世界の医療ニュースから、マイナビDOCTOR編集部が「ぜひ読んでほしい」と思った記事を紹介します。今回はBBCに掲載された「ワクチンは効く?新型コロナ『オミクロン株』とは何か」を取り上げます。
BBCによると…
新たに見つかった新型コロナウイルスの変異ウイルス「オミクロン株」。WHO(世界保健機関)が11月26日に「懸念される変異株」に指定しました。全部で50カ所もの変異が確認されており、32カ所はウイルスが細胞に侵入する際に必要な「スパイクタンパク質」で見つかっているそうです。ワクチンはこのタンパク質を標的にしているため、専門家は既存のワクチンの効果が弱まる可能性について懸念を示しています。
スパイクタンパク質に32カ所もの変異 ワクチン効果低下か
南アフリカで確認された新型コロナウイルスの変異ウイルス「オミクロン株」の感染が拡大しています。11月26日にはWHO(世界保健機関)が、警戒レベルの最も高い「懸念される変異株(VOC)」に指定。28日には国立感染症研究所も同様に「懸念される変異株(VOC)」に指定したと発表しました。この変異株は、いったいどのようなものなのでしょうか。
BBCによると、オミクロン株には全部で50カ所もの変異が確認されています。そのうち32はウイルスが細胞に侵入する際に重要な役割を果たす「スパイクタンパク質」で見つかっているそうです。コロナワクチンはこのタンパク質を標的にしているため、専門家は既存のワクチンの効果が弱まる可能性を懸念しているといいます。
しかし、ワクチンの効果が全くないということではないようです。これまでもアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株という変異株が見つかっており、それらの変異株に対しては高い保護効果があることが分かっています。このことからも専門家は、決められた回数のワクチンを接種することが不可欠だと強調しているとのことです。
そして、既存のワクチンがオミクロン株に有効かどうかを調査した上で、この新変異株に対応する改良版ワクチンが必要になった場合は、設計から承認まで迅速に進める準備が整っているそうです。
変異は1人の患者の体内で進んだ?
ところで、そもそもウイルスの変異はどのようにして起こるのでしょうか。ウイルスは人の体内で自身のコピーを作ります。その際にエラーが生じることがあり、これが「変異」につながります。
ウイルスがコピーを作れば作るほど、変異が起こる機会も増加します。記事によると、専門家は、オミクロン株の変異はある1人の免疫不全患者の体内で起こった可能性があると推測しているようです。この患者の免疫システムがなかなかウイルスを除去できなかったため、その間に体内で多くの変異が起こったと考えられるのだそうです。
オミクロン株を含め、変異株が多くの人に重篤な病気を引き起こすという証拠はありません。しかし、感染力が高く、既存のワクチンが効きにくい場合は、高齢者や基礎疾患のある人を中心に重症者や死亡者が急増する可能性があります。
BBCの記事だけでなく、さまざまなメディアで専門家が、ワクチン接種、マスクの着用、手洗い、ソーシャルディスタンスを守ることの徹底を呼び掛けています。
文/マイナビDOCTOR編集部