遺伝子パネル検査を受ける人が増えてきました。罹患する可能性のあるがんを把握し、がんに罹患しないための生活の見直しなど、がんに備えることが狙いです。予防医療の視点からも、今後はがんパネル検査の活用が増えるのではないかと考えられます。

3-2.費用の目安

コンパニオン診断は原則1回に限り、保険対象となります。費用の目安は25,000円~180,000円で、診断する項目数や検体処理方法によって異なります。

保険適用されているコンパニオン診断薬は複数ありますが、2023年12月1日の時点で保険適用となっている製品の例を紹介します。

名称 材料 検査の概要
OncoGuide NCC
オンコパネルシステム
腫瘍組織
非腫瘍細胞(血液)
124のがん関連遺伝子(DNA)の変異を解析
FoundationOne CDx
がんゲノムプロファイル
腫瘍組織 324のがん関連遺伝子(DNA)の変異を解析
MSIの判定とTMBスコアの算出
FoundationOne Liquid CDx
がんゲノムプロファイル
全血 (ctDNA) 324のがん関連遺伝子(DNA)の変異を解析
Guardant360 CDx
がん遺伝子パネル
全血 (ctDNA) 74のがん関連遺伝子(DNA)の変異を解析
MSIの判定

※保険適用となる「がん遺伝子パネル検査」一覧より、「コンパニオン診断としても薬事承認・保険適用」と表記された製品を抜粋

参照:個別事項(その19)p46 厚生労働省

コンパニオン診断の費用は、高額療養費制度の対象となる場合があるため、検査の前に費用に関する情報をきちんと伝える必要があるでしょう。

3-3.検査方法と期間

検査の実施には、患者さんのがん組織(手術検体や生検検体)、または血液が必要になります。組織検体を用いた検査では約1カ月、血液検体を用いた検査では2~3週間が目安とされています。しかし、検体を準備するところから始める場合や、検体の評価(検査の可否)に時間を要する場合、外部委託する検査機関の状況などによって、日数がかかる可能性もあります。検査期間は4週から6週間程度の確保が必要かもしれません。

4.コンパニオン診断の今後と課題

コンパニオン診断薬の開発や技術が研究により発展することは、患者さんそれぞれ個人に最適な治療を提供する「個別化医療」の拡大につながるものと期待されます。

しかし、日本および海外のがん遺伝子パネル検査の研究データによると、細やかな検査を行っても、治療と関連する遺伝子の変化が見つかる可能性は5割程度とされています。また、専門家による検討がなされても、実際に治療に結び付く割合は検査を受けた患者のうち1~2割程度とされています。コンパニオン検査を受けたからといってすべての患者さんに適切な治療薬を見つけられるわけではないことも理解しておく必要があります。

また、血液などの検体を用いるコンパニオン診断(リキッドバイオプシー)は、患者さんにとって低侵襲性で、継続的なモニタリングが可能で、ヘテロジェナイティー(不均一性)の克服といったメリットがあります。その一方で、感度や信頼性が薄いのではないかと課題視されています。さまざまな技術開発が行われているなか、今後の課題解消が期待されます。

そのほか、コンパニオン診断の普及に伴い、個別化医療が展開していくためには倫理的な配慮が必要な点も課題といえます。近年は、医師が中心となって担っていますが、現状において遺伝カウンセラー自体が不足しています。今後の活用に向けて、遺伝カウンセラーの育成が必要でしょう。

5.コンパニオン診断について最新情報を確認しよう

コンパニオン診断薬の世界市場は、2021年時点で約68億米ドルと評価され、2022年から2029年にかけては、11.0%以上の成長率であると予測されています。今後さらにコンパニオン診断に関わる薬や技術が開発されていくでしょう。がん患者数が増加している昨今において、突然、コンパニオン診断が必要になることがあるかもしれません。厚生労働省をはじめ、国立がん研究センター、各製薬会社などが提供する最新情報を確認し、学びを深めてみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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