「開業医はもうからない」という話を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。将来開業を考えている方や、医師としてのキャリアを検討している方の中には、この言葉をきっかけに不安を感じたり、開業を選択肢から外そうとしたりしている方もいるでしょう。実際のところ、本当に開業医はもうからないのでしょうか。
本記事では、開業医が「もうからない」といわれる噂の真相や将来性、勤務医との年収比較、そして経営に成功するためのポイントなどを解説します。経営に苦戦する開業医がいる一方で、大きな成果を上げている開業医も少なくありません。成功する開業医の特徴も紹介しますので、開業の道を選ぶか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
こんな方におすすめの記事です!
- 開業医を目指している方
- 開業医でもうけられるのか不安を感じている方
- 開業医として成功する方法を知りたい方
目次
開業医は本当にもうからないの?

結論からいえば、開業医でもしっかり収益を上げている医師は少なくありません。
それでも「開業医はもうからない」といわれがちな理由のひとつに、成功事例よりも経営難や廃業といったネガティブな情報の方が記憶に残りやすい、という心理的な側面があります。
また近年は材料費の高騰によって利益率が下がり、経営に苦しむ医療機関があるのも事実です。勤務医より高収入を得ているものの、その分税負担も大きくなり「手元に残る金額は思ったほど多くない」と感じる医師もいます。
開業するということは経営者としての責任も背負うことになり、想像以上の激務になるケースも多いです。収入が労働に見合っていないと感じ「もうからない」と声を上げる医師もいるようです。
加えて開業して数年がたつと、モチベーション低下で年収が下がる医師もいます。開業して5〜10年程度たつと、近隣に競合の医療機関ができるケースも多く、それによって収入が落ちてしまうケースも少なくないようです。
一般的に見れば、開業医は勤務医よりも年収が高い傾向にあります。しかし、上述のような背景から「開業医=もうからない」というイメージを持っている人は多いのが現状です。
開業医の廃業数と将来性

帝国データバンクの情報によると、2024年に倒産した病院・診療所・歯科医院は64件、休廃業・解散したのは722件でした。特に診療所や歯科医院の休廃業・解散は過去最高を記録しており、多くの開業医が経営に苦戦している状況がうかがえます。
休廃業が増えている背景には、経営者の高齢化や後継者不足に加え、患者さんの医療機関選びへの意識の高まり、材料費・人件費の上昇、さらにはコロナ関連補助金の削減などが影響しています。こうした要因から、今後も休廃業する医療機関は増える見通しです。
その反面、地域によっては医師の不足が深刻な問題となっています。開業するエリアの特性に応じた診療科目の選定や、ポイントを押さえた経営を行えば、開業医にはまだ十分な将来性があるといえるでしょう。
参考:2024年、市場から消えた医療機関は過去最多の786件|帝国データバンク
開業医の収入の仕組み

開業医の手取り額は単純な収益ではなく、そこから事業にかかる費用や税金を差し引いた金額となります。
中央社会保険医療協議会が実施した「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、個人が経営する診療所の医業収益の平均は約9,698万円、医業・介護にかかる費用の平均は約6,532万円でした。つまり、収益から経費を引いた「事業所得」に当たる金額は約3,166万円です。
日本では以下のように収入が上がると、所得税率が高くなる累進課税制度が採用されています。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
例えば課税所得が約3,166万円の場合、税率は40%となり、さらに控除額を差し引くと所得税は約987万円となります。従って、実際に手元に残る金額は「約3,166万円 − 約987万円 = 約2,179万円」です。これに加えて、課税所得に対して10%の住民税もかかります。
なお、ここでご紹介した計算はあくまで平均を基にしたものです。開業当初などで、内装工事費や設備投資の費用など、多額の返済が発生すると、手元に残るお金はさらに少なくなってしまいます。
参考:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|中央社会保険医療協議会
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
開業医と勤務医の年収を比較
それでは、開業医と勤務医の年収にはどの程度違いがあるのでしょうか。
前述した「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、勤務医(一般病院医師)の平均年収は1,461万円でした。一方、入院診療収益がある一般診療所の院長の平均年収は3,663万円、入院診療収益がない場合で2,541万円となっています。
単純にデータで見ると、開業医の方が勤務医よりも年収が高い結果となりました。
ただし前述した通り、開業医の場合、内装工事費や設備投資の費用などの支払いがあります。また、勤務医と比べると収入の安定性は低いため、その月の患者さんの数や社会の状況などによって収入は大きく変動する可能性も高いです。
参考:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|中央社会保険医療協議会
もうからない開業医を脱却するポイント

成功している開業医もいれば、そうでない開業医もいます。もうかるためには、どのような点に注意して開業すればいいのでしょうか。
ここからは、もうからない開業医を脱却するポイントを解説します。
需要のある地域で開業する
もうからない開業医を脱却するためには、需要のある地域で開業することが大切です。
前述の通り、地域によっては医師不足が深刻化しています。例えば少子高齢化が進む地域に小児科を開業したり、車でないとアクセスしづらい場所に開業したりすると、集患は思うようにいかない可能性があるでしょう。地域特性に合った診療科目を選ぶことで、患者数を安定的に確保でき、収益につながりやすくなります。
経営方針を明確にする
経営方針を明確にすることも、もうからない開業医を脱却するためには欠かせません。
方針が曖昧なままでは経営がブレてしまい、集患につながる適切な運営ができなくなります。スタッフにも迷いが生じ、結果として経営が行き詰まってしまいやすいです。どのような患者さんを対象に、どのような医療を提供するのかを明確にした上で、開業することが大切です。
資金繰りを計画的に行う
開業医として成功するには、計画的な資金繰りが不可欠です。
開業時には内装工事や設備投資に多額の資金が必要ですが、しっかりと計画を立てずに支出すると、人件費や材料費といった運転資金が不足し経営が行き詰まる恐れがあります。
さらに保険診療では、診療から入金まで最大2カ月の時差が生じます。開業直後から黒字化できれば良いすが、しばらく赤字が続く可能性もあるでしょう。最初の入金があるまで、そして黒字化するまでの期間を乗り切れるよう、十分な運転資金を確保しておくことが重要です。
集患対策を積極的に行う
開業後にしっかり収益を確保するには、集患対策を積極的に行いましょう。
どれだけ良い医療を提供していても、存在を認知されなければ来院にはつながりません。地域の方々にクリニックを知ってもらえるよう、適切な広報活動を行いましょう。
広告を出稿する場合、どの媒体を選ぶかも重要です。例えば高齢者を主なターゲットとするのであれば、SNSよりも新聞折込や地域情報誌の方が効果的だと考えられます。ターゲットに合った手法を選ぶことが、効率的な集患につながります。

人材獲得・育成に力を入れる
もうからない開業医を脱却するためには、人材獲得や育成に力を入れましょう。
多くの患者さんに来院してもらうには、満足度を高める必要があります。人手不足で待ち時間が長くなったり、スタッフの配慮が不十分だったりすると、患者さんが離れてしまう恐れがあります。この状態が続くと、クリニックの評判低下にもつながりかねません。
優秀な人材を確保すると同時に、自院の方針を共有しスタッフをしっかり教育していくことが大切です。
業務効率化に取り組む
開業医として成功するためには、業務効率化に取り組むことも重要です。
業務を効率的に進められれば、患者さんの待ち時間を減らせるため満足度が向上します。スタッフの負担も軽くなり、ミスの防止や定着率の向上にもつながるでしょう。
このように業務効率化は、集患にも人材確保にも好循環を生み出す重要な取り組みです。
診療科目を増やす
診療科目を増やすことも、もうからない開業医を脱却するためのポイントです。
診療科目が多ければ、それだけ幅広い患者さんを集めることができます。例えば皮膚科であれば美容皮膚科を併設することで、収益性の高い自由診療を取り入れることが可能です。
ただし、診療科目を増やし過ぎると専門性がぼやけ、かえって患者さんが減ってしまう恐れもあります。何を専門とするのかを明確にし、矛盾のない組み合わせにすることが大切です。
開業医としてもうかる人の特徴

開業医として成功している人には、いくつかの共通点がある場合が多いです。最後に、開業医としてもうかる人の特徴を整理して押さえておきましょう。
地域のニーズを理解できる人
地域のニーズを理解できる人は、開業医として成功する可能性が高いです。
開業を予定している地域にどのような医療需要があるのかを把握し、それに応じた診療科目や経営方針を定めることで、患者さんを安定的に集めやすくなります。
開業医としての目的が明確な人
成功している開業医の多くは、目的やビジョンが明確です。
院長が診療方針や将来の方向性をしっかり示していれば、スタッフも働きやすくなります。目的がはっきりしていれば、それに共感する人材も自然と集まりやすいでしょう。
経営者としてのスキルが高い人
経営者としてのスキルが高いことも、もうかっている開業医に共通することが多い特徴のひとつです。
開業すると診療だけでなく経営にも携わる必要があります。セミナーや書籍で知識を学び、先輩開業医からアドバイスを受けるなどしてスキルを磨けば、より円滑な運営が可能になるでしょう。
高い自己管理能力がある人
もうけている開業医は、自己管理能力が高い傾向にあります。
開業すると、開院日や診療時間は全て院長の判断に委ねられます。急に休めば患者さんが受診できず、満足度の低下につながりかねません。また激務に取り組みながらも、自ら学ぶ姿勢を持ち、最新の医療を取り入れる努力も欠かせないでしょう。
もちろん勤務医にも自己管理は求められますが、裁量の大きい開業医には、より高い自己管理能力が必要となるでしょう。
コミュニケーション能力のある人
成功している開業医には、コミュニケーション能力が高いという傾向もあります。
患者さんの満足度を高めるには、彼らの声に耳を傾け、寄り添った診療を行わなければなりません。また院長としてスタッフをまとめるためにも、コミュニケーション能力は不可欠です。
患者さんにもスタッフにも信頼されていれば、開業後に成功する可能性が高いでしょう。
開業医として成功したいなら医師とは別のスキルも身に付けよう
開業医として成功するためには、診療スキルだけでなく、経営スキルやコミュニケーションスキルも求められます。こうした力を身に付けるには、非常勤としてさまざまな医療機関で経験を積むのが効果的です。アルバイト先を探している方は、医師専門の求人サービス「マイナビDOCTOR」をご活用ください。
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