医師は、急変の可能性がある患者さんと常に向き合う職業です。そのため、当直やオンコールをこなしながら外来や病棟管理を行う機会も多いという特徴があります。ですが、体力的にも精神的にも負荷が大きいことや、育児や介護などプライベートな事情によって、当直やオンコールができるだけ少ない職場で働きたいと考える医師は増えています。今回は、医師の当直・オンコールの実態を振り返るとともに、当直・オンコールの少ない職場を見つける方法について解説します。
- 当直やオンコールの働き方に関心がある方。
- 当直・オンコールが少ない求人を探している方。
- 当直・オンコールによる収入相場を知りたい方。
目次
医師の当直・オンコールの実態は?
実際のところ、医師はどのくらいの頻度で当直やオンコールを行っているのでしょうか。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、調査対象となった3,467人のうち、主たる勤務先で当直(宿直)を課されていない医師の割合は32.6%に過ぎず、約7割の医師は当直をしていることになります。当直回数別にみると月あたり1~2回の当直を行う医師の割合が34.8%で最多である一方、月5回以上行う医師も10.8%にのぼります。診療科別にみると、救急科の医師が圧倒的に多くの回数の(当直あり94.4%、月5回以上63.9%)当直を行っています。そのほかに産科・婦人科、小児科、精神科などの診療科で当直回数が多い傾向にあります。
当直中の平均睡眠時間は「4時間以上」と回答した医師が半数程度でした。一般的に推奨される睡眠時間を考慮すると「4時間」でも短いといえますが、「2時間未満」または「ほとんど睡眠できない」との回答が9.3%を占めており、過酷な勤務を強いられている医師が一定数いる実態が垣間見れます。
また、オンコールのある働き方をしている医師は全体の88.2%と、大半の医師がオンコールを経験しています。月あたりの回数は「1~3回」が49.4%で最多、次いで「4~6回」が14.3%でした。診療科別にみると、当直回数の多い傾向にあった産科・婦人科(10回以上が9.7%)、小児科(10回以上が6.1%)などをおさえ、脳神経外科がオンコールによる出勤回数が最も多い(10回以上が10%)診療科のようです。
オンコール業務の多忙さは日によって大きく異なりますが、急患や急変が多い診療科ほど対応する機会は多くなります。たとえ実際の稼働時間は短かったとしても、オンコール待機中は「いつ呼ばれるかわからない」という精神的な負担がかかるため、自宅で過ごしていても心身が本当に休まっているとは言い難いでしょう。
当直・オンコールが少ない医師の勤務先の特徴
大半の医師が当直またはオンコールの経験があるようです。そのなかで、当直やオンコールが少ない医療機関にはどのような特徴があるのでしょうか。
2-1.都市部の病床数が多い医療機関
まず当直やオンコールが多い医療機関の特徴として、都市部よりも医師不足が深刻な地方の医療機関や、病床数が少ない医療機関が挙げられます。裏を返せば、医師や病床数が充足している都市部の医療機関は当直やオンコールの回数が少ない傾向にあるといえます。ただし中には、医師が充足していても教育の一環として若手医師に重点的に当直やオンコールを課す医療機関もあります。マンパワーが豊富な都市部の医療機関での勤務を検討するなら、転職をする前に勤務実態を確認しておくほうがよさそうです。

2-2.慢性期病院
一般的には、急患や急変が多い急性期病院よりも、状態が落ち着いた患者さんが多い慢性期病院のほうが当直やオンコールは少ない傾向にあります。中にはオンコールがほとんどないという慢性期病院もあるほどです。しかし、職場の稼働医師数によっては頻繁に当直やオンコールを課される可能性もあるので、転職を検討する際は実際の当直回数などについて具体的な回数を確認しておくといいでしょう。
当直・オンコールが少ない診療科は?
当直やオンコールは多忙な診療科ほど多いと思われがちですが、必ずしもそうとはかぎりません。当直やオンコールが少ない診療科としては、以下のようなところが挙げられます。
3-1.放射線科
放射線科は、一部のカテーテル治療などを除いて緊急を要する場面が少ない診療科だといえます。それに伴い、当直やオンコールの機会もかなり少なくなるでしょう。
3-2.麻酔科
麻酔科は医師不足であるため、当直やオンコールが多いというイメージがあるかもしれませんが、前出の調査では、調査対象となった診療科の中で「当直あり」と回答した医師の割合が2番目に低いという結果でした。

3-3.内科系の診療科
内科系の診療科は、当直を行うとしても月あたりの回数が比較的少なめという傾向があります。ただし、内科系の診療科であっても、救急指定病院の消化器内科や循環器内科などは当直やオンコールの回数が多い場合もあるので注意が必要です。
当直・オンコールが少ない勤務形態は?
常勤、非常勤、スポットなどの勤務形態によっても、当直やオンコールの回数に差が出てきます。具体的には、次のような勤務形態では当直・オンコールが少ない傾向にあります。
4-1.非常勤勤務
当然かもしれませんが、より責任が重い常勤医に比べ、非常勤勤務の医師は当直やオンコールの回数が少ない傾向にあります。中には常勤医であっても、家庭の事情などによって医療機関と相談したうえで特例的に免除されるケースもありますが、とくに人手の足りない医療機関や転職希望者から人気の高い医療機関では、そのようなケースはまれだといえるでしょう。
4-2.主治医制でない体制
常勤医の中でもとくに主治医制を採用している職場で働く場合は、当直やオンコールが多くなります。主治医は、担当患者の急変などがあれば、ほぼ365日24時間体制で対応しなければならないからです。当直・オンコールの少ない職場を探したい方は、病棟の体制もチェックするようにしましょう。
当直・オンコールによる収入の相場は?
一般的には、当直やオンコールのある働き方では時間外労働が増えるため、その回数に応じて収入も増えます。筆者の経験上の肌感覚ですが、常勤医の当直業務が1回あたり3~5万円ほどが月給に上乗せされるというのがおおよその金額感ではないでしょうか。また医療機関によっては、当直時間帯の救急車の対応件数や入院患者数などに応じてインセンティブ手当を設けているケースもあります。

オンコールの場合は医療機関によって手当の基準が異なります。実際に対応したか否かや稼働時間にかかわらず、オンコール1回あたり1~3万ほどの手当が支給されるケースもあれば、実際に患者さんの対応をした時間外勤務に対する手当のみが支給されるケースもあるようです。
当直・オンコールが少ない職場の探し方は?
当直やオンコールが少ない医療機関で働きたい場合は、今回ご紹介したような当直・オンコールが少ない診療科や勤務形態を参考にしていただくと、比較的早く希望の職場が見つかるのではないかと思います。
求人情報には当直やオンコールの有無・回数などが記載されていますので、まずは募集要項を隅々までチェックすることが大切です。「応相談」と書かれている場合は、交渉次第で回数を減らしてもらったり、免除してもらったりできる可能性もあります。
医療機関との交渉は医師の転職を専門とするエージェントの得意分野ですから、活用を検討してもいいと思います。国を挙げての働き方改革が叫ばれているいま、折からの医師不足も影響して「当直・オンコールを免除してもいいから来てほしい」という医療機関は多くあります。皆さんが希望にマッチする職場に巡り合えることを願っています。