心臓外科医は、生命に直結する心臓やその周辺部位の治療・手術を中心に担当することから、高度なスキルと技術が求められます。そうした心臓外科医の年収相場は、どれくらいなのでしょうか。今回は、心臓外科医の収入事情について詳しく紹介するとともに、年収を上げる方法について解説します。
こんな方におすすめの記事です!
- 心臓外科の診療内容に興味がある方。
- 平均年収が高い診療科を知りたい方。
- 年収の変動要因に関心がある方。
目次
心臓外科医の仕事内容

心臓外科とは、心臓や、その周辺に生じた症状に対して外科的な方法を用いて治療する診療科です。施設によっては、「心臓外科」ではなく「心臓血管外科」と掲げていることもあります。また、「心臓外科」と「血管外科」が分かれる施設もありますが、いずれも心臓外科医が診療を担当しています。
1-1.主な仕事内容
心臓外科医は、手術が必要なさまざまな心臓や血管に生じる病気を治療します。先天性心疾患をはじめ、冠動脈疾患や心臓弁膜症などのほか、血管の異常や交通事故による外傷まで、心臓やその周辺に関わるあらゆる疾患が該当します。
また、手術だけでなく、チーム医療の主軸として、術前検査から、術後のICU管理、一般病棟での管理、術後のリハビリ、退院後のケアなど幅広く携わります。他職種との関わりも多岐にわたり、医療従事者に限らず、ペースメーカーを扱う場合には業者をはじめ、人工心肺を扱う技師、特に臨床工学士との連携が欠かせません。また、動脈硬化がベースになっている疾患では、循環器内科だけでなく糖尿病専門医との連携も必要です。
1-2.心臓外科医の種類と対象となる疾患
ひと口に心臓外科医といっても、担当する手術や症状によって分類されます。
「心臓外科医」は主に心臓や胸部大動脈の手術を担い、「心臓血管外科医」は心臓だけでなく腹部大動脈や下肢の動脈や静脈の手術なども担当します。
対象疾患となるのは、心臓外科では、狭心症・心筋梗塞、心臓弁膜症、胸部大動脈瘤など。これに対し、心臓血管外科では、胸部大動脈瘤(ステントグラフト内挿術)、大動脈解離(B型)、腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤なども対象となります。
心臓血管外科医は、特に血管系の病気を治療するために必要な高度な訓練を受けた専門医です。そのため、脳以外の体のあらゆる部分にある静脈と動脈に関する疾患に対応できるのが特徴です。関連する3学会で構成される「心臓血管外科専門医認定機構」によると現在認定中の心臓血管外科専門医は2024年2月の時点で2619名と公表されています。
1-3.主な勤務先
心臓外科医の勤務先は、大学病院や専門施設の整った民間病院が中心です。
心臓外科手術は難易度が高いケースも多く、術後も患者さんの安全な全身管理が必要です。また、心血管系の手術は、使用される麻酔も特殊なため、十分な経験を積んだ専門の麻酔科医が所属していることも前提となります。さらに、術前・術後の管理のため、教育を受けた十分な数の医療スタッフも欠かせません。必然的に、チーム医療などの体制が整っており、設備も充実している施設での勤務が中心となります。
心臓外科医の平均年収

心臓外科のみの情報を抜き取った公的な資料はないものの、外科の平均年収が参考になると考えられます。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によると、
外科(脳神経外科、形成外科をのぞく)の平均年収は1374万2000円でした。調査において、全ての診療科のなかで、3番目に平均年収が高くなっています。
■診療科別・医師の平均年収
| 順位 | 診療科目 | 平均年収(万円) | (計n=2,876) |
|---|---|---|---|
| 1 | 脳神経外科 | 1,480.3 | (n=103) |
| 2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 | (n=130) |
| 3 | 外科 | 1,374.2 | (n=340) |
| 4 | 麻酔科 | 1,335.2 | (n=128) |
| 5 | 整形外科 | 1,289.9 | (n=236) |
| 6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | (n=304) |
| 7 | 内科 | 1,247.4 | (n=705) |
| 8 | 精神科 | 1,230.2 | (n=218) |
| 9 | 小児科 | 1,220.5 | (n=169) |
| 10 | 救急科 | 1,215.3 | (n=32) |
| 11 | その他 | 1,171.5 | (n=103) |
| 12 | 放射線科 | 1,103.3 | (n=95) |
| 13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | (n=313) |
※独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成
上表で紹介した平均年収はあくまでも目安であり、勤務する病院の運営母体や規模、勤務形態、地域などによって異なります。
外科の平均年収が他の診療科よりも高い傾向にあるのは、緊急手術や処置などが必要な場合が多いだけでなく、緊急時の対応のためのオンコールやシフト制の勤務形態が必要なことから、各種手当の金額が増えるのではないかと考えられます。
なお、「2023年(令和5年)賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は1,436万円4,700円でした(「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」にて算出)。上記の資料は2012年のものであり、比較が難しいものの、他の診療科と比べて、平均年収に近い年収が得られると考えられます。
心臓外科医の常勤、非常勤それぞれの収入事情

外科医の平均年収を参考に紹介しましたが、実際には、勤務形態によっても大きな差が出ます。続いて、マイナビDOCTORに掲載された求人をもとに、参考として心臓血管外科医の収入事情についてご紹介します。
3-1.常勤の心臓血管外科医の年収の目安
マイナビDOCTORが公開している心臓血管外科医の常勤の求人を参照すると、心臓血管外科医の年収は1,000万円~2,000万円が相場といえます(2024年10月22日時点)。
金額に幅があるのは、勤務地域や業務内容、オンコール対応・緊急対応の有無などによって条件が異なるためです。
常勤の場合、主に週5日勤務がほとんどですが、「週4日以下の勤務可能」と提示されている案件もあります。年収を比較する際は、業務内容や勤務時間、勤務日数も踏まえて検討しましょう。
3-2.非常勤の心臓血管外科医の年収の目安
マイナビDOCTORが公開している心臓血管外科医の非常勤の求人から、平均年収を探ってみましょう。
非常勤には、時給制と単価制があります。
時給制の場合、時給10,000円~11,000円(2024年10月22日時点)が相場で、日勤勤務が多く見られます。
単価制では、1回60,000円~200,000円(2024年10月22日時点)が目安となります。単価制は、日当直や当直がほとんどですが、緊急対応や、高度な技術や経験が求められる案件ほど金額が高くなる傾向があります。
非常勤の時給や単価を比較する際には、勤務地域だけでなく勤務時間帯や緊急対応の有無、求められる技術や経験などについて十分に確認することが大切です。
心臓血管外科医が年収を上げる4つの方法

他の診療科と比べて、高い傾向にある心臓外科医の年収ですが、さらに年収を増やしたいという方もいらっしゃることでしょう。年収を上げるための方法を4つ紹介します。
4-1.専門性を高める
心臓外科医としてさらに年収を上げたいのであれば、より専門性を高めることを検討してみましょう。心臓血管外科自体がサブスペシャリティ領域となりますが、さらに、特定の疾患や手術のスキルを高める、指導医を目指す、希少な症例を学会で発表するなど、キャリアアップを目指すのも一案です。心臓外科医としてのスキルが認められれば、提携施設の病院に呼ばれて手術を請け負うこともあります。施設からの公式な依頼が増えることで、年収アップが見込めます。
また、スキルアップのために、留学する方法もあります。留学には費用や時間を要しますが、海外における心臓外科医のステータスは高い傾向にあり、最終的に海外で就職することができれば年収が大きく増える可能性もあります。
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4-2.アルバイトをする
就職先の施設で副業が許可されている場合は、アルバイトをすることで年収アップにつながります。定期非常勤案件やスポット案件(単発案件)など、条件が合う方法を検討してみましょう。多忙な心臓外科医は、単価が高いスポット案件を選択する方が効率的な収入アップになるかもしれません。ただし、定期非常勤とは異なり、安定した収入は保障されません。
一方で、興味がある症例が多く見られる医療機関に、定期非常勤として働くことで、専門性を高める機会が増え、生涯年収を増やすきっかけになることもあります。一般外来だけでなく、地域のクリニックが担う術後の患者さんのフォローを担当するようなアルバイトもあります。多忙な中でアルバイトの時間を確保するのも大変ですが、特に、将来、開業を目指している場合には、人脈作りをかねてチャレンジするのも良いでしょう。
4-3.転職を検討する
今の働きに見合った収入が得られていないと感じるなら、現在勤務している職場で、まずは年収交渉をしてみましょう。そのうえで、年収アップが見込めない場合には、転職を検討するのも1つの方法です。
また、外科医の収入は、担当する手術の件数と比例する傾向にあります。年収アップを目指すなら、手術件数が多い病院を探すのも良いでしょう。ただし、その分、心身への負担が大きくなることを理解しておく必要があります。
転職先探しの時間を確保できない場合には、医師専門の転職エージェントを利用してみてはいかがでしょうか。希望する年収のほか、勤務地などのゆずれない条件を相談することで、求めるキャリアパスやライフスタイルに応じた案件情報が得られます。
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4-4.開業を検討する
医療機関での勤務よりも、開業医の方が生涯年収は高くなる傾向にあります。年収アップを目指して、開業を検討してみるのも良いでしょう。心臓外科医は、長時間にわたる手術や、緊急対応も多いため、ある程度の経験を経て、働き方を見直す人も少なくありません。将来の負担を考慮して、開業を検討するケースもあるかもしれません。
ただし、心臓血管外科として開業するには、手術に関わる設備だけでなく、患者さんの全身管理に必要な医療機器などを用意することになるため、初期費用だけで膨大な予算が必要です。できるだけ初期費用の負担をおさえたい場合には、循環器内科として開業し、クリニックで対応可能な検査や治療の範囲で診療を行う選択肢もあります。
また、開業医として年収アップを目指すのであれば、医師としての経験だけでなく、施設を運営する経営者のスキルが必要な点を理解しておかなければいけません。資金調達をはじめ協働できる施設や信頼のおけるスタッフの確保、経理や受付などの事務対応など、さまざまな準備が必要な点を理解したうえで、検討してみましょう。
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心臓外科医に向いている人

心臓外科は、生命の危機と隣り合わせの診療科であり、その責任も重たいものです。他の診療科でも同様ではありますが、心臓外科の場合には、手技のスキルアップだけでなく手術を成功させるためのマネジメント能力が必要です。また、外科医として手術が担当できるようになるまで、ある程度の時間がかかります。その間も、スキルアップに研鑽できる人は向いているでしょう。
加えて、チーム医療を進めるうえで、多職種とのコミュニケーションが円滑で、協働できる人が向いています。さらに、心臓外科では、心臓や血管の再建を主体とした繊細な手術を担います。細かい技巧に加えて、立体構築能力(空間認知能力)が優れている人は特に向いているでしょう。
心臓外科医としてのスキルアップで、効率よく収入アップを目指そう
心臓外科の収入は、勤務先の施設、地域、各医師の臨床経験やスキルなどによって異なります。しかし、高度な技術やスキルを持つ医師ほど、市場価値が高くなるため、収入アップを目指しやすくなります。さらなる専門性の向上を目指したり、留学したりすることを検討しながら、収入アップを目指してみてはいかがでしょうか。転職による収入アップを考えるなら、医師専門のエージェントに相談してみるのもおすすめです。
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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)
医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。
