医師は生涯現役で働き続けることができる職業です。しかし、職場環境や体力面などの要因によって、同じ働き方を続けることが難しいと感じることがあるかもしれません。より長く働き続けるために、自身のスキルや体力に合った転職先を探し、働き方を考える必要があるでしょう。今回は、医師が転職を考えるうえで何歳までに行動すればよいのか、職場別の傾向をお伝えします。
- 転職の目的を明確にしたい方。
- 即戦力や指導力を発揮したい方。
- 50代以降のキャリアプランを考慮している方。
目次
医師の転職に年齢はどう関係する?
一般的に、転職は年齢が上がるほど不利になりやすいといわれています。しかし、医師の場合、転職先で求められる特別なスキルや経験を有していれば、ほとんど場合、年齢を問わず転職は可能です。特に、医師の地域偏在が問題となって久しく、診療科によってはかなり深刻な状況にある現在、勤務地にこだわらなければ転職先は数多くあると考えられます。
若い医師が集まりやすい総合病院や大学病院などは、十分な人員が確保される傾向にありますが、中小規模の病院・クリニックや都心から離れた医療施設は医師が不足しているケースが多いです。このような医療機関では、採用する医師の年齢に対して寛大な傾向があります。
また、在宅医療の現場や、特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の介護の現場でも近年医師の需要が拡大しており、臨床経験豊富なベテラン医師は重宝される傾向にあります。職場によってはオンコール対応や日当直業務を免除してもらえるよう勤務条件の相談も可能ですので、ワークライフバランスを確保しながら勤務したい医師におすすめです。
医師は何歳までの転職が望ましい?【職場別】
医師は、経験やスキルによって、何歳まででも働き続けることができます。ただし、職場によっては、転職のタイミングをある程度考慮したほうがいいケースもあります。ここでは、何歳までであればスムーズに転職ができるのか、職場ごとの傾向を見ていきましょう。
2-1.総合病院で重宝される指導医
大学病院や総合病院は、教育制度が整備され、研究や学位取得、海外留学などを行いやすい環境にあるため若手医師が集まりやすい傾向があります。そのため、充分な経験や知識、技術をもつベテラン医師、とくに専攻医を受け持つ指導医は重宝されます。

大学病院で働く医師の大半は、卒業後から医局に所属している医師で構成されますが、大学病院以外の総合病院では求人が出されることがあります。経験やスキルが豊富な40代後半から50代前半頃までの医師を指導者や教授として招き入れるケースや、新しい診療科の立ち上げの際に募集するケースがあり、ねらい目です。
地域によっては求人数自体が限られていたり、募集対象が限定されていたりするので、転職エージェントを利用して応募先を見つけてもらうなどすると、効率的に情報収集をすることができるのでおすすめです。
2-2.中小病院やクリニックは即戦力重視
中小規模の病院やクリニックでは、即戦力となる医師を求める傾向にあります。中でも一定の臨床経験を積み、体力面でも余裕がある30代医師の需要は高いでしょう。また、40代後半から50代前半の医師は、管理者や指導者の役職に就くこともあります。なお、指導医の資格を持つ医師は、中小病院やクリニックでも有利です。
スキルアップや年収アップなど、医師の転職の目的も多様です。将来的に開業を検討している場合には、経営・診療事情を間近で見られたり、開業予定地でのネットワークを作ったりできるというメリットもあります。
生涯現役を考える場合、50代のうちから新しい領域のスキルや経験を積み、体力負担の比較的少ない職場で60代以降も働き続けられるよう準備をするケースもあるようです。例えば、透析クリニックや人間ドック・健診業務等が無理なく働ける就業先として考えられます。
中小規模の医療機関の場合はその特色によって、何歳までの転職が望ましいかが変わってきそうです。転職の目的や働き方の希望と照らし合わせて、自分に合った医療機関を検討しましょう。
2-3.産業医は狭き門
産業医は、年代を問わずワークライフバランスを大切にしたい医師から人気があります。転職をするなら何歳までが望ましいのでしょうか。
産業医には「専属」と「嘱託」があり、何歳まで転職ができるかも大きく変わります。「専属」の場合は1か所の事業場に所属することになるため、勤務できるのはその事業場の就業規則で定められた「定年」の年齢までです。そのため、転職もより早いタイミングが望ましいでしょう。一方「嘱託」の産業医の場合には、事業場との契約内容にはよるものの、基本的には勤務する年齢の上限は定められていないケースが多いようです。

ただし、「専属」でも「嘱託」でも産業医は狭き門です。また就業には産業医資格が必要なため、産業医の道を検討するなら遅くとも40代までに準備を開始しておくことをおすすめします。
外科医は何歳まで転職できる?
外科医の場合、「何歳まで勤務するか」を意識し始めるタイミングが他の診療科の医師よりも比較的早いかもしれません。手術件数や症例件数が多いほどベテランとしての信頼が厚くなる一方、体力面での負担が大きい勤務環境であるためです。
外科医としての経験をさらに積む目的で転職をする場合は、スキル面・体力面の両面で有利な30代がもっともスムーズに転職ができるでしょう。一方、40代以降になると、経験やスキル面での問題はなくとも、応募先のチーム編成のバランスの問題や報酬面の問題によって、転職が難しくなるケースが考えられます。年齢や役職に応じ、自身の転職の目的と求められる役割が合致する応募先を検討しましょう。

なお、外科医として研鑽してきた経験やスキルは、外科医以外の診療科であっても生きていきます。そのため、50代・60代での働き方、そしてさらにその先の働き方を見据えて外科医以外の道を考えるケースも多いでしょう。まったく新しい分野では一から勉強することになりますが、新たな分野への挑戦もスキルアップです。生涯どのように医療とかかわっていくか、キャリアプランをじっくりと考えておくことをおすすめします。
転職の目的を明確にし、何歳までに転職すべきかを考えよう
医師として何歳までに転職すればいいのかを考えるとき、「何を目的とした転職なのか」が非常に重要であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。転職の目的が明確であれば、ミスマッチの少ない転職先を絞り込むことができます。応募時の年齢や応募先の業態によっては、予想していたよりも転職に時間がかかることがあるかもしれませんが、満足度の高い転職がかなえられるでしょう。なお、一般的に30代医師がスムーズに転職しやすい年代であることも念頭に置いておきましょう。
「自分に合った応募先がなかなか見つからない」「年齢が理由で転職が決まりにくい気がする」という方は一度転職エージェントに相談をしてみることをおすすめします。条件に合った求人が出た際に連絡をもらえるよう依頼もできるので、うまく活用して情報収集しましょう。