「地域社会で病院が生き残っていくにはどうすればよいのか」は医療経営に携わるすべての人が抱える悩みでしょう。生き残るには「患者さんが地域医療に何を求めているのかを把握することが大事」と指摘する医療経営コンサルタント・平田二朗氏が地域医療のニーズについて解説します。
目次
地域医療の中で医療機関が求められるものとは?

患者さんの受診理由は単純です。『病気を治してほしい』の一語に尽きます。最近は病院もサービス業と考えて施設によっては、患者さんに「○○様」と様づけをして呼んだり、待合室にコーヒーを置くなど、サービスが過剰になっている病院もみられます。しかしながら、患者さんが医療機関に行く一番の目的は「治してほしい」のです。専門特化したクリニックならこれまでの培った技術を最大限に活用すればいいわけですが、それでも設備や機器類では大病院には及びません。地域医療の中で自らのクリニックが持つ診療機能を明確にした中で、治療という部分での患者さんの満足度を高める行動が求められます。地域の中で、自らのクリニックの機能が最大限生かされるような戦略を持つ必要があります。
見失ってはならない地域医療のニーズ

その戦略を考える中で、主要な武器になるものが先生の持つ手技、技術、能力です。どのような戦略もそれを裏付けるだけの技能がなければ意味をなしません。ただし、前述の技能は専門的なものがなければ成り立たないかというと、そういうわけでもありません。プライマリーケアとして開業医が持つ機能は、それぞれの患者さんやそのご家族のゲートキーパーの役割もあるわけですから、専門的な機能が必要な患者さんや重症化した患者さんに対して適切な診療が受けられるように設定・調整することも大事です。いわゆる機能分担をしっかり担うことで、地域での存在価値を認めてもらうことができるでしょう。そのような意味では、地域ニーズを見極め、自らの機能及び役割を定めた対応が必要です。どこまでの医療を自分が担当するかの範囲を見極め、適切な診療のチェーンにつなげ、最終的には無駄のない治療効果をあげることの責任を開業医が担ってゆけば、地域にとって「なくてはならない」付加価値の高いクリニックとなっていくことでしょう。
「生き残るためには?」なんて言葉に流されるな!

最近は「生き残るために何をしたらいいか」という言葉が出回っていますが、ポピュリズムや流行に流されることなくしっかりと地域の患者さんや住民に貢献してゆく行動を積み重ねて行けば、結局、患者さんや住民の皆さんが先生を守ってくれます。「生き残り戦略」などという言葉に惑わされないようにお考えいただけると幸いです。
記事の監修者
執筆/成田 亜希子(なりた・あきこ)
平田 二朗(ひらた じろう)
元病院を経営する公益財団法人の専務理事。
保険調剤薬局経営を経験し、医師開業支援を多数実施。病院法務セミナーや医療安全フォーラムなどを多数主催。スウェーデン医療福祉視察を7回実施。
「病院経営のしくみ」「クリニック開業ガイド」「スウェーデン精神科医療改革」(マイナビ出版)など著書多数。現在、一般社団法人医療法務研究協会副理事長、医療法人・社会福祉法人などの理事、(株)コメディカル代表取締役。
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