医師は一般的な職種よりも収入が高くなりやすいため、税負担も大きくなりがちです。そのため、勤務医や開業医を問わず、節税対策が重要になります。
しかし、どのように節税をすればよいのか、よく分からない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、医師におすすめの節税対策や節税するメリット・デメリットを紹介するので、参考にしてください。
- 医師のための具体的な節税対策を知りたいと考えている方。
- 勤務医や開業医として、税負担を軽減する方法を探している方。
- 節税を通じた資産形成や経済的安定を目指している方。
目次
医師が節税対策を行った方が良い理由

世の中にはさまざまな職業がありますが、特に医師は節税対策を行った方がよい職種です。
その理由は、医師の収入の水準が高いためです。
節税対策を行わなければ、毎年高額の税金を支払い続けることになります。日本の所得税は累進課税制度が採用されているため、収入が上がるほど納税額も高くなります。
国が認めている適切な節税対策を行えば、所得税などの納税額を減らせるため、手元にお金を残しやすくなるでしょう。また、残った資金をうまく活用すれば、資産形成に生かすことも可能です。
このような理由から、医師の節税対策は重要です。
医師が節税対策をするメリット

医師が節税対策を行うことで、毎年支払う税金を少なくできます。しかし、医師の節税対策のメリットはそれだけではありません。具体的には、以下に挙げるメリットがあるため、節税対策が重要になります。
•高所得であるほど効果がある
•勤務医でも特定支出控除を受けられる
•資産形成につながる
それぞれ詳しく解説します。
2-1.高所得であるほど効果がある
高所得であればあるほど節税効果が高くなるのが、医師が節税対策を行うメリットです。
前述の通り、医師は収入の水準が高い職業です。医療事業の展開次第では、一般的な医師の収入水準を超える収入を得ることもできるでしょう。また、繰り返しになりますが、日本の所得税は累進課税制度を採用しており、収入(所得)が高い部分に高い税率が掛けられる仕組みとなっています。
つまり、所得が多くなりやすい医師だからこそ、節税対策の効果が高くなりやすいのです。税負担を少しでも軽減したいと考えているのであれば、自分に合った節税方法を学び、実行しましょう。
2-2.勤務医でも特定支出控除を受けられる
病院や医療機関に所属する勤務医なら、特定支出控除という控除制度を利用できるのも、医師が節税対策を行うメリットです。
特定支出控除とは、給与所得者や一定の基準を超える特定の支出があった場合に利用可能な控除制度のことです。
詳しくは後述しますが、通勤費や転居費、研修費などの支出があった場合、1年間における合計支出額の半分の金額まで控除を受けられます。
特定支出控除は開業医には利用できず、給与所得者の勤務医だからこそ利用できる制度です。
医師として働く場合、経費による支出が多いですが、支出の一部を経費として計上できるため、節税に効果的といえます。
開業医だけでなく、勤務医であってもこのような控除制度を利用できるのは、大きなメリットでしょう。
2-3.資産形成につながる
医師が節税対策を行うことで、資産形成につなげられます。
資産形成とは、将来必要になる資産を積み上げることです。例えば、勤務医の給与水準は一般的な職業と比較して高いものの、将来発生するライフイベントや老後の資産形成を十分に行えない場合もあります。特に、子どもを同じく医師にしたいと考えている場合は、教育費用が高額になりやすいといえます。
節税対策を講じることで、手元に残るお金を増やせば、資産形成に活用しやすくなるでしょう。また、不動産投資のように節税をしながら資産形成ができる方法も存在します。
効果的な節税対策を実行することで、目の前の税額を抑えるだけではなく、将来に向けた対策にもなるということを理解しておきましょう。
医師が節税対策をするデメリット

医師が節税対策を行うことで、享受できるメリットは多いです。ただし、医師の節税対策にはデメリットや注意点も存在します。
例えば、勤務医が利用できる特定支出控除ですが、医師として活動するために掛かる全ての費用を経費にできるわけではありません。また、詳しくは後述しますが、プライベートカンパニーを設立して節税する場合は、会社設立のための費用が掛かります。
さらに、不動産投資による節税では、投資する物件の老朽化リスクや空室リスクが伴う他、不動産市場の影響を受けて価格が下落する恐れもあります。
利用する節税方法によっては、デメリットが大きくなるケースもあるため、それぞれの節税方法について十分に把握するべきです。
また、適切で効果的な節税対策を講じたい場合は、信頼できる税理士を見つけることも重要です。
【勤務医】医師が押さえておきたい節税対策の方法

医師が節税対策を行う必要性やメリットを紹介してきましたが、具体的な節税方法が気になる方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、勤務医や開業医が押さえておきたい具体的な節税方法を紹介します。まずは、勤務医の節税対策です。具体的な節税方法は以下の通りです。
•特別支出控除を利用する
•不動産投資を始める
•プライベートカンパニーを設立する
•ふるさと納税を利用する
•ブログを開設する
それぞれ詳しく解説します。
4-1.特別支出控除を利用する
勤務医の節税対策の一つが、特別支出控除を利用することです。
特定支出控除とは、給与所得者が利用できる控除制度で、支出の一部を経費として計上することで所得税の節税対策となります。
特定支出控除の対象となるのは、以下の経費です。
経費 | 内容 |
---|---|
通勤費 | 通勤者として通常必要となる通勤のための支出 |
職務上の旅費 | 勤務場所を離れて職務を行うために必要な支出 |
転居費 | 職務に直接必要な技術や知識の習得を目的として研修を受けるための支出 |
研修費 | 転勤で転居するために通常必要となる支出 |
資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための支出 |
帰宅旅費 | 単身赴任のように、その人の勤務地や居所と自宅の間を旅行するために通常必要な支出 |
勤務必要経費 | 以下に挙げる支出で、職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者が証明したもの •図書費(書籍や定期刊行物で職務に関連するものの購入費) •衣服費(制服など勤務場所において着用が必要な衣服の購入費) •交際費等(構成比や接待費など、得意先や仕入先に対する接待、供応、贈答などのための支出) ※支出合計額が65万円を超える場合、65万円までの支出に限り経費計上可能 |
参考:国税庁「給与所得者の特定支出控除」
また、特定支出控除額は以下のように計算します。
特定支出控除の計算方法=特定支出額-給与所得控除額×0.5
なお、特定支出控除を受けるには、支出を証明する領収書や明細書、源泉徴収票などを、確定申告書に添付して提出する必要があります。
4-2.不動産投資を始める
勤務医の節税方法の一つが、不動産投資です。
不動産投資とは、マンションやアパートといった不動産を購入して、他人に賃貸することで家賃収入を得る投資方法です。
不動産投資では、不動産を取得するための費用の一部を減価償却費として計上できるため、節税対策となります。減価償却費は不動産の構造(鉄骨造・木造など)に応じて定められた耐用年数によって分割計上します。
他にも、固定資産税や都市計画税などの租税公課、火災保険や地震保険などの損害保険料、物件の設備の修理や壁の塗り替えといった修繕費など、不動産投資に関するさまざまな支出を経費として計上可能です。
帳簿上で不動産所得が赤字になった場合、確定申告で他の所得との損益通算が可能になり、所得税の課税額を抑えることも可能です。
4-3.プライベートカンパニーを設立する
勤務医の節税方法として、プライベートカンパニーを設立する方法があります。
プライベートカンパニーとは、不動産や株式といった個人資産や、フリーランスの副業収入を管理する目的で設立される会社を指しますが、厳密な定義はありません。
プライベートカンパニーによる法人化で、以下に挙げる支出の経費化が可能です。
経費 | 内容 |
---|---|
租税公課 | 固定資産税や自動車税、印紙税など |
接待交際費 | 取引先や仕入先との食事代や贈答費用 |
給料賃金 | 従業員を雇用している場合の給料 |
損害保険料 | 事業者で支払っている地震保険や火災保険、自動車保険など |
地代家賃 | 事業で使用する建物や店舗、土地などの賃料 |
減価償却費 | 事業で使用する建物や設備の取得費用 |
通信料 | 事業で使用するインターネット費用や電話代など |
支払報酬 | 士業を利用する場合に業務を委託した費用 |
また、プライベートカンパニーを設立する場合、家族が従業員になれば給与は経費となるため、さらに節税効果を高められます。
ただし、会社設立のための初期費用が必要になる他、税金や決算、法律に関する知識が必要です。
また、会社の利益の金額によっては損失となる可能性がある他、公的な医療機関に勤務している場合、副業が禁止されているケースもあり注意が必要です。
4-4.ふるさと納税を利用する
勤務医の節税対策として、ふるさと納税を利用する方法もあります。
ふるさと納税とは、自分が選択した自治体に寄付をすることで、返礼品や特典を受けられる制度のことです。自治体に寄付した金額のうち、2,000円を超える部分が控除されるため、所得額を抑えた節税対策となります。
ただし、控除金額には年間で上限額が設定され、上限を超えた金額は控除の対象とはなりません。
なお、納税者の給与額や家族構成などで上限額は変動するため、事前に確認が必要です。
4-5.ブログを開設する
ブログを開設するのも、勤務医の節税方法の一つです。
医療系のブログを運営する場合、関連する書籍の購入費用や学会への出席で発生した支出を、経費として計上できるため、節税対策になります。
また、ブログによる広告収入(アフィリエイト)を得られる可能性もあり、副業として増収できる可能性もあります。
ただし、ブログ運営に関する支出を経費として計上して節税したい場合は、確定申告が必要です。
【開業医】医師が押さえておきたい節税対策の方法

次に、開業医が押さえておきたい節税対策の方法を紹介します。具体的な節税方法は以下の通りです。
•経費として計上できるものを洗い出す
•青色申告控除を利用する
•税理士に相談してみる
•小規模企業共済に加入する
•法人会社を設立する
それぞれ詳しく解説します。
5-1.経費として計上できるものを洗い出す
開業医の節税対策として、経費計上できるものを洗い出すことが挙げられます。
経費が増えれば所得を抑えられるため、節税対策となるからです。
例えば、クリニックを開業した場合、以下に挙げる支出が経費として計上できます。
経費 | 内容 |
---|---|
設備費 | 土地や建物、内装工事、機器、パソコン、医療機器、社用車などに掛かる費用 |
人件費 | 従業員の給与や賞与、社会保険料などの費用 |
福利厚生費 | 従業員の社員旅行や健康診断、研修費用など |
出張費 | 学会に参加するための交通費や宿泊費 |
交際費 | 事業や業務に関連する医師同士の食事費用、取引先への贈答費用 |
会議費 | 会議の際に消費する飲み物代やコピー代、レンタル会議室などの費用 |
その他の費用 | 学会に参加するためのガソリン代やスーツ代など |
上記に該当する経費で、かつ事業のために必要な支出であれば、経費として計上でき節税になります。経費をうまく活用して節税対策を行いましょう。
5-2.青色申告控除を利用する
開業医の節税対策として、青色申告控除を利用する方法もあります。
青色申告控除とは、確定申告の際に青色申告を利用する場合に受けられる控除です。所得税の対象となる課税所得から最大65万円が控除されるため、節税対策となります。
青色申告控除で最大65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳を行い、損益計算書と貸借対照表を作成して確定申告書類とともに提出する必要があります。
なお、青色申告を利用した場合、赤字を繰り越して所得から差し引ける制度を利用可能な他、家族への給与や貸倒引当金を経費計上できたり、30万円未満の資産を取得した場合に一度に経費計上できたりするなど、税制上のさまざまなメリットが受けられるのも魅力です。
5-3.税理士に相談してみる
開業医の節税対策として、税理士に相談するのもおすすめの方法です。
税理士は税務に関する相談やコンサルティング業務を生業にしており、節税に関する相談にも対応しています。節税したいことを相談すれば、それぞれの医師に応じた節税方法を提案してくれるはずです。
自ら節税方法を学んだり、実行したりすることも大切ですが、そのせいで本業が疎かになってしまっては本末転倒です。また、医師の状況によって優先的に実施するべき節税対策は異なるため、自分の知識だけで適切な節税ができるとも限りません。
さらに、税法に違反しない安全な節税対策を講じられるのも良い点です。
5-4.小規模企業共済に加入する
個人の開業医の節税策として、小規模企業共済に加入する方法があります。
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主向けの積立式の退職金制度です。
掛金の全額を所得から控除できるため、高い節税効果を期待できます。掛金の月額は1,000円から70,000円まで500円単位で自由に設定可能で、加入後に増額したり、減額したりもできます。
また、共済金は退職時もしくは廃業時に受け取り可能です。受け取り方は全額一括や分割、一括と分割の併用を選択可能で、一括受け取りの場合は退職所得、分割受け取りの場合は公的年金と同じ雑所得としての扱いとなり、税負担を軽減できます。
5-5.法人会社を設立する
適切な節税対策で税負担を軽減しよう
今回は勤務医・開業医の節税対策について解説しました。さまざまな節税方法があるため、自分に合った方法をうまく活用することが大切です。
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