シリーズ「医師 開業への道のり」第3回のテーマは「開業医の収入」です。「儲けたい」という動機で開業をしても経営として存続させていくことは容易ではない、と指摘する平田氏。その理由について伺いました。
「開業=儲かる」なんて大間違い
開業医をめざそうと考えているドクターに向けてのお話です。「果たして自分は成功するだろうか?」「これまで培ってきた医師としての経験で大丈夫か?」「開業して何をめざすのか?」「そもそも何のために開業したいのか?」どれもこれも何かしら不安ではっきりしません。
開業するとそうそう後戻りはできません。明確な意思のないまま開業の道に進むと挫折する危険をはらみます。ただし開業のために不動産を取得しようと、銀行から融資を受けると、途端に多くの人が本気モードになります。

とくに都市部の医師に多いのですが、「成功しそうだったら開業する」という姿勢では、まず無理でしょう。今からめざそうとする一大事業を「おいしそうだからつまみ食いをする」程度の発想で取り組めるわけはありません。「楽して儲ける」話が転がっているはずはないのです。「医師だから儲けられる」ということにはなりません。開業した先輩などに聞くと、現実が見えてくるのではないでしょうか?
早い段階で方向性を定める
ではどうすればいいのか? まず自分の性格や人生設計で「開業するのか、しないのか」明確にするべきです。あいまいなままでは駄目です。その上で「開業する」と決めたら、それぞれの目標や目途をつける作業が待っています。開業するということは地域医療の一翼を担うことですから、どこでどのように貢献するのかをはっきりさせなければなりません。
今まで培ってきた医療技術を生かすために、軸をはっきりさせ、そして開業するという視点から、ウイングを広げるのか逆に専門性を深めるのか、これは自分の意思と地域ニーズなどで方向性を出します。地方に行けば総合医的な要素が求められます。これはウイングを広げることになります。

地価の高い一等地でも専門性の高い医療スタイルなら事業として成功する場合があります。地域特性と自分の医療スタイル、客体と主体の複雑な絡み合いで開業内容が決まります。
あらゆる要素よりも「本気度」が大事!
まれに、実家が資産家で開業資金を出してもらえるような恵まれたパターンもありますが、自分が融資を受けているわけではないですから、覚悟のある開業にはなりません。開業するとなると一番大事なのは「覚悟」です。それが基本にあって、その上に乗っかるのが技術や人柄、地域事情などです。

技術があり人柄がよく、資金がある、地域からも求められているという要素より「本気度」のほうが大事です。「開業すれば安泰」という安易な考えは避けたほうがよいでしょう。