少子化が進む日本において、小児科医の人数は減少傾向にあります。しかし、未来を担う子どもたちの健康を支えるためには、今後も小児科専門医の活躍が欠かせません。今回は、小児科医を目指す人に向けて、小児科専門医の役割や小児科専門医になるための試験概要、更新手続きの方法などについて詳しく解説します。
- 小児科専門医を目指し、取得条件や試験概要を知りたい方。
- 研修プログラムの内容や更新手続きについて学びたい方。
- 資格取得後のキャリア形成やサブスペシャリティ領域を考える方。
目次
小児科専門医とは

小児科専門医とは、日本専門医機構と日本小児科学会が認定する「小児科領域の専門医」です。子どもの健康を守るために、小児医療の水準を向上させ、進歩・発展を促すことで、子どもの健康の増進や福祉の充実に貢献することが小児科専門医の役割といえます。
小児科専門医になるには、まず、所定の卒後研修を修了後、試験に合格する必要があります。また、資格取得後は5年ごとに更新手続きが必要です。
旧制度による小児専門医の学会認定専門医数は2,649名、新制度での機構認定専門医数は14,231名と公表されています(2023年1月時点)。旧制度での専門医数も紹介しましたが、今後はすべて機構認定専門医に統合される予定です。また、小児科専門医取得後に目指すことができる、小児科に特化したサブスペシャリティ領域には、以下の4つがあります(2024年6月時点)。
▶小児神経専門医(日本小児神経学会)
▶小児循環器専門医(日本小児循環器病学会)
▶小児血液・がん専門医(日本小児血液がん学会)
▶新生児専門医(日本周産期新生児医学会)
小児科専門医に求められること
小児科医は、他の診療科と異なり、特定の臓器を対象とするのではなく、成長期の子どもの心身全般を診る「子どもの総合医」です。出生前から成人までの期間が対象で、患者となる子どもが抱える疾患や不調すべてを対象として診察や治療を行うため、幅広い知識が求められます。
子どもの発育・発達段階によって疾患内容が異なるうえ、子どもの精神状態や年齢に応じた診断や治療方法が変わるため、多様な知識と技術を習得しなければなりません。
小児科専門医になるための研修プログラム概要と受験資格

小児科専門医になるには、専門医試験を受けるための受験資格を得る必要があります。
2017年に新専門医制度が導入され、それに伴い、受験資格が変更されました。そのため、専攻医として研修を開始した時期によって、受験資格や申請書類が異なることがあります。
続いて、小児科専門医の資格取得に必要な研修プログラムの概要と、具体的な受験資格について解説します。
3-1.研修プログラムの概要
小児科専門医の受験資格を得るためには、3年間の研修プログラムに参加しなければなりません。細かいプログラム内容や年次ごとの進行については基幹施設によって異なります。参考として、日本医科大学(2023年度)の資料をもとに研修の概要を見てみましょう。
▶1年次
原則としては6か月(最低3か月)間、実際の患者さんの主治医となって診療にあたり、小児科医としての基本的な技能と態度について学びます。6か月後以降は、多くの症例を経験するために各研修連携施設での研修を受けます。
▶2年次、3年次
2年間のうち、6か月間はNICU(新生児集中治療室)で小児医療の研修が行われます。それ以外の期間については、3か月もしくは6か月の単位で基幹病院を中心に、各研修連携施設それぞれの専門性を活かした診療に従事します。3年時には地域医療の実際を見るために、3か月単位でその他の連携施設で研修が行われます。
▶3年間を通して
随時、学会発表や論文執筆に関する支援を受けることになります。基幹施設や各研修連携施設で実施されるカンファレンスに参加したり、各専門研究グループのミーティングで学んだりする機会があります。こうした機会にも積極的に参加し、学術的研鑽を深めます。
なお、一例ですが、経験・習得すべき内容としては以下のように示されています。詳しくは自身が研修を受けようとしている施設のプログラムを確認してください。
経験すべき症候 | 日本小児科学会が定めた経験すべき33症候のうち8割以上(27症候以上) |
---|---|
経験すべき疾患 | 日本小児科学会が定めた経験すべき109疾患のうち8割以上(88症候以上) |
習得すべき診療技能と手技 | 日本小児科学会が定めた経験すべき54技能のうち、8割以上(44技能以上) |
3-2.小児科専門医の受験資格
小児科専門医になるために必要な条件は、以下のとおりです。
<2017年度以降に研修を開始した場合【日本専門医機構認定プログラム制】>
●以下の(1)および(2)の条件を満たす者。
●(1)2024年 8月31日までに,小児科学会の会員歴が連続3年以上、もしくは通算5年以上である者。
●(2)2004 年以降の医師国家試験合格者で、2年間の初期臨床研修を修了後、日本小児科学会(以下,学会)および機構が認定した小児科専門研修プログラムにより 2017 年度以降に研修を開始し、2024年8月31日までに3年以上の研修を修了、または研修修了見込みの者。
上記のとおり、小児科学会に既定の年数以上所属していることが前提となっています。入会が遅れたり、会費の未払い等が発生したりすると、受験資格を得られないため注意しましょう。また、受験の際には会員歴証明書の発行が必要です。
加えて、小児科専門医の申請に研修修了(見込)証明書の「プログラム統括責任者」の自筆署名欄にプログラム統括責任者以外の方が署名された場合、受験不可となります。各基幹施設のプログラム統括責任者を確認し、誤りのないように出願書類を作成・提出しましょう。
なお、2016年度以前に研修を開始した場合、他の基本領域学会の専門医を取得した上で小児科専門医のダブルボードの取得を目指す場合は、【旧制度】の条件となり、特別措置など個別に条件の確認が必要なものもあります。詳細は公益社団法人日本小児科学会のホームページを参照ください。
小児科専門医【新規】|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
小児科専門医試験の概要と合格率

続いて、小児科専門医試験の概要と合格率について見てみましょう。
4-1.小児科専門医試験の概要
例年、5月に出願、9月初旬に試験が実施されています。2024年実施の「第4回小児科専門医試験【日本専門医機構認定プログラム制】」によると、実施期間は以下のようになっています。
受験出願期間 | 2024年5月1日から 2024年5月31日(当日消印有効) |
---|---|
受験料 | 30,000円 |
試験日 | 9月7日(土)に筆記試験、翌日9月8日(日)に面接諮問の予定 |
試験は2日間にわたって実施され、具体的な試験科目は、以下のとおりです。
(1)症例要約
症例要約には30症例を記載。なお、実施細則「5.症例要約」に示す10の疾病分野のそれぞれ2症例以上(そのうち指定疾患リストから1疾患以上)を含む必要がある。
(2)筆記試験
医師国家試験方式の MCQ 形式に準じた140題(一般問題(A 問題)95題,症例問題(B問題45題)
(3)面接試問
提出された30症例中の2症例について、2人の面接委員による試問。
4-2.小児科専門医試験の合格率
令和4年(2022年)度版日本専門医制度概報によると、2019年と2021年の小児科専門医試験の合格率は、以下のようになっています。2020年(令和2年度)の試験は、コロナ禍の影響もあり、延期となり実施されませんでした。新専門医制度に移行してから間もなく、公表されている情報が少ないですが、この結果から、合格率はおおむね80%前後であると考えられます。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
令和元年度 | 556 | 435 | 78.2% |
令和2年度 | ― | ― | ― |
令和3年度 | 1,118 | 918 | 82.1% |
小児科専門医、資格取得後の更新について

小児科専門医は5年ごとに、資格更新の審査を受ける必要があります。更新の受付時期は年1回(3月)のみで、審査に合格しなければ小児科専門医資格を喪失します。以下、小児科専門医の更新手続きの流れについて解説します。
5-1.更新基準
小児科専門医更新に必要な単位となる「ⅱ)専門医共通講習」、「ⅲ)小児科領域講習」は、すべてJPS専門医オンラインセミナーで取得できます。ただし、日本小児科学会は小児科専門医として、研修会などには積極的に参加することを推奨しています。
なお、2025年度以前に更新となる場合には、「ⅱ)専門医共通講習」の内容が異なります。それぞれの条件は以下のとおりです。
【2026年度以降に更新予定の場合】
【2026年度以降に更新予定】 必要単位数 |
【2025年度以前に更新予定】 必要単位数 |
||
---|---|---|---|
ⅰ) | 診療実績の証明 | 10 単位 (100 症例分) |
10 単位 (100 症例分) |
ⅱ) | 専門医共通講習 | 暫定制度を含むプログラム制で専門医を取得された方 8~10単位 (必修講習8単位以上) *旧制度で小児科専門医を取得された方 3~10単位 (必修講習3単位以上) |
3~10 単位
(必修講習3単位以上) |
ⅲ) | 小児科領域講習 | 20単位以上 | 20単位以上 |
ⅳ) | 学術業績・診療以外の活動実績 | 0~10単位 | 0~10単位 |
ⅰ~ⅳの合計 | 50単位 | 50単位 |
これから小児科専門医を目指す人は、2026年度以降の更新になりますが、今後もこうした変更が行われる可能性があるため、資格取得後に更新基準を確認しておきましょう。
5-2.小児科専門医の更新手続き方法
更新基準と同様に、専門医の認定期限によって更新申請書類が異なります。自身の条件を確認したうえで手続きしましょう。特に、旧制度からの更新は、移行措置により要件が異なります。なお、2024年3月31日時点で資格喪失から2年以上経っている場合、また2回連続での更新遅れは不可とされています。
2024年1月1日に告示された更新審査に関する資料を参考に条件をまとめました。
認定期限が2024年3月31日,2024年9月30日である場合 | 2017年、2018年に旧制度で小児科専門医を取得後、未更新、または前回、旧制度で更新後2023年9月までに未更新である場合 | |
更新受付時期 | 年一回(3月のみ) | |
審査内容 | ・審査は2段階 ・1次審査は、日本小児科学会、2次審査は日本専門医機構が行います。 ・一次審査料は、20,000 円(税込)、二次審査合格後に認定料として11,000円(税込) |
・日本小児科学会による審査のみ ・更新手数料として20,000円(税込) |
提出書類 | 1.新制度の書類 小児科専門医認定更新申請書ほか 2.一次審査料 20,000 円の振替払込請求書兼受領証のコピー(専門医登録番号を記載して納入) |
1.小児科専門医更新申請書 2.日本小児科学会研修記録簿(参加証原本を貼付) 3.更新手数料 20,000 円の振替払込請求書兼受領証のコピー(専門医登録番号を記載して納入) |
小児科専門医試験の対策方法

小児科専門医試験を受けるには、まずは既定の研修プログラムをしっかりと実施し、受験条件を整えることが第一です。そのうえで、試験対策としては過去問題に取り組んでおくと良いでしょう。
市販の問題集も販売されていますが、日本小児科学会のホームページでも過去問題が公開されています。ただし、会員専用ページへのログインが必要であり、なおかつ、問題の公開のみで、解答と解説はありません。
インターネット上の他の参考サイトとしては、たとえば、「小児慢性特定疾病情報センター」のWebサイトがあります。子どもの慢性特定疾病の概要や診断基準などが紹介されており、なかには希少疾患も含まれます。日本小児外科学会、日本小児アレルギー学会など、公開されている各学会のガイドラインやマニュアルも確認しておくと良いでしょう。
指導医や小児科専門医の先輩に相談し、試験で重視すべき項目や近年の傾向を教えてもらうのも良いでしょう。また、試験対策として、試験時の時間配分を考慮した模擬試験を繰り返し行うのもおすすめです。
十分な情報収集を行い小児科専門医の取得を目指そう
小児科専門医になるには、既定の研修プログラムを受け、試験に合格する必要があります。研修プログラムを通して多くの症例を経験し、研鑽を積みながら試験に備えましょう。その際、興味のあるサブスペシャリティ領域へのステップアップを見越して、プログラムの応募先を見極めることも大切です。十分な症例数を経験でき、充実した指導が受けられる基幹施設を選びましょう。
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