マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
厚生労働省の推進する第3期がん対策推進基本計画(今年度から開始)には、がん医療充実のため重点施策として「がんゲノム医療」などが盛り込まれる予定です。
厚生労働省はゲノム医療提供体制を構築するため、まず「がんゲノム医療中核拠点病院」を新たに指定し、そののち「がんゲノム医療拠点病院」を各都道府県に1カ所以上設けて、がんの患者さんが身近な医療拠点でゲノム医療を受けられるような体制にすることも提案しました。
厚生労働省は25日、「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」(座長=間野博行・国立がん研究センター研究所長)に、がんのゲノム医療提供体制が十分に整った「中核病院」を新たに指定した上で、将来的に「がんゲノム拠点」となる病院を各都道府県に1カ所以上、整備することなどを盛り込んだ論点を提示した。これに対して、特に反対意見は出なかったが、中核病院の指定に当たり、医師主導治験や国際共同治験の実績を考慮すべきだとの指摘が、委員から上がった。【松村秀士】
今年度から始まる第3期がん対策推進基本計画には、がん医療を充実させるための重点施策として、「がんゲノム医療」などが盛り込まれる見通しだ。
厚労省は25日の会合で、がんに関するゲノム医療提供体制の構築に向けた論点として、「がんゲノム医療中核拠点病院」(仮称、中核病院)を新たに指定することを提案した。
また、中核病院を指定する際の視点として、▽がんなどに関する遺伝子を複数同時に測定する「遺伝子パネル検査」を実施できる体制を備えている▽遺伝子パネル検査の結果を医学的に解釈できる専門家がいる▽遺伝性腫瘍などの患者に対して専門的な遺伝カウンセリングができる▽遺伝子パネル検査などの対象者の症例が一定数以上ある▽一定数以上の患者の手術検体などを新鮮凍結保存可能▽医師主導治験などを適切に実施できる体制を整備している―ことなどを挙げた。
さらに、中核病院でがんのゲノム医療が安全・確実に提供できるようになった時点で、「がんゲノム医療拠点病院」(仮称、がんゲノム拠点)を各都道府県に1カ所以上設け、がん患者が身近な医療機関でゲノム医療を受けられるような体制を整備することも提案。また、がんのゲノム医療提供を推進するために、「計画的な人材育成と医療保険上の適切な評価が必要」とした。
このほか、がんに関するゲノム情報の集約や管理、活用を進めるための専門的な役割を担う「がんゲノム情報管理センター」(仮称)の設置や、遺伝子パネル検査の結果などによって患者ごとの治療方針を決める上で参考となる「がんゲノム知識データベース」(同)の構築も提案した。
検体の新鮮凍結、コスト負担を懸念する声も
中核病院を指定する際の視点について、西田俊朗委員(国立がん研究センター中央病院長)は、「医師主導治験に関して、体制を整えているのと実績があるのとは必ずしもイコールではない」とし、指定する際は医師主導治験の実績を考慮すべきだとの考えを示した。また、中西洋一委員(九大大学院医学研究院呼吸器内科学分野教授)は、「希少がんなどの治療については国際展開も重要になってくるので、国際共同治験の実績の視点も中核病院の機能に盛り込むべきではないか」と提案した。
このほか、手術検体などの新鮮凍結について、「コストの面で非常に負荷が掛かる」(西田委員)、「相当なインフラの整備が必要になる。実現可能な形に議論を深めた方がいい」(北川雄光委員・慶大医学部外科学教授)といった意見も出た。
出典:医療介護CBニュース