新専門医制度とは?開始時期やサブスペシャルティ領域など仕組みをチェック|医師の現場と働き方

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新専門医制度とは?開始時期やサブスペシャルティ領域など仕組みをチェック

「新専門医制度ってどんな制度?」「医師にどのような影響があるの?」「どんな種類があるの?」など、臨床研修医や若手医師がおさえておきたい新専門医制度の基本情報について紹介します。

<この記事のまとめ>
・新専門医制度とは、2018年度から日本専門医機構によってスタートした新しい専門医認定制度。「後期研修医」という呼び名がなくなり、「専攻医」という呼び名が使われるようになる。
・研修は「基本領域」と「サブスペシャルティ領域」の二段階となっており、サブスペシャルティ領域の研修を受けるには、原則として関連する基本領域の専門医資格を取得する必要がある。
・「臨床研究医コース」など、新制度独自の研修の仕組みが運用されている。

1.新専門医制度とは?

新専門医制度とは、2018年度から日本専門医機構によって開始された「専門医」の新しい認定制度です。新専門医制度はなぜ生まれたのか、制度ができた背景からおさらいしましょう。

従来の専門医制度では、「専門医の質」「専門医像のギャップ」「地域格差」などといった課題があり、患者さんが安心できる良質な医療を提供していくにあたり長年の障壁となっていました。

具体的には、各領域の学会が独自の方針で専門医制度を運用していたため、認定基準が統一されておらず専門医の質に偏りがありました。その結果、患者さんが専門医に期待するレベルと実像との間にギャップが生まれ、医師を選ぶ際の目安が分かりにくくなっていました。また、医師の地域偏在・診療科偏在は医療の地域格差を生み、全国どこでも安心して医療が受けられる環境ではありませんでした。

これらの課題を改善するために生まれたのが「新専門医制度」です。第三者機関である日本専門医機構が運用を担っています。適切な研修を受けて十分な知識と経験を持った専門医が充足することを目的とし、新専門医制度は2018年4月からスタートしています。

日本専門医機構では、「専門医」を下記のように定義しています。

それぞれの診療領域における適切な教育を受けて、充分な知識・経験を持ち患者から信頼される標準的な医療を提供できるとともに先端的な医療を理解し情報を提供できる医師

なお、新専門医制度導入後、「研修医」の呼び名も変化しています。従来「初期研修医」と「後期研修医」の両者を「研修医」と呼んでいましたが、同制度導入後は「初期研修医」のみを「研修医」と呼びます。「後期研修医」という呼び名はなくなり、「専攻医」という呼び名が使われるようになります。

2.基本領域とサブスペシャルティ領域

2-1.専門医資格取得の流れ

新専門医制度では、初期臨床研修を終えたのちに専攻医登録を行い、各専門研修プログラムに応募をし、選考を経て研修を受けることになります。

研修は2段階制です。まず、19の基本領域から選択した1つの領域で3年以上かけて研修に取り組み、基本領域の専門医資格を取得します。その後、より専門性の高いサブスペシャルティ領域の研修に進むことができます。

■専門医資格取得の流れ
1.専攻医登録
登録を希望する領域学会のウェブサイトまたは日本専門医機構のウェブサイトから申請を行います。

2.プログラムごとの試験・面接
選考基準はプログラムごとに規定されており、登録後に試験・面接の案内が届きます。試験・面接を経て、採否が決定されます。各次募集において応募できる研修プログラムは1つです(重複応募不可)。一次募集で不合格だった場合は、二次募集に応募します。

3.基本領域の研修受講→専門医認定取得
プログラムに沿って3年以上の研修を受けます。症例数や論文数などの必要要件を満たして筆記試験などをクリアすると、基本領域の専門医資格を取得できます。

4.サブスペシャルティ領域の研修受講→専門医資格取得
基本領域の専門医資格を取得後、希望者はサブスペシャルティ領域の研修に入り、専門医資格を取得することができます。

なお、ひとつの基本領域の専門医資格を取得したのち、別の基本領域の研修を受講することも可能です。

2-2. 19の基本領域と23のサブスペシャルティ領域

新専門医制度で設定されている、19の基本領域と23のサブスペシャルティ領域は次の通りです。

■19の基本領域 ※クリックすると各学会の研修プログラムが見られます。
内科小児科皮膚科精神科外科整形外科産婦人科眼科耳鼻咽喉科泌尿器科脳神経外科放射線科麻酔科病理臨床検査救急科形成外科リハビリテーション科総合診療科

■23のサブスペシャルティ領域
【内科領域】
消化器病、循環器、呼吸器、血液、内分泌代謝、糖尿病、腎臓、肝臓、アレルギー、感染症、老年病、神経内科、リウマチ、消化器内視鏡、がん薬物療法
【外科領域】
消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺外科、内分泌外科
【放射線領域】
放射線治療、放射線診断

サブスペシャルティ領域は、基本領域の専門性を発展・深化させたものと考えるといいでしょう。例えばサブスペシャルティ領域で小児外科の専門医資格を取得したい場合は、基本領域で小児科の専門医資格を取得しておく必要があります。サブスペシャルティ領域の認定は、社会的意義や国民のニーズなどを踏まえて日本専門医機構が行っており、未認定の領域の関係学会からの希望も随時検討しているとしています。

2-3. サブスペシャルティ領域の連動研修

なお、一部の領域では「基本領域での経験症例」と「サブスペシャルティ領域での経験症例」の重複カウントが認める「連動研修」が認められています。通常は基本領域の研修3年に加え、サブスペシャルティ領域の研修3年で計6年かかるところを、重複カウントにより年数を短縮させることができます。研修の質を担保しながら得た知識や技術を早急に医療現場に還元してもらえるよう、このような仕組みがされています。

3.サブスペシャルティ研修はいつから?

多くの基本領域は研修期間が3年なので、2018年度に研修を開始した専攻医は、当初2021年4月からサブスペシャルティ研修へ進むことが予定されていました。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響により認定開始時期を「2022年4月」にすると日本専門医機構 サブスペシャルティ領域検討委員会により発表されています。

新型コロナウイルス感染症による遅延は想定外の事態ですが、専攻医の研修が途切れることがないよう配慮がされています。

2021年3月に基本領域の研修を修了した専攻医がサブスペシャルティ領域研修を希望する場合は、従来通り各サブスペシャルティ領域の責任で研修を開始するよう、日本専門医機構では案内をしています。後日研修を受けた専攻医が、そのサブスペシャルティ領域と関係が深い基本領域学会によって日本専門医機構に推薦してもらうことで、2021年4月以降に経験した症例を遡及してカウントするということです。

サブスペシャルティ領域の研修の遅れが心配な専攻医の方もいるかと思いますが、研修実績をさかのぼって認定してもらえるよう配慮がされていますので、安心して研修に臨んでください。

4.総合診療専門医とは?

「総合診療科」は、19ある基本領域のひとつとして認定されています。さまざまな診療科の垣根を越えた総合的な診察能力を有する医師(総合診療専門医)の養成をめざした診療科です。

複数の疾患や不調を抱える患者さんにとって、特定の臓器や疾患に限定せず幅広い視野で診察できる医師は安心できる存在です。また、慢性疾患や心理的影響が関与している場合は継続的な関わりが必要となり、複数の医師に診てもらうより一人の主治医と関係性を築いていくほうが適切な場合もあります。

総合診療専門医は、研修プログラムを通して、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を提供できる能力とともに、患者さんの様々な訴えに向き合う姿勢なども身に付けることが期待されています

5.臨床研究医コースとは?

日本専門医機構では、新しく「臨床研究医コース」も設立されています。これは、将来の臨床研究医の養成を目的とした仕組みで、基本領域の専門医資格を取得後または取得中に、大学院や研究所に所属し医学研究に従事するという内容です。7年の研修期間中は所属機関の規定に沿った給与支給が保証されるなど臨床研究に専念できる環境整備がなされており、臨床研究に興味のある専攻医にとってメリットが大きいのではないのでしょうか。

7年間の研修期間のうち、前半の2年間は臨床研鑽を行い、後半の5年間はエフォートの50%以上を研究に充てるとされています。また研究機関中にはFirst author(主筆)として、SCI(Science Citation Index)のついた英文雑誌に2本以上の論文発表を行うことが義務とされています。

初年度となる2021年度の臨床研究医の定員は40人でしたが、今後は経過を見ながら定員の増加が検討されるようです。各基本領域学会に最低1名ずつの定員が用意され、残りは応募者の数に応じて配分する方法がとられているとみられ、狭き門となっています。

なお、「臨床研究医コース」の専攻医の募集は通常募集と切り離して実施がされ、不採用となった場合は通常募集に応募が可能です。興味のある専攻医・研修医の方は日本専門医機構の募集情報をチェックし、応募を検討してみてはいかがでしょうか。

6.新専門医制度の課題

新専門医制度の運用開始から約3年が経過したいま、次のような課題が指摘されています。

6-1.専攻医が都市部に集中する

基本領域の研修プログラムは基幹病院と連携病院を行き来しながら学ぶ仕組み(循環型研修)になっています。研修施設として認められている都市部の医療機関に希望者が集中してしまい、地方の一部の診療科では希望者がゼロになるという問題が生じています。

6-2.ライフイベントとの両立が難しい

循環型研修になり、研修先によっては生活拠点を変える必要があることから、出産や育児などのライフイベントとの兼ね合いが難しいという声があります。ただし、合理的な理由がある場合は「カリキュラム制」を選択できます。カリキュラムに定められた到達目標を達成した段階で専門医資格試験の受験資格が与えられるもので、研修年限の定めはありません。

ライフイベントとの兼ね合いで遠方の施設での研修が難しい場合には、カリキュラム制を選択して両立の道を検討してみてもいいかもしれません。

6-3.資格取得まで時間がかかる

連動研修が認められているのは一部の科に限られるため、学びたい科が対象外の場合は研修に計6年かかります。医師免許とは異なり、専門医資格は5年を原則として更新が必要です。eラーニングの導入など柔軟に運用される予定とはいえ、勤務実績や診療実績の証明なども必要になり、更新手続きが煩雑になる可能性があります。

7.新専門医制度のメリット

新専門医制度には課題もみられますが、日本の医療全体にとってはメリットもあります。

専門医の養成が進めば医師の専門性がより明確になり、患者さんにとっては「どの医師に診てもらえばいいか」がわかりやすくなるという利点があります。また新専門医制度ではシーリング(募集定員)が設けられており、特定の地域や診療科に医師が集中することを避ける仕組みになっています。都道府県・診療科単位で医師の充足率をモニタリングしながら調整されるので、医師の偏在が緩和されていくことが期待されます。

また診療科の垣根を越えて診療ができる「総合診療専門医」は、高齢化が進み複合的な疾患をもつ患者さんの増加が予測される日本において、頼りになる存在となりそうです。

新専門医制度は、今後の医療の充実をめざす重要な改革だといえます。できて間もない制度のため、専攻医・研修医の方は戸惑いもあるかもしれませんが、専門性の高い知見やスキルを確実に積み上げられるチャンスです。今後も改善や調整がされていくことが予測されますので、こまめに情報収集をしながらキャリアプランを立てていきましょう。

本記事の情報は2021年6月時点のものです。最新の情報は日本専門医機構のウェブサイトをご確認ください。

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