マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
4月1日には日本医師会が「医療危機的状況宣言」を出すなど、新型コロナウイルスの感染拡大により事態は日に日に深刻になっています。そんな中、治療薬の有力候補として注目されている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」の治験を開始したと、富士フイルム富山化学が発表しています。同社は新型コロナウイルスの患者100例を対象に、アビガン投与時の治療効果と安全性を確認し、「6月末までに治験を終了したい」としています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の有力候補として注目されている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)について富士フイルム富山化学は3月31日、承認取得に向け国内での治験(国内第III相試験)を開始したと発表した。
■100例対象に治験、6月末までに終了
治験実施機関は公開されていないが、同社は、COVID-19患者100例を対象にアビガン投与時の治療効果と安全性を確認し、「6月末までに治験を終了したい」(広報担当)としている。
アビガンは、同社が開発し、新型・再興型インフルエンザ発生時に国の判断で使用できる医薬品として2014年3月に承認。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを持つことから、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスへの効果が期待されている。

■「ニーズに応えるため、増産加速させる」
政府は今年2月下旬にアビガン増産の検討を同社に要請。これを受け、同社は3月上旬に生産をスタートさせていた。今後の増産体制について富士フイルムグループは「日本政府や各方面から寄せられているニーズに応えるため、国内外のパートナーとの連携体制を構築し、増産を加速させていく」としている。
アビガンについては、中国の臨床研究で高い改善率が報告されていることから、開発に携わった白木公康氏(富山大医学部名誉教授)が日本医事新報への緊急寄稿などでCOVID-19ハイリスク患者への使用開始を主張。感染症を専門とする臨床医の菅谷憲夫氏(けいゆう病院感染制御センター長)も日本医事新報に寄せたコメントで、「COVID-19流行は日本の緊急事態」として「今こそアビガンの使用を解禁すべき」と訴えていた。
研究者や臨床医から早期承認を求める声が相次ぐ中、安倍首相は3月28日の記者会見で、「(COVID-19治療薬として)アビガンを正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する」と表明。アビガンの効果について「ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、既に症状の改善に効果が出ているとの報告もある」と高く評価する姿勢を示していた。
出典:Web医事新報