麻酔科医が転科・転職を考える理由とは？　転科・転職先の例や将来性、成功事例を紹介

麻酔科医として働いている方の中には、仕事のハードさや精神的なストレスを感じたり、ライフステージに合った働き方をしたいと考えたりして、転科や転職を考えている方もいるかもしれません。転科や転職を希望する麻酔科医は、どのような理由でその決断をするのでしょうか。

本記事では麻酔科医が転科・転職を考える理由や麻酔科医が転科しやすい診療科の例、転科ではなく転職をおすすめする理由、転職の成功事例などを解説します。転科や転職を考える理由は人それぞれですが、転職ならこれまでの経験を十分に生かしつつ、ご自身に合った働き方ができる可能性もあります。転科や転職を検討している麻酔科医の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

麻酔科医はどのような理由で、転科や転職を考えるのでしょうか。よくある理由を7つ解説します。

麻酔科医が転科・転職を考える理由の一つは、夜間勤務が多く、ワークライフバランスを保つのが難しいからです。

麻酔科医の主な仕事は、手術に立ち会って患者さんに適切な方法で麻酔をかけ、全身管理や疼痛管理を実施することです。手術の場合、事前スケジュールが組まれていますが、患者さんの状況によっては夜間に緊急手術が行われることもあります。突発的な夜間勤務が発生することが多いため、ワークライフバランスが取りにくい傾向にあるのです。

「不規則な生活から解放されたい」「プライベートを重視したい」と、転科や転職を考える麻酔科医は少なくありません。

手術時の責任による精神的ストレスが大きいことも、麻酔科医が転科や転職を考える理由の一つです。

麻酔科医は手術中に、患者さんの酸素飽和度・血圧などのデータから状況を判断し、適切な全身管理を行う必要があります。刻一刻変わる状況を見ながら、常に適切な循環管理や呼吸管理を行わなければならず、その責任は重大です。

また手術時だけでなく、集中治療や救急での対応を求められることもあるため、勤務中はなかなか気が休まる暇がありません。

精神的ストレスから解放されたいと感じ、転科・転職を考えるようになる医師は多いです。

手術件数の増加による負担の増加も、麻酔科医が転科や転職を考える理由の一つといえるでしょう。

高齢化社会の今、かつてよりも麻酔科医を必要とする複雑な手術の件数が増加しています。その結果、麻酔科医の負担は、精神的なものだけでなく、体力的にも増大しているのが現状です。

長時間に及ぶ手術も少なくないため、体力的につらさを感じて、転科や転職を検討する麻酔科医も多いでしょう。

麻酔科医が転科や転職を考える理由として、仕事範囲の拡大による負担の増加も挙げられます。

時代の変化に伴い、麻酔科医の仕事領域は拡大しています。手術や集中治療、救急での対応の他、終末期のがん患者さんなどに対する緩和ケア、出産時の無痛分娩への対応、けがなどによる慢性的な痛みを改善する目的のペインクリニックなども、病院によっては麻酔科医が担当する範囲です。

手術件数の増加による負担増に加え、仕事範囲の拡大によってさまざまな業務に対応しなければならなくなったことで負担が増大し、転科や転職を考える麻酔科医も少なくありません。

精神的・体力的な負担と、社会的評価が見合わないことも、麻酔科医が転科や転職を検討する理由の一つといえます。

手術時はもちろん、さまざまな場面で欠かせない存在である麻酔科医ですが、他の診療科の医師と比べると、患者さんから直接感謝の言葉をもらう機会がほとんどありません。働きに対する評価を十分に受けていると感じられないことで、仕事へのモチベーションが低下してしまう麻酔科医も多いです。

なお、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「勤務医の労働実態と意識に関する調査」によると、麻酔科医は平均年収が1,335.2万円と比較的高く、脳神経外科、外科、産科・婦人科に次いで高収入となっています。しかし、精神的・体力的な負担と待遇が見合わないと感じて、転科や転職を検討する麻酔科医は少なくありません。

※参考：独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の労働実態と意識に関する調査」

妊娠・出産後に働きにくいことも、麻酔科医が転科や転職を考える理由の一つです。

女性の麻酔科医は増加傾向にありますが、前述した通り、夜間勤務も発生しがちな麻酔科は、妊娠・出産後にそのまま働きやすい環境とはいえません。そのため、妊娠している方や将来子どもを持つことを考えている方の中には、産後のキャリアを考えて、転科や転職を検討する方も多いです。

体力的な衰えを感じて、転科や転職を考えるようになる麻酔科医も少なくありません。

前述した通り、麻酔科医は精神的にも体力的にもハードな仕事です。年齢を重ねて体力的な衰えを感じたことで「このままこの働き方をするのは難しい」と考える方も多いです。

麻酔科医の仕事は、些細なミスが重大なインシデントに発展する可能性もはらんでいます。体力的な衰えに加え、加齢による集中力の低下などを自覚して、体力的・精神的負担の少ない診療科への転科を考える麻酔科医も少なくないようです。

麻酔科医が転科する場合、どのような診療科ならスムーズな転科が目指せるのでしょうか。代表的な診療科の例を3つご紹介します。

美容外科は、麻酔科医が転科しやすい診療科の一つです。

美容外科では大掛かりな手術が行われるケースも多いため、麻酔科で身に付けた知識やスキルを存分に生かせます。また美容外科で行われる手術のほとんどは保険適用外なので、収入がアップする可能性も高いです。

美容外科の場合、緊急の手術がなくオンコール対応も不要なので、麻酔科と比べるとワークライフバランスが取りやすい傾向にあります。体力的な負担が軽減できる上、妊娠・出産後でも活躍しやすいです。

ただし美容外科への転科を希望する医師は多いため、希望したからといって、必ずしも転科できるとはいえません。

眼科も麻酔科医が転科しやすい診療科です。

眼科でも手術が行われますが、ほとんどの場合は日帰り手術で、大掛かりな手術を行うケースは少ないです。そのため、手術時間が予想より伸びて残業が発生するということはほとんどありません。また一般的に眼科では当直勤務が免除されているので、ワークライフバランスも取りやすいでしょう。非常勤の募集も多いため、子育てとも両立しやすいです。

ただし眼科は他の診療科と比べると、他の医師との差別化が難しい傾向にあります。活躍し続けるには、これまで以上に努力し研鑽を積む必要があるでしょう。

麻酔科医が転科しやすい診療科の一つとして、精神科も挙げられます。

精神科は、急患やオンコールがありません。医師の働き方改革検討会が2020年に公表した「医師の勤務実態について」によると、常勤の精神科医の1週間当たりの勤務時間は47時間50分となっており、他の診療科と比べても勤務時間が短い傾向にあります。基本的に手術も行われないため、体力的に不安がある方でも、働きやすいでしょう。

高齢化社会の影響で認知症を発症する患者さんの増加が予測される上、発達障害への関心の高まりを受けて、今後精神科医の需要はさらに高くなると考えられています。

※参考：医師の働き方改革検討会「医師の勤務実態について」

現在の働き方を変えるために、転科しか選択肢にないと考えている方もいるかもしれませんが、転職という選択肢を取るのもおすすめです。麻酔科医に転職をおすすめする3つの理由をご紹介します。

麻酔科医の転職がおすすめなのは、麻酔科医が深刻な人手不足にあるからです。

社団法人日本麻酔科学会が公表した「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」によると、大学病院・一般病院の7〜8割が「常勤麻酔科医が不足している」と回答しています。多くの病院が麻酔科医を求めているため、経験豊富な医師は、転職先が見つけやすいでしょう。

※参考：社団法人日本麻酔科学会「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」

待遇を改善している求人が増えていることも、麻酔科医に転職をおすすめする理由の一つです。

前述した通り、麻酔科医の平均年収は他の診療科と比べても比較的高いです。麻酔科で活躍する人材を確保するため、さらに好条件の待遇を用意している医療機関も少なくありません。

もちろん従事する医療機関によって待遇の差は大きいですが、今よりも年収がアップする可能性も十分にあります。

女性が働きやすい環境整備が進んでいることも、麻酔科医に転職がおすすめな理由です。

子育て中の女性医師でも働きやすいよう、時短勤務制度を設けたり、育児休暇の取得を進めたりしている医療機関が増えています。「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」でも、麻酔科医不足への対策として、託児所の充実などを掲げているため、今後もさらに女性が働きやすい環境が整っていくと予想されるでしょう。

※参考：社団法人日本麻酔科学会「麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言」

麻酔科医が転職する場合、具体的にどのような転職先があるのでしょうか。3つの例をご紹介します。

年収アップを目指したいなら、総合病院などの大病院がおすすめです。

大病院の場合、最新の医療機器を導入しているケースが多いため、最新の医療技術に触れることもできます。

ただし、大病院は携わる手術の件数が多く、急患やオンコール対応も多いです。夜勤や当直なども発生するので、ワークライフバランスを取りたい方には向いていないでしょう。

ペインクリニックや他の診療科のクリニックも、麻酔科医の転職先候補の一つです。

クリニックは夜間勤務やオンコール対応がないケースが多く、基本的には日勤なので、比較的仕事とプライベートが両立しやすいでしょう。

ただし、残業が多いクリニックもあるため、転職先を探す際はクリニックの勤務実態をしっかり確認することが大切です。

麻酔科医の転職先には、在宅医療機関もあります。

在宅医療機関は通院治療が難しい患者さんに対して、訪問診療を専門に行う医療機関のことです。在宅医療を希望する患者さんの多くは、痛みを取り除く治療を希望される方が多い傾向にあります。そのため、在宅医療機関における麻酔科医のニーズは高いです。

ただし、24時間対応をしている医療機関が多いので、オンコール対応が発生する可能性は高いでしょう。

最後に麻酔科医の転職成功事例をご紹介します。

ある病院に勤務する30代の女性麻酔科医は、週5日の常勤勤務をしていました。しかし、オンコールの発生による時間外労働が多く、転職を希望していました。

転職活動を開始したところ、別の病院の麻酔科から週4日の勤務・オンコールなしの条件を提示され、転職を成功させています。前職の病院よりも症例範囲は狭まりましたが、年収は300万円アップしました。

訪問診療を行うクリニックの管理医師として、一人で365日24時間体制で勤務していた50代の男性麻酔科医は、体力の衰えを感じたことと、ワークライフバランスの取れた働き方を考えるようになったことがきっかけで、転職を希望するようになりました。

転職活動を行った結果、過去の麻酔科医としての経験や実績も評価され、オンコールのない病院の麻酔科への転職を成功させています。年収は600万円ほど下がり、1,800万円となりましたが、ご自身が求める理想の働き方を実現しています。

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