医師としての高度な専門性と技術の証明となる専門医制度が大きく変わろうとしています。既存の専門医制度とは別の、新専門医制度は2018年からの運用が予定され、医師のキャリアにも大きな影響を与えるであろうことが懸念されています。新専門医制度は19の基本領域の診療科と29のサブスペシャリティ領域の診療科で構成されます。どのような診療科が新専門医制度の対象となるのでしょうか?
既存の専門医制度と新しい専門医制度の違いとは?
既存の専門医制度も新専門医制度と同じく、それぞれの診療科ごとの「専門医」を標榜することができる資格です。既存の専門医制度は各学会が運用する認定プログラムを修了することにより、専門医の資格を取得することができます。それぞれの診療科における一定の知識や技術があることの証明となり、医師それぞれのキャリアの志望に応じて取得することができます。
既存の専門医制度の種類はとても多く、内科専門医や外科専門医といったメジャーなものから、さらに細分化させて専門性を特化させた糖尿病専門医、頭痛専門医、果ては超音波専門医やレーザー専門医、温泉療法専門医など非常に多岐に渡ります。これらの専門医資格は取得することで能力の証明や患者さんの安心感につながるというメリットがあります。
ただし今までの専門医制度は内科専門医ならば内科学会、外科専門医ならば外科学会のようにそれぞれの学会が独自に認定プログラムを運用していました。2002年より開業医は専門医資格を広告に掲載してよいこととなり、専門医の種類は一気に増え、専門医の質の担保が課題となりました。そのため専門医の在り方が2011年より協議され続け、新しい専門医制度の導入が決定されました。
新しい専門医制度は「専門医の質を高め、良質な医療が提供されること」を目的としています。それぞれの学会で独自運用されていた認定プログラムが中立的な第三者機関である「日本専門医機構」で運用されることにより、専門医資格の認定基準の統一を図ります。
新専門医制度の19の基本領域
新しい専門医制度では19の基本領域とより専門性の高い29のサブスペシャリティ領域から構成されています。基本領域の専門医は以下のような診療科で取得できます。
基本領域の19の診療科はより専門性の高いサブスペシャリティ領域の専門医を取得するためにとても重要なものとなります。次に解説するサブスペシャリティ領域の専門医を取得するためには、関係のある基本領域の専門医を取得している必要があります。
基本領域の専門医を取得する場合、臨床研修(初期検研修)を修了した後に3年以上の養成期間が必要になります。専門医を取得できる指導を受けられる病院で働きながら研修を受け、症例の経験や筆記試験などの手順を踏んで専門医として認定を受けます。すでに基本領域にあたる専門医を取得している人は新たに新しい専門医制度の基準で更新をすることも可能です。その場合は診療実績の証明をしたり、講習会に参加したりといった要件があります。既存の専門医制度をそのまま新しい専門制度に更新するための要件は各学会のHPに掲載されているため確認してみるとよいでしょう。
新専門医制度の29のサブスペシャリティ領域
初期研修終了後、専門医取得希望者は3年以上の養成期間を経て基本領域の専門医資格を取得することができます。その後、さらに専門性の特化を希望する場合、29のサブスペシャリティ領域の専門医を取得することができます。29のサブスペシャリティ領域に含まれる診療科は以下のようになっています。
サブスペシャリティ領域の専門医は基本領域に比べて専門性が高いため、取得のためには基本領域の段階で希望するサブスペシャリティ領域に関係するものを取得する必要があります。例えば小児外科の専門医を取得したい場合は基本領域で小児科専門医を取得しておく必要があります。
当初、新専門医制度は2017年から運用が開始される予定でした。しかし現在では2018年4月からと1年延期されています。まだまだ懸念や議論点が数多くあり、制度の運用に関しては課題が存在しています。スケジュールが再度延期される可能性も十分に考えられるため、これらの分野の専門医の取得を検討している人は情報をキャッチできるようにアンテナを張っておくようにしましょう。
※参照:厚生労働省「第44回社会保障審議会医療部会資料」
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文:太田卓志(麻酔科医)