開業をする医師にとって重要なのは医療スキルや資金面だけではありません。地域社会に暮らすさまざまな年代の患者さんと日々接する開業医には「コミュニケーション能力」が求められます。医療経営コンサルタント・平田二朗氏が、患者さんとのコミュニケーションで開業医が気を付けるべきポイントを解説します。
医師と患者さんのかみ合わない問答
一昔前は、患者さんが診察の時に「風邪をひいたようです」というと、「風邪かどうかは私が決めること」と怒る医師もいました。また、現在のように診断技術が進んでいない時代では推定に基づいて病名をたどって行くことが多く、患者さんに「ここが痛いです」と言われると「そんなはずはない!」と返す医師もいました。ですから、解剖に基づく病理のカンファレンスで「最終診断」が院内で提示されると、がっくりしていた臨床医をよく見かけたものです。私の古くからお付き合いのある医師は、「患家(かんか=医者の立場から見た患者さんのいる家のこと)から学ぶ」という姿勢を持ち、患者さんの立場に立った医療を実践するため、コミュニケーション不足によるこうしたトラブルはほとんどありません。
成功した開業医はコミュニケーション上手
最近では前述のような患者さんの言うことより自分の判断を優先させ、一方通行になる医師はあまり見かけなくなりました。臨床医は患者さんや人間が好きでなければ、成り立たない職業なので、こうした傾向にあるのではないかと思います。一方で研究職や行政職の医師たちは、コミュニケーション能力を厳しく問われる機会が臨床医に比べるとやや低くなりがちです。
開業医は地域の中で生涯、地域の患者さんたちと日々向き合う仕事です。患者さんの視点を持ち合わせなければ、地域から敬遠されるし、事業としても成功する可能性が低くなります。私がお付き合いした先生で、開業を成功させたほとんどの方が「コミュニケーションスキル」が優れていました。このスキルの優れた先生方は患者さんとのコミュニケーションだけではなく、職員とのコミュニケーションもしっかり取られ、医院経営に必要な関係を築いていらっしゃいます。
患者さんとのトークでさまざまな事が見えてくる
開業医の成功の秘訣は3つあります。一番目には「覚悟」、二番目は「コミュニケーション能力に優れていること」です。円滑なコミュニケーションを取る題材は様々な切り口があります。インフルエンザ、花粉症、食中毒、熱中症などの季節を絡めたトピックスが比較的取り入れられやすいでしょう。それに患者さんの個別性を加え、そして家族構成の全員にもアプローチをしてゆけば、怖いものなしです。間違っても診察室の中で「痛いです!」「そんなはずはない!」という会話がないようにしましょう。
では、三番目はなんでしょうか? 次回以降で解説してゆきたいと思います。
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