世界の医療ニュースから、マイナビDOCTOR編集部が「ぜひ読んでほしい」と思った記事を紹介します。今回はNPRに掲載された「年間推計74万人以上の癌が、飲酒に起因か アセトアルデヒドがDNA損傷」を取り上げます。
NPRによると…
飲酒によるがんの発症リスクの上昇は、予想以上に深刻かもしれません。国際がん研究機関によると、2020年にがんと診断された患者の4%に当たる約74万人が、飲酒が原因とみられるそうです。そのうち4分の3が男性で、女性の場合は過半数が乳がんでした。1日当たりビール中びん1本(500ml)以下の少量の飲酒であってもリスクを高めるといい、74万人のうち14%が該当していたとのことです。
全世界で年間74万人超の飲酒によるがん発症者
「ほどほどにしているから全然問題ないよ。むしろ健康に良いくらいだ」。習慣的にお酒を飲む人が、胸を張って言うこの主張。なんとも恐ろしいことに、間違っているといいます。
2020年に、飲酒が原因とみられるがんを発症した人は全世界で74万1300人に上ると、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が公表しています。これは、この年に新たにがんと診断された人の4.1%に当たる数字です。約74万人のうち、4分の3は男性でした。女性は約17万人で、その半数以上の約10万人は乳がんだったそうです。
喫煙と並び、大量飲酒ががんを招く重大なリスクであることは、一般的に知られていると思います。しかし、「ほどよい」量であってもリスクを高める要因になるとIARCが報告しました。2020年に飲酒に起因すると判断されたがん患者のうち約14%が、1日当たりビール中びん1本(500ml)以下のアルコール摂取だったといいます。
日本人は要注意 「節酒」すべき?
毒物であるアルコールは肝臓で、まずアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解され、さらにアセトアルデヒドがアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無害な酢酸に分解されます。
アルコールはそれ自体が発がん性物質であると同時に、アセトアルデヒドもがんを誘発することが分かっています。このアセトアルデヒドは、DNAを傷つける上、その傷を回復する細胞の力を弱めるといいます。さらに、がんを予防する栄養素であるビタミンA、C、D、Eや葉酸の吸収を妨げたり、乳がんの原因と考えられている女性ホルモン「エストロゲン」の濃度を上昇させたりすると指摘されています。
日本人は、ADHとALDHの働きの弱い人が多いため、飲酒によるがん発症のリスクが高いとの見方もあるので、注意が必要です。
まずは今日から、ほんの少しでもお酒の量を減らしてみた方がいいかもしれません。命を守るために大事なことというと、今はワクチンの「接種」が第一に挙がると思いますが、「節酒」も忘れてはいけないようです。そうは言っても……。うーん、悩ましい。
文/ジャーナリスト・村上和巳