世界の医療ニュースから、マイナビDOCTOR編集部が「ぜひ読んでほしい」と思った記事を紹介します。今回はmedgadgetに掲載された「目の動きを自動で追跡して病気の兆候を検出 ロボットアイスキャナー開発」を取り上げます。
medgadgetによると…
緑内障や糖尿病網膜症、加齢黄斑変性の徴候は、光干渉断層計(OCT)で網膜や視神経の状態を精密に撮影し、調べることで検出します。この検査を簡便にする装置を、米デューク大学が開発しました。自動のロボットアームが患者の動きに合わせて撮影するといい、これまでのように頭やあごを固定したり、スタッフが操作したりする必要がありません。数分かかっていた検査が1分以内に短縮されるとのこと。患者の負担軽減と眼科の人手不足の解消が期待されます。
緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性を早期発見する優れもの「光干渉断層計(OCT)」
また一つ、人間に代わって人間以上の仕事をするロボットが誕生するかもしれません。患者や医療従事者のメリットを考えると、喜ばしいことです。
眼科では、視力の低下、視野のゆがみや狭窄(きょうさく)などがある場合、網膜に覆われ視神経が集まる眼底を調べます。糖尿病や高血圧のある人は、自覚症状がなくてもこの検査を定期的に受けることが推奨されており、人間ドッグで行う医療機関も増えているようです。
現在、眼底の検査を精密に行う手段として、光干渉断層計(OCT)という計器が導入されています。OCTは光の特性を利用して眼底を撮影する機器で、立体的かつ高画質に断層の画像を記録できることから、緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症の早期発見に役立っているといいます。検査の際に患者は、額とあごをフレームに固定した状態で目を見開き、医師や視能訓練士がOCTの照準を合わせ撮影します。散瞳薬を点眼し、瞳孔を開いて撮影する場合もあります。
この検査はしっかりと顔を固定したままで片目ずつ行い、数分を要するため、居心地の悪さを感じた人も多いと思います。撮影者の技術や、疑われている眼疾患の特性によってはかなりの枚数を撮影するため、10分ほどかかることもあるそうです。
自動撮影で熟練の技術が不要な新OCT でも「高給取り」?
OCTを操作する人は手ぶれに気をつける必要があるなど、一定の熟練度が求められるといいます。また、撮影でスタッフが患者に直接触れることはありませんが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、顔を固定する器具を他人と共有するのを避けたがる人もいると聞きます。
そうした中で、顔の固定を必要とせず、自動のロボットアームが患者の動きに合わせて撮影を行うOCTを、米デューク大学の研究チームが開発したとのことです。
なんとこの新装置は、両目合わせて40秒程度で撮影が終わります。ロボットアームに内蔵されている2台の3Dカメラが作動して、目の位置を特定する仕組みになっています。人の動きに合わせてロボットが動き、高速で目のスキャン画像を撮るので、額やあごを固定する必要がありません。元の記事では、動画で検査の様子を紹介しています。
確かに迅速で、患者にとって煩わしさはほとんどないと思います。でも、最大のメリットは医師側にあるのかもしれません。記事で開発者の一人は「熟練のスタッフが不要になるので、プライマリーケアのクリニックや救急外来などで簡単に使用できるようになることを期待している」と話しています。ただ、とにもかくにも、値段次第。人間よりもずっと「高給取り」の可能性が高いですから。
文/ジャーナリスト・村上和巳