「適切な治療（＝動く総合病院）」と「お看取りまでしっかりと」という2つの考え方を重視し、これまでにないハイレベルの在宅医療を推進しているのが貞栄会の内田貞輔理事長です。「病院は医療者主導ですが、在宅は一人ひとりの生活や家族背景まで踏まえたオーダーメイド型の治療を行うとともに、患者様やご家族の気持ちに最期までどれだけ寄り添えるかを考える医療です。医学を超えて人間力も求められるので、在宅を経験すると医師としての総合力が圧倒的に向上します」と熱く語ってくれました。そんな内田先生が実践する在宅医療はいま注目の的で、教えを乞う医師も多数。入職後は、内田先生みずから基本的にマンツーマンで指導します。

在宅患者さんが入院を余儀なくされる理由で多いのが誤嚥性肺炎。静岡ホームクリニックでは誤嚥性肺炎の在宅での治療率が95％と驚異的な数字を上げています。「普段から生活を見ていますので、例えば本当に入院が必要な急性心不全や脳梗塞などの兆候もすぐに察知できます」と内田先生。病院に搬送して入院に至らなかったケースはほぼなく、「必要な人に適確な処置を」の姿勢は、医療費抑制といった社会的課題の貢献も見すえています。またご自宅で治療することを「在宅入院」と呼び、終末期の患者さんのお看取り率は9割前後。全国平均55%を大きく上回っています。患者さんとご家族の意向のもと、安らかな最期と悔いのない介護を支えています。

看護師、事務職、時にはケアマネージャーも含め、多職種が密に連携しています。特に看護師は在宅医療のキーパーソンであり、医師のパートナーとして求めるレベルも高いため、全員がフルタイム勤務の正職員です。貞栄会が地域に支持されているのも、「看護師の質がまったく違う」という評判が少なからず与っています。医師も常勤が中心ですが、育児や介護などそれぞれの事情に応じて時短や非常勤などの制度が整っています。

訪問診療カーに乗って患者さん宅に行くのは、かならず医師と看護師のペア。「医療従事者が2人いると役割分担もスムーズですし、ご家族に相談いただいた内容の刷り合わせなど、何事につけペア訪問での相乗効果は大きいです」と内田理事長。未経験で入職したての医師にとっては、ベテラン看護師がそばにいることも心強いです。

活躍する医師のほとんどが在宅未経験。「他の訪問診療事業所と比べ、やっている内容が段違いに濃いので、むしろ未経験の方が一番望ましいです。まっさらな状態で私たちの医療を学んでほしい」と内田先生。症例数が圧倒的に多いため、在宅専門医資格を取るのにも有利な環境ですが、「最低で2年位は必要かと思います。私の見るところでは1年半くらいから在宅専門医としての力がめきめきと伸びてきます」と指摘します。現在も2人の研修生が専門医を取得するために実践力を磨いています。また、同法人での経験は、その後にどんなキャリアを選んでも役立ちます。開業サポートも行っており、これまでに2人の医師が独立し、成功を収めています。

患者さんに最期まで寄り添える在宅はやりがいが大きく、概ね入職から数か月間くらいで「患者さんとのコミュニケーションの齟齬」や「医療の価値観の違い」といった幾つかのハードルを乗り越えると、その後の定着率はとても高いです。分院を任される医師、独立開業した医師の「患者ファーストの医療の再現性」も高く、どこも充分な受入数を確保しています。このたび新しく開院する横浜在宅診療クリニックでもそうした医師を育てる予定。内田先生が対面、オンラインで指導するほか、希望される方はあらかじめ静岡ホームクリニックで学ぶこともできます！