医師にとって「開業」は重要なキャリア選択のひとつ。収入の増加や自分が理想とする医療の実現などが望める一方で、病院経営を軌道に乗せることは容易ではありません。そこで、シリーズ「医師 開業への道のり」では、数多くの医師開業支援を行う医療経営コンサルタントの平田二朗氏が、開業を成功させるためのポイントを全14回にわたり紹介。第1回目は「勤務医か、開業医か」のキャリアの選択がテーマです。
30代後半が医師人生のターニングポイント
医師の国家試験に合格し、臨床研修医として2年間をすごし、希望する診療科の専門医の道を歩み始めて10年もたつと、大体一人前の医師として医療界の中でもその立ち位置が明確になる。しかし、それからの人生をどう過ごすかという話になると途端に先行きが不透明になる。大学の医局に在籍している場合は、自分が研究職として一生過ごせるかどうかがはっきり見えてくる時期でもあるが、勤務医として人生を過ごす場合はどうなのであろうか?

勤務医として過ごす場合は、かなり過酷な勤務形態が多く、年齢と共に当直や連続勤務が耐えられなくなる。かたや自分の家庭を顧みると、30歳前後には結婚し、子供がいて住宅も購入している時期になる。開業するということを、かなり真剣に考える時期にもなる。
医師のライフプランニング
最近は少し少なくなったが「社会的な使命感」から、医師の道を志した人でも、自分がこれからどういう働き方をしたらいいのか悩まれる。
“働き甲斐と社会的地位、収入と子育てや子供の教育問題、購入した住宅のローン”なども考えなければならず、仮に開業という選択肢を取ろうとしても、そこに存在するリスクがどのようなものか、なかなか実感としてつかみにくい。ましてや知り合いや同窓の人たちから聞く開業の話は夢を抱かせるような話が少ない。かなり大変そうなのである。

勤務医を続けることに関しては、それなりの将来像を描ける。しかしその世界でも、年齢とともに役職が上がって行かないと体力がついてゆかず、なおかつ医学や技術の進歩に遅れないように相当の努力がいる。ましてや勤務医は経営者や施設長の指示のもとで勤務するわけだから、自分のやりたいことが実現できるわけではない。勤務医の姿はそれなりに理解が出来るが、開業医となると不透明でリスクがかかりそうだと考えてしまう。自分の人生設計を考えるうえで、きちんとした情報をもとに描いてゆかないと、後戻りはできない訳だから、正確な情報の収集がポイントであろう。
研究職として進むのか、勤務医として進むのか、それとも開業するのか。次回は勤務医と開業医それぞれのメリット・デメリットについて解説してゆきます。
医療経営という視点から――

医療経営という視点から、多くの開業支援や経営支援を手掛けてきた筆者が、これからシリーズとして医師の方々の人生設計に役立つ情報を提供してまいります。開業支援をやっているコンサルタントは沢山いますが、開業までの仕事しかしない方が大半です。私の場合は開業前も無論手掛けますが、開業後の経営支援も多数手掛けてまいりました。また医師としてかかるリスクや医療経営者にかかるリスクに関しても、取り組みをしてまいりました。これから様々な切り口からアドバイスしてまいります。どうかよろしくお願いいたします。