「総合診療」のリアル 現役の専門医に直撃!|新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

「総合診療」のリアル 現役の専門医に直撃!

この科の医師は――家庭医は親しみやすい・その辺のお兄さん&その辺のお姉さん・島医者は白い!?

イラスト:イケウチリリー
取材・文:マイナビRESIDENT編集部

このコーナーは元々、医学生と初期研修医に将来のことを考える材料にしてもらおうと、『マイナビRESIDENT』用に作りました。2018年に開始した新専門医制度で基本領域になった19診療科の専門医に、その科の魅力やイマイチなところ、どんな人が向いているのか、「あるある」、一日の仕事の流れ、典型的な医師像などを「ぶっちゃけ」で語ってもらった記事です。こういった他科の詳細な情報は、転科や診療領域の追加を考えている医師にとっても有益だと考え、『マイナビDOCTOR』にも掲載することにしました。
形成外科は、専門医の菊池徹哉(きくち・てつや)さんに聞きました。

インタビューを受けていただいた医師

池徹哉(きくち・てつや)医師 = 1989年生まれ

■所属
生協浮間診療所(東京都)
■主な資格
総合診療専門医、家庭医療専門医・指導医
■卒業大学
昭和大学

* 医師の所属、主な資格は取材当時(2023年10~12月)

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インタビュー内容

Q1.なぜ総合診療を専門に選んだのですか?

自分のおばあちゃんの存在が大きいです。基本的にはすごく元気なんですけど、体調が悪いと何度も病院に行っていました。腹痛で、いろいろな病院でCT検査などを受けていたのですが、どこの医師にも「異常ありません。原因が分かりません」と言われてしまって。何科に行ったらいいのか分からないし、訪ねた病院の医師には「うちじゃない」と言われる始末だと嘆いていました。そんな祖母の姿を見ていて、どんな患者にとっても「何でもまず相談できる存在」になりたいと考えるようになったんです。原因が分からなかったとしても、解決のために一緒にできることがないかを探していけるような医師になりたいと思いました。そして、身近な人の役に立つためには、総合的に診られる能力が必要だと考え、総合診療医を目指しました。

後期研修で勉強していくうちに、祖母のような医学的に説明が困難な症状をMUS(medically unexplained symptoms)と呼ぶことを知り、そういった問題を抱える患者とも向き合いたいと思いました。

Q2.総合診療の良いところを教えてください

総合診療医は、家庭医と病院総合医に大きく分けられます。僕は家庭医として診療所に勤めています。家庭医にも病院総合医にも共通する良いところは、患者に対して「(その問題は)うちじゃない」と言わずに、対応できるところです。どんな患者でも診ることができます。症状を診て、自分で治療が可能であれば行い、各診療科の専門的な知識や技術が必要だと判断すれば、適切な医療機関に紹介することができます。

また総合診療の患者の問題は、医学だけでは解決できないこともあります。私たちの周りに医師以外の職種の人がたくさんいます。介護士、ケアマネージャーや訪問看護師、ソーシャルワーカー、さらに行政や地域の人たちと協力して、患者のサポートができることも総合診療医の魅力の一つです。ステークホルダー(利害関係者)と協力して、地域を支える、盛り上げるような地域活動も僕らの仕事です。そして、患者が安心してまず相談できる医者が総合診療医だと思います。

Q3.総合診療のイマイチなところはありますか?

新しい診療科なので、総合診療医がどういう医者なのか、世間一般どころか医師、医学生にも正確には伝わっていません。正直、総合診療医を目指したいと言っているけど、どんなことがやりたいかがはっきりしないという人も多いのではないでしょうか。

それが原因で、他科の医師からの理解が十分ではないと感じることがあります。「総合診療って何をしているの」と言われることが多いです。「うちの科の患者を診ないでほしいんだけど」という冷たい意見が聞こえることも……。そんな状況なので、総合診療を諦めてしまう医師もいるようです。それは「こういう総合診療医になりたい」というロールモデルがはっきりしないというのが原因の一つだと思います。目指す背中が分からないから途中で折れてしまう人がいるのでしょう。

Q4.専門医としての技術や知識を磨くためにやっていることはありますか?

日々の診療でカバーする領域が広いので、しばらく診ていない疾患の知識は忘れてしまうんですよ。ですが、忘れた頃に患者が「持ってきて」くれます。最初に訴えた症状だけでなく、他にも調子の悪いところはないかと聞いていくと「腰が~、皮膚が~、目が~」と問題が次々に出てくるんです。その症状一つ一つに真摯に向き合い、解決するために勉強していくと、自分のブラッシュアップにつながります。全ての要求に応える気持ちが、何よりも大事です。

今は手軽に文献を検索できる「UpToDate(アップ・トゥ・デート)」や「DynaMed(ダイナメド)」などのツールがあるので、診療をしていて分からないことがあればそれを使って勉強しています。

あとは教育に関わるのが大事だと思っています。人に教えようとすると勉強するし、中途半端に分かっているだけでは教えられないので、できるだけ教育には関わっていこうと思っています。勤務している診療所に後期研修医が来ているので、彼らの指導に当たっています。

Q5.総合診療は何年ぐらいで、自信を持って診療できるようになれますか?

僕は、医師5年目で沖縄県の離島・南大東島に移住し、2年間を医師1人、看護師1人の診療所で過ごしました。自信が付いたのは、島での生活が1年過ぎた頃(医師6年目)でしたね。離島に行ってから、僕が初期研修で働いていたような大きな病院と島の診療所の仕事には、ギャップがあることに気づきました。簡単にいうと、島の診療所で定期外来に来る人は一見、問題を抱えていないように見えるんです。でも、話を深く聞いてみると、家族とか仕事の問題があって、それが体調、生活に影響していることもあります。もしくは、うちの祖母のように医学的に問題がないけど「お腹が痛いんです」と困っている人もいます。

大きな病院にいる時は、救急科で急性期の患者を診ていたので、それと比べると、「あれ、なんか全然違う分野があるな」と思ったんです。それに気づいてから1年がたち、何となく、総合診療医としてやれるようになったかなという感じがしました。

僕は、島に行くことを絶大にお勧めします。つらかったんですけど、あの2年間で相当成長させられました。びっくりするくらい次から次に問題が押し寄せてくるんです。それは、単に病気のことだけじゃなくて、「認知症があって、家族がデイサービスを拒否しているんですけど、どうしたらいいですか」と相談されるとか。もちろん薬でアプローチできる部分はあるのですが、根本的に医学で解決できることではないんですよね。家族との関係はどうなのかとか、患者を取り巻く環境について考えなくてはいけません。そういう問題も含めて、2年間、千本ノックを受け続けたので確実に成長しました。

Q6.総合診療に向いている人を教えてください

人の人生に興味がある人だと思います。総合診療医は、家族関係や居住環境、仕事、趣味など、その人を取り巻く環境を含めて、興味を持てることが大切です。実は親の介護をしていたり、母子家庭で負担が大きかったり、日雇いで生活をしていて経済的に困難だったり、そういう背景に問題が見つかることもあります。それらがその人の人生に、どう影響しているか、それらに対して何かアプローチできないかを考えることに興味がある人は向いていると思います。

あとは、とにかくまず困っている人の相談に乗れる医師になりたい人には絶対にお勧めです。救急科志望で総合診療をよく知らない人なんかは、一度総合診療を考えてみてもいいのではないでしょうか。目の前の人を助けたいというマインドは変わらないと思います。その場で治療するのか、継続的に治療していくかの違いでしょう。総合診療は家族や環境にまで入っていくイメージです。

逆に、「臓器のメカニズムが好き」とか特定の器官に特化したことが好きな人は、臓器別の診療科の方が楽しいのかもしれなません。あと、手技がそんなに多い方ではないので、手技が好きな人もちょっと違うかなという気がします。

病院勤務の一日の流れ

Q7.総合診療は開業に向いていますか?

家庭医は地域密着型の医者なので、向いていると思います。病院総合医も、マインドは同じなので、そういう意味では向いているでしょう。ただ、病院で働いてから地域に出た時に、僕が大きな病院から離島に行った時のように、地域(患者)との距離の近さからくる診療内容のギャップに悩むかもしれません。

Q8.もし総合診療がなかったら、何科を選びますか?

あまり想像はできませんが、救急科でしょうか。家庭医に出会っていなかったら目指していたかもしれません。浪人時代の予備校に向かう電車の中で、目の前で人が倒れたんですが、全く動けなかったんですよ。医学部を志していた自分からしたらなんか悔しくて。それで救急に興味を持つようになりました。

Q9.他科の医師から一目置かれるのは何科ですか?

個人的には産婦人科ですかね。何でも診る総合診療医ですが、僕は男性というのもあって、分野として難しいところなんですよ。産婦人科の分野は、特に都市部だと近くに産婦人科がたくさんあるので、あまり診る機会はありません。でも、ポリクリや初期研修で回っていて好きだったんです。新しい命が生まれ「おめでとう」が言えて、すごく素敵な科ですよね。

Q10.総合診療の「あるある」を教えてください

島医者あるあるでもいいですか。島中どこに行っても患者さん、です。だから、プライベートもほとんどありません(笑)。あとは、海に囲まれた島にいるのに、泳げない。泳いでいる時に携帯電話が鳴ったら出られないので、僕は海に入りませんでした。南の島にいるのに肌は真っ白で「先生白いねえ」とよく言われていました。 あと、おじぃ、おばぁが差し入れをよく持ってきてくれるんですが、量が半端ない。一人暮らしだって言っているのに、山盛りの煮物、袋にパンパンに入った魚の天ぷら、特大のスイカを四玉――などどっさり持ってきてくれて。先日も、島からシークワーサーが大量に届いて、食べきれないので診療所のみんなに配りました。あ、うれしいんですよ!(笑)。

Q11.典型的な総合診療医とはどんな人ですか?

総合診療医の中でも、僕たち家庭医は地域密着で、気軽に相談できるお医者さんでありたいと思っているので、フランクで話しやすい、優しい医師が多いです。「この人にはなぜだか話しちゃうんだよなあ」という、相談に乗るのが上手な人が多い。偉ぶってなくて、その辺の話しやすいお兄さん、お姉さんみたいな普通の人。家庭医は典型的なイメージの医者っぽくないかもしれません。
性格は明るくて、友達が多いタイプですかね。「クラスの中心でまとめ役」はあるかもしれません。イベントを企画するとか、行動力がある人も多いです。

ちなみに、僕の中の病院総合医は、症状から病気を特定するインテリジェンスに富んでいるイメージです。

医学生・初期研修医へのメッセージ

どの科を選んでいいか分からない場合、家庭医は結構ありだと思います。医者になる人は、何かしらで人の役に立ちたいという気持ちがあって、そのツールに医療を選んだということですよね。僕は家庭医をしていて、医療で人の役に立つその感覚をすごく味わえています。だから迷っているなら、とりあえず家庭医になっていいんじゃないかなと思います。どんな世代にも、どんな問題にでも対応できる医者になれますよ。身近な人に相談されたときに、だいたいのことに対してアドバイスできます。そういう存在になりたいと思うなら、家庭医は絶対に向いています。

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