医師が転職を考えるタイミングは、人によってさまざまです。どんな理由があるにしても、効率よく転職したいと考える人が多いことでしょう。今回は医師の最適な転職のタイミングや活動開始の時期はいつなのか、医師が転職を検討する代表的な理由とともに詳しく解説します。
目次
医師が生涯で転職を考える主なタイミングと7つの理由

かつては出身大学の病院医局に所属し、大学の関連病院を行き来しながら経験を積んでいくというキャリアの積み方が一般的でした。しかし、医師のキャリアが多様化している昨今では、選択肢も広がり、転職をするタイミングも個人によってさまざまです。
一般企業の会社員の場合は、20代・30代に転職しやすい傾向があり、「転職に適した年代」が見られます。一方で、医師は転職するタイミングをライフスタイルやキャリアプランに合わせて比較的自由に選択できる業種といえます。
では医師はいったいどのような理由やタイミングで転職を検討するのでしょうか。続けて、転職を考えるきっかけとして代表的なものを見てみましょう。
1-1.医局から離れたくなった
人間関係のしがらみが強い医局の環境を「合わない」と感じる若手医師が、「医局でない環境で働きたい」と市中病院やクリニックへの転職を考えるようになるケースがあります。また、10年以上医局で臨床経験を積んだ医師であっても、将来的に出世の可能性が見込めないと感じた場合や、もっと自由に働きたいと感じた時に、別の環境でのキャリアの研鑽を検討することもあるようです。
1-2.スキルアップしたい
経験年数を問わず、スキルアップは医師の代表的な転職理由です。専門医資格取得に向けて症例数や手術件数の多い医療機関への転職を検討することもあれば、理想の医療を提供できる環境を求めて転職を検討することもあるでしょう。急性期病院で多くの手術を経験してきた医師が、在宅医療の現場に移るなどまったく新しい分野へ挑戦するケースもあります。
1-3.年収を上げたい
結婚・妊娠・出産・育児といったライフステージの変化によって、収入を増やしたいと考える時期があります。住宅購入や子どもの受験など、お金のかかるライフイベントに向けて収入アップを目的に転職を考えることもあるでしょう。また、海外留学や資格取得などの資金を用意するために、より収入の高い職場への転職を検討するケースもあります。
1-4.プライベートな時間が欲しい
多忙でプライベートの時間を確保できていない医師は、休息やリフレッシュの時間を確保したい、家族との時間を充実させたい、という思いで転職を考えることもあるでしょう。
実際に、厚生労働省が公表する「令和元年 医師の勤務実態調査<概要>」によると、病院常勤勤務医の1週間の勤務時間(診療+診療外)が60時間を超える割合は、全体の37.8%となっています。2016年度の調査結果(39.2%)と比較すると1.4%低減していますが、いずれにしても、過酷な労働環境におかれる勤務医が多いことがわかります。

ワークライフバランスを考慮した働き方や、肉体的・精神的負担の少ない働き方を模索するうえで、転職という選択肢を考えるかもしれません。
1-5.転科したい
転科が転職のきっかけになるケースもあります。他の診療科に強い関心がある、ワークライフバランスを重視した働き方のできる診療科で働きたい、といった場合です。ただし、転科を希望する医師を受け入れてもらえる転職先を探すのは、時間がかかるかもしれません。
転職先となる診療科の経験がまったくない医師を雇用する施設は少ないものの、人手不足の場合や、研修OKとするところなどでは、将来の展望を見越して雇用してもらえることもあります。
1-6.セカンドキャリアを検討するとき
定年が近づくにつれて、これまでの働き方を見直し、心身ともに負担の少ない働き方を検討して転職を考えるケースもあります。当直や手術など負担の大きい働き方を避けて、これまで積んできたキャリアを活かしながら、収入水準を維持したいという場合は、セカンドキャリアをふまえた転職を考えることになるでしょう。
1-7.ライフステージの変化
出産や育児といったライフステージの変化は、転職を考える大きなきっかけになります。時短勤務が可能な職場や託児所が近くにある職場など、育児と仕事の両立が可能な勤務先への転職を希望する医師が多いでしょう。
現在の職場で家庭の事情に合わせた働き方ができるのが理想ですが、勤務日数や勤務時間、業務内容の軽減ができない場合もあります。将来を見越して産休・育休のとりやすい職場や、育児をしながら働きやすい職場を探しておくと、いざ必要になった時にスムーズに動くことができるでしょう。
また、子どもの成長に応じて復帰を目指したり、非常勤勤務から常勤勤務に働き方を変更したりする時期に合わせて転職をする場合もあります。ブランクがある場合でも研修制度やサポートが充実した施設であれば安心して復帰できます。
医師の転職にはどのくらいの時間がかかる?

医師の転職スケジュールは、転職方法や転職先への希望条件によっても異なります。求人情報は流動的であり、特に働き方や処遇についての条件や要望が多い場合は、応募先がすぐに見つかるとは限りません。これは、要望に合った求人を探すことに時間がかかることに加え、好条件の求人案件はすぐに応募が締め切られてしまうという傾向があるためです。
転職エージェントを利用した場合、応募してから内定が出るまでは1ヵ月から2ヵ月程度の時間が必要といわれています。知人の紹介によって転職をする場合は、新しい勤務先の希望時期や現職の引き継ぎ等の事情によってかかる時間はさまざまでしょう。
いずれの場合でも、転職スケジュールで重要となるのは退職を申し出るタイミングです。医師不足に悩む医療機関が大半ですから、退職の意思を伝えても引き留めるような声がかかるケースが多いようです。
本来、退職は自由意志であり、それに応える義務はありません。とはいえ、医療機関側が代わりの医師を募集する期間等を考慮すると、できれば半年前まで、遅くとも2~3ヵ月前までには退職の申出を行っておくとよいでしょう。契約書に退職の申出期限が記載されている場合には、それをふまえて、引継ぎの準備期間は長めにとっておくと安心です。
また多忙な日々の合間をぬって情報収集や応募書類の作成を行うことを考えて、転職の準備はなるべく早めに開始するとよいでしょう。なお転職エージェントに希望条件を前もって伝えておくと、条件に合致した求人が出た際に連絡をもらえます。
医師が転職活動を開始し、転職をするのに適したタイミングは?

効率よく、スムーズに転職活動を始めたいなら、退職を申し出るタイミングを考慮することが大切です。効率よくスムーズな転職を進めるために、現在の職場の状況をふまえて考えてみましょう。
3-1.できれば退職を避けたほうが良い時期
退職を急がない場合には、繁忙期の退職は避けて計画を立てたほうがよいでしょう。繁忙期の退職は残されたスタッフに負担をかけることになり、退職日まで同僚と気まずくなるかもしれません。また、研修施設の指導医として勤務しているような場合、自身の退職によって同僚や後輩が専門医資格を取得しづらくなってしまったり、他の医師も別の医療機関への転職を決めたりしてしまうなど、周囲への影響が大きくなる可能性があります。職場の状況を見ながら、タイミングを見て直属の上司に相談をしておきたいところです。
職場の上司や先輩と、転職後も業務で関わったり、学会などで顔を合わせる機会があったりする可能性があります。場合によっては同じ施設に戻って、勤務することになるかもしれません。転職を決めたときはできる限り、良好な関係を継続できるように時期や状況に配慮をして準備を進めることをおすすめします。
3-2.医師が転職をする際の適切な時期は?
では、転職をするのに適した時期があるのでしょうか。実際のところ、年間を通じて、どの時期でも転職は可能です。医師不足が続く中、実際に時期を問わず、求人ニーズがあります。時期を考慮してタイミングを決めたいと考えるなら、年度はじめの4月の転職を目指してみてはいかがでしょうか。
4月は異動や採用活動が活発になる時期で、新体制に整える医療機関が多く見られます。転職先でスムーズに働きはじめたいなら、年度はじめの4月入職を目指して転職計画を進めるのがおすすめです。また、半年ごとの出向など、期間が提示されるケースも見られるため、9月、10月頃も転職しやすい時期といえます。
3-3.転職活動中にやっておきたいこと
解雇になった場合を含め、退職後に困るのが「専門医試験更新のための症例レポート」などが必要になることです。退職後には、元の勤務先に保管されているカルテにアクセスできなくなるため、引継ぎと同時に、自身で記録を残しておきましょう。
医師が転職をスムーズに進める4つのポイント

医師が転職活動をする際には、以下のポイントを意識して進めてみましょう。
4-1.情報収集は早めにスタート!
転職に関する情報収集は、キャリアパスなどの将来の展望を考慮するためにも、思い立ったときからすぐにでも始めるのがおすすめです。インターネットでの情報収集が最も手軽な方法ですが、はじめての転職で何の情報収集からはじめるべきかわからない人は、転職エージェントに相談をすると効率よく情報収集できるのでおすすめです。
4-2.転職の流れを理解しておく
情報収集後、転職が成功するまでには、以下のステップがあります。
1.応募書類作成
2.応募
3.面接
4.内定
5.退職の申出
6.入職
4-3.常勤医は余裕をもって1年前からの準備を
転職には、内定獲得と引継ぎ等の期間を合わせて、最低6ヵ月程度が必要であることを理解しておきましょう。内定の連絡は応募後、1ヵ月程度以内が目安ですが、施設の都合で予定が遅れることもあるかもしれません。
また、代わりの医師が見つかりにくい状況では、想定以上に引継ぎに時間を要する可能性もあります。転職先でも常勤医として働きたい場合は、6ヵ月よりも長い期間を準備期間とし、できれば余裕をもって1年前から準備をはじめるとよいでしょう。
4-4.はじめての転職は、転職エージェントのサポートがあると安心

はじめて転職を考える時、何から始めていいのか、どのように進めるべきなのか悩むことが多いかもしれません。慣れた職場から離れることは不安要素が多く、戸惑いながらの転職活動は、それ自体がストレスになってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、医師専門の転職エージェントに登録し、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。履歴書・職務経歴書の書き方や面接のコツなど、専門のキャリアアドバイザーが親身になってアドバイスしてくれます。アピールポイントとなる自身の強みや長所などについても助言をもらえるので、何を書いたらいいのかわからない方にはとくにおすすめです。
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転職先候補が決まったら、給与面や待遇といった聞きにくいこともアドバイザーが情報収集し、交渉も担ってくれるので安心です。
転職のタイミングは計画的に進められることもありますが、チャンスはいつ飛び込んでくるかわかりません。自身の得意分野を意識し、スキルアップを続けながら、より良い転職を目指してみましょう。
キャリアプランを考えたタイミングで転職を成功させよう
スキルアップやライフステージの変化は、転職を考えるひとつのきっかけとなります。自身のキャリアプランを考えながら、最適なタイミングで転職ができればやりがいのある働き方を実現できるでしょう。転職を決意した後は、退職の申出を含めおおよその転職活動期間を決め、無理なく準備を進めることが大切です。より効率よく転職活動を進めたいなら、転職エージェントを活用するのがおすすめです。希望に合った求人情報の提案のほか、履歴書の書き方や面接対策など転職活動全般にわたりサポートしてもらえるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
参考URL
令和元年医師の勤務実態調査<概要>|厚生労働省