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診療科目別「医師の不足感に関する現場認識」

いわゆる医師不足問題の様相は、地域的な要因(典型的には都市部と医療過疎地との格差)のみでなく、診療科目によっても大きく変わってきます。診療科目ごとの医師充足度を知っておくことは、自身のキャリアを考える材料のひとつとなるでしょう。

目次

医師の不足感に関する現場認識

医師不足を感じる科は?「1位 麻酔科」「2位 救急科」「3位小児科」

全国の病院(20床以上)に勤務する24歳以上の医師を対象とした「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によると、自身の職場で医師が不足していると「非常に感じる」「まあ感じる」人の割合は68.6%でした。これを診療科別に見ると、「麻酔科」が81.7%ともっとも割合が高く、次いで、「救急科」(77.8%)、「小児科」(70.7%)、「整形外科」(70.6%)という結果でした。

医師の不足感

参照:厚生労働省「病院等における必要医師数実態調査」

診療科別の現員医師数・必要医師数

医師が充足している診療科目トップは「リハビリテーション科」

診療科別の医師充足度について、別の調査結果ものぞいてみましょう。「病院等における必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)によると、全科の現員医師数16万7063人(短時間正規雇用や非常勤を含む)に対して、必要求人医師数(※1)は1万8288人、必要非求人医師数(※2)は5744人であり、合わせて2万4033人の医師が足りていないことが浮き彫りとなりました。

現員医師数に対する必要医師数の倍率(※3)を診療科別に見ると、リハビリテーション科(1.29)がもっとも高く、「救急科」(1.28)、「産科」(1.24)と続き、「呼吸器内科」「腎臓内科」「神経内科」「心療内科」「病理診断科」が同値(1.20)で並んでいます。前項で挙がった「麻酔科」「小児科」「整形外科」も比較的高めの同値(1.16)でした。

  1. 必要求人医師数:増員が必要と考えられ、すでに求人している医師数。
  2. 必要非求人医師数:調査時点では求人していないが、増員が必要と考えられる医師数。
  3. (現員医師数+必要求人医師数+必要非求人医師数)/現員医師数

診療科別現員、必要医師数

※ 非常勤は、週当たり延べ勤務時間数を40時間で除して常勤換算した人数である。

参照:厚生労働省「病院等における必要医師数実態調査」 

求人理由(都道府県別)

「現員医師の負担軽減(患者数が多い)」が理由のトップ

「病院等における必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)は、病院等における医師の求人理由も明らかにしています。関東の一都三県に注目すると、いずれも「現員医師の負担軽減(患者数が多い)」が求人理由のトップであり、ほかに「退職医師の補充」「現員医師の負担軽減(日直・宿直が多い)」「救急医療への対応」といった理由が上位に挙がっています。

求人理由(都道府県別)

 埼玉県千葉県東京都神奈川県
退職医の補充14.80%17.40%17.10%17.70%
現役医師の負担軽減(患者数が多い)30.70%26.20%27.90%31.30%
現役医師の負担軽減(日直・宿直が多い)13.30%14.30%21.00%18.90%
休診中の診療科の再開1.20%3.50%0.60%0.60%
休棟・休床している病棟・病床の再開1.80%2.80%1.80%1.70%
外部機関からの派遣等から医師確保へ8.90%9.50%4.50%4.10%
救急医療への対応15.60%13.30%18.80%12.00%
正規雇用が望ましい10.90%9.30%7.00%11.40%
近々医師の退職の予定があるため3.00%3.70%1.30%2.10%

参照:厚生労働省「病院等における必要医師数実態調査」

考察

ハードワークな科は人が集まりにくい傾向に

診療科別の医師充足度を俯瞰したとき、医師不足に見舞われている科にはどのような特徴があると考えられるでしょうか。典型的には救急科や麻酔科、産科、小児科のように、ハードワークが求められ、訴訟リスクが高く、スキルアップの時間を作りにくいとされる科には人が集まりにくい――この現実は否定しづらいところでしょう。また、急速に膨れ上がるニーズに対して医師の供給が追い付いていない科も散見されます。ほかにも、いわゆるメジャー/マイナーの別や報酬の多寡など様々な要因が絡んでくるでしょう。ただし、現在医師不足に悩む科が20年後、30年後もそうであるとは限りません。現状を踏まえ、行く先々の時代の流れを見据えつつも、自らが志望するキャリアや使命感と相談しながら進路を定めたいものです。

文:太田卓志(麻酔科医)

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