消化器科医の求人ニーズは常に高くとくに転職しやすい診療科のひとつです。また常勤や非常勤、単発アルバイトなどの多様な勤務形態の中から柔軟に働き方を選択できるといわれています。そんな消化器科医の年収事情と働き方の特徴について解説します。
- 消化器内科医の年収水準に関心がある方。
- 柔軟な働き方や非常勤勤務に興味がある方。
消化器科医の年収事情

「医師・歯科医師・薬剤師統計」(厚生労働省、2018年)によれば、医療施設に従事する全医師数は31万1,963人であり、そのうち消化器科医(消化器内科医)は1万4,898人(4.8%)で、調査対象となった全診療科の中で4番目に多い人数となっています。この数字を見ると消化器科医は充足しているように思えますが、消化器科が治療対象とする疾患は多岐にわたり、他の診療科と比べても患者数が多い傾向にあるため、決して十分とはいえません。特に医師不足が深刻な地方では、消化器科医を募集するために破格の条件を提示する医療機関も多々あります。
「必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)によれば、消化器科医(消化器内科医)の現員医師数は常勤・非常勤を合わせて7,691.6人であり、全国で1,065.7人の増員が必要とされています。求人倍率は1.14倍であり、他の診療科と比較すると平均的な水準だといえるでしょう。ただし、都市部の医療機関では競争倍率が高くなることもあるため、専門医資格や内視鏡検査の実績など何らかのアピールポイントを用意しておきましょう。また、より高額な報酬を求めて転職を考える場合は、消化器科医が不足している地方に目を向けることもひとつの戦略です。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、「呼吸器科・消化器科・循環器科」の平均年収は1,267.2万円となっています(3科をまとめて集計)。調査対象となった全診療科の医師の平均年収は1,261.1万円であるため、これら3科の平均年収は全診療科においても平均的な水準ということになります。
■診療科別・医師の平均年収
順位 | 診療科目 | 平均年収(万円) | (計n=2,876) |
---|---|---|---|
1 | 脳神経外科 | 1,480.3 | (n=103) |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 | (n=130) |
3 | 外科 | 1,374.2 | (n=340) |
4 | 麻酔科 | 1,335.2 | (n=128) |
5 | 整形外科 | 1,289.9 | (n=236) |
6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | (n=304) |
7 | 内科 | 1,247.4 | (n=705) |
8 | 精神科 | 1,230.2 | (n=218) |
9 | 小児科 | 1,220.5 | (n=169) |
10 | 救急科 | 1,215.3 | (n=32) |
11 | その他 | 1,171.5 | (n=103) |
12 | 放射線科 | 1,103.3 | (n=95) |
13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | (n=313) |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
ただし、年収1,000万円以上の医師の割合は76.6%にものぼり、脳神経外科、外科、産科・婦人科、整形外科に次いで高い水準です。最も多い年収帯は1,000~1,500万円未満(39.8%)ですが、年収1,000万円に満たない医師も少なからずいること、年収2,000万円以上を得ている医師が他の診療科と比べて少ない点も特徴です。
■循環器科・呼吸器科・消化器科の年収階層別の分布
主たる勤務先の年収 | 割合(%) |
---|---|
300万円未満 | 2.6 |
300万円~500万円未満 | 3.3 |
500万円~700万円未満 | 6.6 |
700万円~1,000万円未満 | 10.9 |
1,000万円~1,500万円未満 | 39.8 |
1,500万円~2,000万円未満 | 29.6 |
2,000万円~ | 7.2 |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
こうしたデータから、消化器科医は非常に高い水準の給与を得ることは難しいものの、平均的な水準の年収には達しやすいといえるでしょう。なお、平均水準以下の年収の医師は、次項で紹介するような、フレキシブルな働き方を選択している可能性が考えられます。
消化器科医の働き方と給与の特徴

前出の「勤務医の就労実態と意識に関する調査 」によれば、「呼吸器科・消化器科・循環器科」の1週間当たりの勤務時間は平均49.4時間であり(3科をまとめて集計)、調査対象となった全診療科の平均(46.6時間)をやや上回っています。一方で、週に70時間を超えるような長時間勤務の医師の割合はそれほど多くありません。また、1週間の勤務時間が20時間を切るような、短時間勤務の医師の割合が比較的高いところも特徴です。
背景として、消化器科医が常勤や非常勤、単発アルバイトなど様々な勤務形態の中から自身のライフスタイルや希望に合わせた働き方を選択する傾向が強いことがうかがえます。勤務形態ごとの働き方の特徴をみていきましょう。
2-1.常勤/非常勤
入院患者数が多く、内視鏡治療を積極的に行う医療機関で常勤として働く場合は、やりがいが大きい仕事である一方で、ハードワークになる可能性もありそうです。一方、入院施設を持たない医療機関であれば、外来や検査のみを担当することになるため、時間外労働はそれほど発生しないと考えられます。
非常勤の場合も、業務内容は基本的に常勤と変わりません。ただ医療機関によっては外来や検査など特定の診療のみを担当するケースもあります。また、希望によっては日当直や時間外労働を免除できる求人もあり、育児中の女性医師などからの人気が高くなっています。
2-2.単発アルバイト
消化器科医の強みは、内視鏡検査・治療ができることです。専門医資格を持っていなくても、ある程度の経験を積めば内視鏡検査をともなう健診などのアルバイトができるようになります。
家庭の事情などで常勤は難しいもののスポット的に労働時間を確保できる場合は、こうした単発のアルバイトのみで働くことも選択肢のひとつにできます。社会保険の適用が受けられないケースもありますがアルバイトの報酬は高額であるため、育児中の女性医師などから人気が高い働き方となっています。
消化器科医の魅力と満足度

前述の調査「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、「呼吸器科・消化器科・循環器科」の自身の給与に対する満足度をみると、「満足している」「まあ満足」との回答は33.5%にとどまり、他の診療科と比べて低い水準です(3科をまとめて集計)。一定の年収水準は得られるものの、他科の医師と比較をして「少ない」と感じてしまうのかもしれません。
ですが、消化器科医はある程度の経験を積みさえすれば、自身のライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を選べるというメリットがあります。プライベートも大切にしながら単発アルバイトで効率よく収入を得る、という働き方ができる診療科はかぎられています。自身のキャリアとライフプランの希望と照らし合わせ、自分にとって満足度の高い働き方を検討しましょう。