「精神科」のリアル 現役の専門医に直撃!|新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

「精神科」のリアル 現役の専門医に直撃!

この科の医師は――ドルオタ・アニオタ・映画オタ・雑学王・変人⁉

イラスト:イケウチリリー
取材・文:マイナビRESIDENT編集部

このコーナーは元々、医学生と初期研修医に将来のことを考える材料にしてもらおうと、『マイナビRESIDENT』用に作りました。2018年に開始した新専門医制度で基本領域になった19診療科の専門医に、その科の魅力やイマイチなところ、どんな人が向いているのか、「あるある」、一日の仕事の流れ、典型的な医師像などを「ぶっちゃけ」で語ってもらった記事です。こういった他科の詳細な情報は、転科や診療領域の追加を考えている医師にとっても有益だと考え、『マイナビDOCTOR』にも掲載することにしました。
精神科は、専門医の益田裕介(ますだ・ゆうすけ)さんに聞きました。

インタビューを受けていただいた医師

田裕介(ますだ・ゆうすけ)医師 = 1984年生まれ

■所属
早稲田メンタルクリニック(東京都)院長
■主な資格
精神科専門医・指導医、精神保健指定医
■卒業大学
防衛医科大学校

* 医師の所属、主な資格は取材当時(2023年10~12月)

転職サポートをご紹介

カンタン
60秒!

転職サポートに
無料相談

インタビュー内容

Q1.なぜ精神科を専門に選んだのですか?

僕が10代の頃というのは、「少年A」の事件(神戸市連続児童殺傷事件・酒鬼薔薇聖斗事件:神戸市須磨区で1997年、当時14歳だった少年が児童5人を襲い、2人を殺害)とか、オウム真理教(若者を中心に信者を集め1995年の「地下鉄サリン事件」など数々の事件を起こした)の問題が起きた時代なんです。ちょうどインターネットが普及し始めた時期でもあって、「アングラサイト(闇サイト)」に出ている文章をたくさん読んでいました。その中で精神分析や精神医学の話がよく登場していて、そういった分野に興味を持つようになりました。

そもそも僕は、中学生ぐらいから思春期をこじらせて、友達付き合いがあまりうまくいかなかったんですよ。それで、ずっと本を読んでいる文学少年だったんです。だんだん哲学書なんかも読むようになって。高校の最後の方に成績が伸びてきて進路のことを考えた時に、医学部に行けばそういう本を読んでいる仲間ができるかなと思ったんですよね。でも、いざ行ってみると誰も読んでいなくて。じゃあ、精神科だったら、結構読んでいるんだろうなと思って選んでみました。あまりいませんでしたけどね(笑)。

実は、産科医が不足していることが問題になっていたので、防衛医科大を卒業して自衛隊で医師として働いている時に産科になることも考えたんです。でも、自衛隊ではキャリアを積むのが難しいので断念しました。

Q2.精神科の良いところを教えてください

患者にはさまざまな業界の人がいます。いろいろな人と話ができて、各業界の楽しいところや嫌なところなどの話を聞けるのが面白いです。

また、精神科は慢性期の治療なのですぐに治療の成果が出ることはなくて、患者との付き合いが長くなるというのも魅力だと思います。僕も、7~8年ずっと診ている患者がいます。そうなると、自分の変化も患者の変化も一緒に感じることができて面白いですよ。

精神科の治療過程は人の成長と似ています。精神科医は親として子どもである患者の成長にずっと寄り添っている感じなんです。子どもは、だんだんと成長していつの間にか大人になっていますよね。治療も一緒で、徐々に変化していて、どこで良くなったのか、はっきりとは分からないけど、長期的に見ると明らかに変わっているんです。

それから、精神科は、子どもではなく老人でもない人を診たい人が選ぶんです。今働いていて、困っている現役の人たちの悩みに寄り添って、脳科学的かつ社会的な問題を総合的にコンサルティングするんです。

Q3.精神科のイマイチなところはありますか?

治療が「守り」だということです。外科のように攻めて治すのではなく、患者と一緒に生きる感じなんです。治療にベストは尽くすのですが、パッと治ることはないので、患者が自殺するような事態にならないようにする防戦が続くんですよ。だから、つらいといえば、つらいです。傷つきやすい人や感情に飲み込まれやすい人にはしんどいと思います。

また、患者からいろいろ文句を言われる立場なのですが、常に冷静で俯瞰(ふかん)的でいる必要があって、言い返さずに延々と耐えなきゃいけない。「なんなんだ!」というのを抱えながら診療しなくてはなりません。

Q4.専門医としての技術や知識を磨くためにやっていることはありますか?

精神科専門の上級の医師から週に1回1時間、マンツーマンのセッションで指導を受けています。6~7年ぐらい続けているんですよ。まあ、これは結構特殊なケースだと思います。

また、精神科医や臨床心理士が5人ぐらいで月に1回集まって、症例を持ち寄って話す「症例検討会」もやっているんです。あとは、日々の臨床自体がトレーニングになっています。精神科の場合は、外科と違って練習の場というのはないんですよ。常に本番で、その中で成長していく感じです。そして、本番を通して自分の心と向き合い、心が乱れないように悩みを解決していくのもトレーニングです。

僕はYouTubeでの発信もやっていて、発達障害や精神疾患、その治療法の解説などを配信しています。その視聴者からのコメントに向き合うのもトレーニングです。他にも、患者会で世話人をやっていて、診察とは違う悩みが出てくるので勉強になります。

Q5.精神科は何年ぐらいで、自信を持って診療できるようになれますか?

精神科は、何年訓練すると何の手技ができるようになるとか、そういう分野ではないんですよね。それに、外科などと違って、若い時でも上級の医師と一緒に診療をすることはなくて、最初から一人で患者を診なくてはなりません。だから、最初から自信を持ってやるしかないと思います。精神科医にとっての診療技術の上達は、冷静に話が聞けるようになるとか、例え話がうまくなるとか、論理的思考が得意になるとか、そういうことです。なので、何年というのはなくて、人によると思います。

Q6.精神科に向いている人を教えてください

精神科の治療は一人の患者と向き合う時間がかなり長くなるので、同じことをずっと続けられる我慢強い人です。また、長期戦に疲れず、感情的にならないことも大切です。あとは、疾患の原因が社会問題と関連していることがあるので、そういうことに興味を持って勉強を継続できる人は向いています。

病院勤務の一日の流れ

Q7.精神科は開業に向いていますか?

開業にかかる初期費用が安いので、かなり向いています。大体1000~2000万円あれば開業できますし、どこでやっても一緒ですからね。ただし、孤立してしまうと情報が入ってこないので、勉強会などで開業医仲間とつながりを作るのも大事です。研究がしたいのであれば別ですが、診療に関しては大学病院や大規模病院でやっていることと違いはないと思います。それなのに、開業すると収入はかなり上がりますから、精神科医は開業したほうがいいと思いますね。

Q8.もし精神科がなかったら、何科を選びますか?

手術や手技がメインの科よりも、人の生活にリンクするような治療ができる科が好きです。なので、緩和ケアには関わってみたいと思います。緩和ケアのチームの中に精神科医が入ることがあって、その数もまだ十分に足りていないと聞いています。そういうのをやってみるのも面白そうですね。結局、精神科です。

Q9.他科の医師から一目置かれるのは何科ですか?

僕は精神科医なので、やっぱり精神科医を尊敬しています。研修医や若い時には、緊急事態に身体疾患をパッと診られる循環器内科などが格好良いとか、人気だとか、そういのはあると思います。でも、ある程度経験を積んでくると、そんなことはなくなるんですよ。

Q10.精神科の「あるある」を教えてください

精神科医は、みんな暗いです(笑)。日の当たるところ、目立つことが好きじゃない。医学部で解剖実習などをやって身体のことを学んでいて、人間は魂ではなくて脳であり、動物として存在を考えるので、臨床心理士や公認心理師とは違うんですよ。でも、診療でやっていることは人文系の心理士と変わらないんじゃないかといった負い目みたいなものがあるんです。それが精神科らしさ、暗さにつながっているのですかね。

また、精神科は脳科学から社会学や哲学まで幅広く学ぶので、ゴシップを含めた雑学、国内外の時事ネタに詳しいです。精神科医は、新聞がちゃんと読めます。

それから、アニメのグッズなどを「大人買い」しているのは、だいたい精神科医だと思いますよ(笑)。

Q11.典型的な精神科とはどんな人ですか?

アニメとかアイドルとか映画とかのオタクが多いです。周囲からは「変わっている人」と思われていますね。中高生の時に、クラスメートのいろいろなグループ、いわゆるスクールカーストとは別の、なんか離れた位置で固まっている人たちがいませんでしたか? 「オタク」で、仲がすごく良さそうにも見えないのに、なんだか一緒にいる。そういう人たちのイメージです(笑)。その感じが大人になっても続いているんですよ。

医学生・初期研修医へのメッセージ

精神科は他科からの転科がしやすいので、若い頃は身体のことや病気のことをしっかりと勉強した方がいいと思います。本当に人と話すのが好きで、人の弱さとか、障害のある人の生き方とか、福祉のことに興味を持って仕事をやり続けられると思うのであれば、精神科を選べばいいと思います。

転職サポートをご紹介

カンタン
60秒!

転職サポートに
無料相談

転職支援サービスについて

転職のご相談をお考えの方へ

  • 無料転職サポートに登録
  • はじめて転職される方へ

人気記事ランキング

転職支援サービスについて

転職のご相談をお考えの方へ

  • 無料転職サポートに登録
  • はじめて転職される方へ

RECOMMEND ARTICLEおすすめ記事

NEW CATEGORY ARTICLE新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

CATEGORY記事カテゴリ

医師転職ナレッジ
意外と知らない医師の転職市場。ここでは、医師の転職市場全体の動向や、診療科目別のトレンドなど希望のキャリアを実現するナレッジを紹介いたします。
スペシャルコラム
最新の医療関連情報はもちろん「開業」のヒントや「お金」の話など、医師のライフスタイルを豊かにする情報満載。
医師の現場と働き方
このコンテンツでは、勤める環境によって、医師がどんな働き方になるのかをデータや現場レポートを交えて紹介いたします。
DOCTORY(ドクトリー)
「Doctor=医師」+「Story=物語」+「Victory=成功、喜び」から成る造語です。第一線で活躍される先生方のキャリアや生き方に関するお話をうかがい、若き医師たちの指針となるようなメッセージをお届けします。
世界の医療NEWS
世界の医療ニュースの中から、厳選した記事をギュッと凝縮して紹介します。1日数本を1分で、サクッと読むことができます。日々の情報収集、話のネタ探しにお役立てください。
新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑
転科や診療領域の追加を考えている医師向けて参考となるよう、19名の専門医に各診療科について語ってもらいました。

求人検索

まずは【勤務形態】を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください