患者さん目線を忘れてはいけない|スペシャルコラム

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患者さん目線を忘れてはいけない
【医師 開業への道のり 第13回】

医師は、若いうちから「先生」と呼ばれ周囲から尊敬のまなざしを向けられることも多い稀有な職種のひとつです。それゆえ、視野が狭くなり「社会性が欠落」していく人が多いと医療経営コンサルタントの平田二朗氏は指摘します。その真意について、お話を伺いました。

医師と患者さんの上下関係

医師という職業に没頭するほどになくなる「社会性」――。
医療界はよく「狭い世界」だといわれます。過去に、ある総理大臣が「医師の常識は社会の非常識」と国会で発言して波紋を呼びました。日本医師会の猛抗議で撤回しましたが、医師の常識と患者さんの常識に隔たりがあるケースは多々見られます。こうしたケースはお互いに理解しあえず、不幸な結果を招くことも少なくありません。
医師になる前は「素直で聡明な子」として社会性を持ち合わせていたはずなのに、医師になって年月を重ねるうちに「社会性が欠落」していく人が多いのはなぜでしょうか。

医師の仕事は、患者さんを『治す』ことです。社会的には弱者の立場に立つ人たちを相手にする仕事です。患者さんが、社会的地位がある人でも、医師と向かい合うときは、相対的には弱い立場になります。このようにおのずと医師と患者さんには上下関係ができあがってしまいます。
日本人は儒教的な縦型世界の「お上にお任せ」という意識が強く見られます。このため、医師に向かって直接意見をいう患者さんはまれです。また専門知識も、医師と患者さんでは圧倒的な「情報の非対称」があります。そのような環境で医師業務に励めば励むほど、医師は社会的に揉まれ、かつ成長することから遅れて行きます。
こうして、若いときは「素直で聡明な子」であっても、医師として年齢を重ねて行くほどに、世間が見えなくなったり、社会性が乏しくなったりするのかもしれません。

患者さんの立場に立つ医療を

ある銀行員がこうした医師の世界を評して「医師一人ひとりを見ると、欠陥車、集団になると暴力団みたいな行動をとる」といっていました。
30年ほど前、大きな病院の事務部長をしていた時代でしたので「なるほどな」とその表現に感心しました。医局会議や新病院建設の会議になると、自己主張の強い医師たちに辟易としていましたので、おもわず共鳴していました。当時は医師会も同様に利権を振り回していた感があります。
以前に比べると極端な非社会性を見ることは少なくなりましたが、それでも医師という職業がもたらす習性は、医師であるがゆえに人格形成にゆがみをもたらすこともあります。患者さんに対して、現在は「患者さま」と呼ぶなどして「医師の上から目線」を防止しようとしていますが、多くの患者さんに来院してもらわなければ病院やクリニックが成り立たないという経済的背景からくる「接遇の改善」に見える場合もあります。

医師は、人間的・人格的に優れていなくても、医師という資格があるだけで社会的に特別扱いをされ、本質的に「患者さんの立場に立つ医療」が徹底されていません。
大半の医師は素朴に「患者さんの命を救い、健康を守る」ことに使命感を持って仕事をしています。ときに、この使命感に基づく行動は本質的に医師に社会性がなくても免罪にされる要素を持っています。患者さんたちは、医師が使命感を持って自分たちを守ってくれていると思うので、少々の非社会性は目をつぶってしまうのです。

また、医師の中には周辺業界の人に対して、人を人として見ない変な癖をつけている人がいます。周辺業界の人たちの中にも、医師の社会性のなさを手玉にとって「うまい商売」にしているケースも見られます。しかし「頭の良い医師が悪知恵を働かせたら」これは大変です。いろいろな業者さんを人として扱わない医師の習性は是正の必要があると思います。これは本質的には人に対する見方、患者さんに対する見方の本音を表しています。
弱いものに対する自身の対応について、自らをきちんと律することができない人は、やはり「社会性に欠ける」といわれても仕方がないのかもしれません。

PROFILE

医療経営コンサルタント
平田 二朗(ひらた じろう)

元病院を経営する公益財団法人の専務理事。
保険調剤薬局経営を経験し、医師開業支援を多数実施。病院法務セミナーや医療安全フォーラムなどを多数主催。スウェーデン医療福祉視察を7回実施。「病院経営のしくみ」「クリニック開業ガイド」「スウェーデン精神科医療改革」(マイナビ出版)など著書多数。現在、一般社団法人医療法務研究協会副理事長、医療法人・社会福祉法人などの理事、(株)コメディカル代表取締役。

<著書>

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