マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
臨床実習を「見学型」から「診療参加型」にシフトさせることなどを目的に、2015年度から本格実施されている「Student Doctor」について、医道審議会医師分科会の会合において議論が促されました。医師のシームレスな養成に向けて、厚労省が臨床実習開始前の学生を評価する共用試験の公的化についても論点が提示されています。

医師の「シームレスな養成」に向けた議論が医道審議会医師分科会で始まった。19日に開かれた同分科会の会合では、厚生労働省が、臨床実習開始前の学生を評価する共用試験(CBT・OSCE)の公的化の考え方などの論点を提示。共用試験合格者に対し、全国医学部長病院長会議が認定証を発行し、医学生の質を担保する「Student Doctor」についても位置付けや医行為を法的にどのように考えるか議論を促した。【新井哉】
臨床実習開始前に行うOSCEは、医学部のある全国の80大学で行われており、学生は、▽医療面接▽身体診察▽救命救急▽手技―などの基本的な診療能力に関する評価を受ける。臨床実習終了後のOSCEについても、2020年度から全80大学で正式に導入される見通しだ。
OSCEを公的化・国家試験化した場合の利点や課題も指摘されている。実施体制や出題課題、合格の基準が統一され、国民に対して安心感を与えるメッセージになるといった利点がある一方、対応が標準化された模擬患者や評価者、実施場所などの確保が困難といった課題もある。
「Student Doctor」は、学生の医行為に対する患者の信頼や理解を得やすくして、臨床実習を「見学型」から「診療参加型」にシフトさせることなどを目的に、15年度から本格的に実施されている。全国医学部長病院長会議が、知識を問うCBTの受験者とOSCEの施行者に対し、合格者の認定証を発行する。病院実習(診療参加型臨床実習)で患者や病院職員に対し、医学実習生の「知識・技能」を保証したものとして示せる。
医学部の臨床実習で実施可能な医行為に関する研究報告書(18年)では、実施条件として、▽医学生に許容される医行為の範囲▽指導医による指導・監視▽医学生の要件▽患者等の同意―についての見解などを提示。「医師養成を推進する観点から、医学生が行うことのできる医行為のより一層の明確化と現場への周知を図るため、一定の法令上の対応を行うことが必要である」としていた。
厚労省が共用試験(CBT・OSCE)の公的化と「Student Doctor」を論点として提示した背景には、こうした報告書の要望や、臨床実習が見学中心で実習の実践性が乏しく、習得度が高くないといった指摘などがある。卒前と卒後のそれぞれ2年間の臨床教育が分断した状態で、研修の内容に重複があるため、「シームレスな養成」を目指すことが求められている。また、医療法及び医師法の一部を改正する法律(18年)の附則の第2条には、臨床実習などの医学教育の状況を勘案し、同法律の公布後3年以内(21年7月まで)に法制上の措置などを講じるとされており、同分科会で議論する必要があった。
19日の会合では、厚労省の説明に対し委員から、「医学教育をシームレス、重複を避けるという考え方は、一般的には、もっと短く、早く医師を養成して、現場に出せという方向、意見を誘発しやすい言葉だと思う」とし、医学教育の前倒しが進み、医学部が試験に備える「医学教習所」となることを懸念する意見が出た。卒前教育に関しても「初期臨床研修とどうやって結び付けるかが大事」とし、議論を深めることを求める意見も出た。次回の会合では、委員らの意見を整理したものを提示する予定。
出典:医療介護CBニュース