精神科医になるには?仕事内容や必要な資格、給与事情を解説|医師転職ナレッジ

精神科医になるには?仕事内容や必要な資格、給与事情を解説

精神科は、精神疾患、精神障害、神経症など「こころ」の様々な状態を対象とする診療科です。治療に難渋するケースがあったり、さまざまな職種とのコミュニケーションが必要となったりすることから、多くの研鑽を積んだ医師だからこそ携われる診療分野だといえます。そんな精神科は他科からの転職を希望する医師が多いのも特徴ですが、精神科医になるにはいったいどのような資格やスキルが必要なのでしょうか。

<この記事のまとめ>

  • 精神科医として第一線で活躍するためには精神保健指定医の資格を持っていることが重要。ただし他科から転科してくるケースもあり、勤務にあたって必ずしも必要ではない。
  • 精神科では肉体的な負担は比較的軽いものの、社会的責任は大きくハードな側面もある。
  • 収入アップを目指して転職をする場合は、精神保健指定医や精神科専門医などの資格や専門的なスキルを持っていると有利になる傾向がある。
  • 専門医の取得を目指す場合は、最短でも医学部入学から11年はかかる計算になる。

精神科の非公開求人
をご紹介いたします。

先生の希望条件をぜひマイナビDOCTORの
キャリアパートナーにご相談ください。

1.精神科医と心療内科医の違いは?

一般的に、精神疾患の診療に当たる医師といえば精神科医がイメージされますが、近年ではよく似た診療科として「心療内科」を標榜する医療機関も増えています。一般の患者さんにはその違いがあまり理解されていないかもしれませんが、精神科と心療内科では扱う対象に違いがあります。

精神科医は「精神症状を伴う精神疾患」をメインに扱います(精神疾患に伴う食欲低下による低栄養状態、易感染性などへの対処も役割のひとつではあります)。一方、心療内科がメインに扱うのは「精神的な不調に伴って生じる身体的症状」です。具体的には、ストレスなどによって生じる過敏性腸症候群や自律神経失調症などが該当します。

厚生労働省の令和4年度の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、主たる診療科を施設の種別(病院)でみた医師数では、精神科医は1万2,345人(5.6%)となっています。一方で、心療内科医はわずか246人(0.1%)です。心療内科に比べて、精神科医のほうが圧倒的に多いのが現状です。

2.精神保健指定医資格は必須?

精神科医として第一線で働くためには、一般的には「精神保健指定医」の資格を取得する必要があります。精神保健指定医とは、精神科医療に特有の医療保護入院、措置入院、応急入院など、患者さんの意思にかかわらず法律に基づいて「強制入院」させる権限を持った医師のこと。そのほか、入院中の患者さんの行動制限を決定したり、精神医療審査会の立ち入り検査に立ち会ったりする権限も持っています。患者さんの人権を守りながら適切な精神科医療を実践できる資質の証明として、精神保健指定医資格が効力をもつわけです。

精神保健指定医資格を取得するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。初期臨床研修を終えて精神科専攻医として3年以上の実務経験を積めば資格を取得できることになり、その後は精神科専門医資格の取得をめざすのが精神科医の一般的なキャリアパスです。

<精神保健指定医の資格取得要件>
・5年以上診断または治療に従事した経験を有すること。
・3年以上精神障害の診断または治療に従事した経験を有すること。
・厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断または治療に従事した経験を有すること。
・厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前1年以内に行われたものに限る)の課程を修了していること。

厚生労働省「精神保健指定医とは」より

ただし、精神科は他の診療科から転科してくる医師が多いこともあり、必ずしも精神保健指定医や専門医資格を保持していなければ働けないというわけではありません(ただし、精神保健指定医資格を持っていることが入職の前提とされる医療機関もあります)。転職を希望する場合は、自身に合わせたキャリア形成をサポートしてくれる医療機関を探すといいでしょう。

3.精神科医の仕事は精神的に大変?

「精神科は大変」というイメージをもつ方も多いのではないでしょうか? 精神科では、大きな身体的負担を伴うような業務は基本的にはないと考えられます。しかし、その業務の特性上、他の診療科では生じないようなさまざまなケースに対応する必要があります。

例えば、錯乱した状態の患者さんに対応しなければならない場面や、家庭環境などに問題を抱えた患者さんの家族と密接に連携しながら治療を進めなければならない場面です。また精神科医療ではガイドラインに沿った治療が症状改善につながるとはかぎらないため、ときには臨機応変な判断が必要なこともあります。

さらに、自傷行為や他害行為を伴う疾患も多いため、医療保護入院の必要性を速やかに判断すべきこともあります。

精神科の業務にはこのような特殊性があり、やりがいの大きな分野である一方、人によってはこうした勤務環境のなかで負担が大きいと感じる可能性もあります。精神科医をめざす医師は、ここでご紹介したような勤務環境を考慮に入れてご自身の適性を考えてみてもいいかもしれません。

4.精神科医に向いている人の特徴3選

精神科医を目指すにあたり、自分が向いているのか気になる方もいるかもれません。続いて、精神科に向いている人の特徴3つを紹介します。

4-1.コミュニケーション能力が高い

患者さんやその家族とのコミュニケーションは、基本的にはどの診療科でも重要なポイントですが、精神科の場合は、よりコミュニケーション能力が求められやすい傾向にあります。

なぜなら、精神疾患がある患者さんの中には、症状による影響から自分の抱える不調をうまく伝えられないケースも多く見られるからです。精神科医は患者さんの発言内容だけでなく、表情や視線、反応、行動など、さまざまな面から患者さんが今おかれている状態を読み取る能力が求められます。

また、発症原因や背景を探るためには、患者さんだけでなく、その家族や周囲の人とのコミュニケーションも重要です。さらに、患者さんの状況に応じてわかりやすく、今後の治療方針や薬の効果、副作用などについて説明することもあります。場合によっては、繰り返し何度も説明する必要があるため、よりわかりやすく伝えるスキルも求められるでしょう。

コミュニケーション能力が高い医師は、患者さんに限らず家族からの信頼、医師や診療に対する満足度にも好影響を及ぼす傾向があり、精神科医に向いているといえるでしょう。

4-2.ストレス耐性が高い

精神科医は、妄想や感情の起伏などの症状のある患者さんと関わる機会が多く、場合によっては、医師自身が精神的に影響を受けてしまう可能性があります。長期的な治療が必要な場合もあることから、そうした状況に耐えうるだけの精神的な強さや客観的な視点を持ち続ける必要があるでしょう。また、感情的にならずに落ち着いて対応できる精神力が求められます。

ストレス耐性が強く、常に冷静に対処できる人は精神科に向いていると考えられます。

4-3.共感力が優れている

精神科医は、精神的に不安定な患者さんの気持ちに寄り添う共感力も必要です。患者さんの訴えを傾聴し、「あなたの気持ちを理解している」と共感していることで伝えることは、患者さん自身が自己理解を深める手助けになるといえるでしょう。患者さんに共感しながら、必要な治療や支援を行うことで、よりスムーズに治療を進めやすくなります。

ただし、患者さんの辛さに共感するあまり、自身の精神にも影響を及ぼしてしまうこともあります。そのため、共感力が高いことに加えて患者さんの症状の影響を受けずに自分をしっかりと維持できる人は精神科医に向いているといえるでしょう。

5.精神科医の給与事情

勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、精神科医の平均年収は1,230.2万円となっています。調査対象となった全診療科の医師の平均年収は1,261.1万円ですから、精神科医の給与水準は平均よりもやや低めです。

年収帯別にみると、精神科医のボリュームゾーンとなる年収帯は1,000~1,500万円未満で33.0%です。年収2,000万円以上の精神科医の割合は10.6%と平均水準(全体平均は10.0%)で、また、500万円未満の割合は5.9%で平均よりも低め(全体平均は7.7%)です。

こうした傾向から、精神科医の給与水準は飛びぬけて恵まれているとはいえないものの、働き方次第では高収入を得ることができると考えられます。より詳しく精神科医の年収事情について知りたい方は「【医師の年収事情】精神科医は収入格差が激しい」の記事をご参照ください。

収入面を重視して転職を考える場合は、精神保健指定医や精神科専門医などの資格を取得しておくと有利に働くことがあるのでおすすめです。また電気痙攣療法など、精神科医療の中でも特殊なスキルを持った医師を好待遇で募集する医療機関もありますので、こうした専門的な技術を身につけることはアピールポイントとすることができます。

6.精神科医のワークライフバランス

精神科は、緊急手術などもなく時間外労働が少ない傾向にあるため、比較的ワークライフバランスを確保しやすい診療科だといえます。また勤務先の施設のタイプや勤務形態によって働き方の幅が広いため、ご自身のライフスタイルに合った医療機関を探すことができるというメリットもあります。

より多くの症例を経験して研鑽を重ねたい方は総合病院での勤務、育児などの事情でワークライフバランスを重視する方は(無床の)クリニックでの勤務をおすすめします。

精神科医には多くの治療経験が求められるうえ、社会的責任が大きな判断を課せられる場面もあります。一概に「精神科医=ゆとりのある勤務」とはかぎらないことを念頭に置いておきましょう。

[プライベートも重視したい医師におすすめの記事]
ワークライフバランスに関する記事一覧はこちら

7.精神科医になるためのよくある質問

続いて、精神科医になるためのよくある質問2つに回答します。

7-1.精神科医になるために何年かかる?

精神科医になるには、大学の医学部か、医科大学で6年間学んだあと、医師免許資格を取得し、その後に2年間の臨床研修を受ける必要があります。つまり、最短で8年かかることになります。

加えて、臨床研修の後には、専門医資格もしくは精神保健指定医の資格を取得する人も多く、その場合はさらに年数を要します。

精神科専門医を目指す場合には、「5年以上の臨床経験を有し、うち3年以上の精神科臨床経験」が必要です。精神科の臨床経験としては、公益社団法人日本精神神経学会により認定された精神科専門医制度研修施設、及び指導医のもとで3年間の研修を受けなければいけません。その後に認定試験に合格すれば専門医になることができます。

つまり、専門医の取得を目指す場合は、最短でも医学部入学から11年はかかる計算になります。

精神保健指定医の資格を取得する場合も、「5年の臨床経験のうちに3年以上の精神科臨床経験」が必要で、精神保健指定医研修を受けたあと、試験に合格する必要があります。

精神保健指定医は、必要であれば患者さんの意思に関わらず強制入院などの措置を指示できる資格です。取得しておくと仕事の幅が広がりますが、入院設備がない診療科などでは不要なケースがとほとんどですので、必ずしも取得する必要は無いでしょう。

[もっと知りたい! 続けてお読みください]
精神保健指定医とは?資格取得の方法とやりがいを解説

7-2.文系は精神科医になれる?

もともと文系の学歴であっても、精神科医になることは可能です。精神科になるためには、まず医学部に合格する必要がありますが、文系からでも受験はできるからです。

ただし、試験には理系科目が必ず含まれます。さらに医学部入学後も一般教養にて理系科目を履修する必要があるため、理系科目の学習は欠かせません。文系であっても精神科医になることは可能ですが、理系の学習を避けることはできない点を覚えておくと良いでしょう。

文理選択で文系を選んでいる高校生であれば、医学部を受験する際に、理系の受験科目が少ない大学を選ぶ方法もあります。

8.精神科医への転職事例

精神科医への転職を成功させた医師は、どのようなきっかけで転職を考え、どのような勤務先に転職をしているのでしょうか。マイナビDOCTORの転職サポートを利用して転職を成功させた医師の転職事例を紹介します。

8-1.内科から精神科への転職事例

  • 年代・性別:30代・男性
  • 勤務形態:常勤 週5日
  • 診療科目:内科 → 精神科
  • 施設形態:病院
  • 年収:1,200万円
  • 業務内容:外来・病棟管理

内科から精神科への転科を希望。転職先の病院は未経験でも一から指導をしてもらえる職場環境であり、また内科経験があることに対してプラスの印象を得ていた。内科医としての経験を生かすことができ、精神科医としても研鑽できる環境に魅力を感じ転職を決断。

8-2.美容皮膚科から精神科への転職事例

  • 年代・性別:30代・男性
  • 勤務形態:常勤 週5日
  • 診療科目:自由診療→精神科
  • 施設形態:クリニック→病院
  • 年収:1,500万円
  • 業務内容:外来・病棟管理

初期研修修了後に自由診療に進み、接客や美容医療で人の心や生活を前向きにしていくことに楽しさを感じていた中で、元々学生時代より興味のあった精神科への転科を希望。①指定医まで取得可能な医療機関であること ②若手からベテランまで在籍している環境であり症例数も十分であることからキャリアパスが描けたこと ③転居をともなう転職であった中、住環境の説明が丁寧にされたこと などに魅力を感じた。自由診療と比較し給与水準は下がるものの、長期的なキャリア形成をする上で充実した就業環境であることが決め手となり転職を決断。

8-3.眼科から精神科への転職事例

  • 年代・性別:30代・男性
  • 勤務形態:常勤 週5日
  • 診療科目:眼科 → 精神科
  • 施設形態:大学医局→病院
  • 年収:1,000万円 → 1,200万円
  • 業務内容:外来・病棟管理

親が眼科の開業医だったため、眼科医になるため大学医局にて眼科の専攻医として入局していた。実家の事業を継承する必要がなくなり改めて自分のキャリアを考えたところ、初期研修時にローテーションで診た精神科を改めて志すことを決意。指定医を取得できる医療機関が限られる中、大学との連携により指定医の取得が可能なことや、院長の人柄に魅力を感じたこと、将来的な昇給が見込めたことなどにより転職を決めた。

内科、美容クリニック、眼科など、精神科以外の診療科から転科に成功した事例を紹介しました。

現在の勤務環境を変えてみたい、未経験の診療科にチャレンジしてみたい、と考えている方はマイナビDOCTORのキャリアパートナーへ相談してみてはいかがでしょうか。

7.精神科医に転職するには?

精神科は他の診療科から転科してくる医師が比較的多いという特徴があります。中には転職の際の条件として精神保健指定医資格の取得を求める医療機関もありますが、精神科医になるための必須条件ではありませんのでまずは自身のこれまでの経験、適性、保持する資格にマッチする職場を探すことが大切です。

また、精神科医療は精神保健福祉法などの関連法と大きく関わるという特徴もあります。他科から転職する医師はなじみのないことがほとんどかと思いますので、あらかじめ制度面についても確認をしておくと入職後スムーズに業務を進められるでしょう。

注目度の高い精神科への転職を、キャリアのひとつの選択肢として検討してみてはいかがですか?

精神科の非公開求人
をご紹介いたします。

先生の希望条件をぜひマイナビDOCTORの
キャリアパートナーにご相談ください。

PROFILE

執筆/成田 亜希子(なりた・あきこ)

医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会日本感染症学会日本公衆衛生学会に所属。

NEW CATEGORY ARTICLE医師転職ナレッジ

RECOMMEND ARTICLEおすすめ記事

CATEGORY記事カテゴリ

医師転職ナレッジ
意外と知らない医師の転職市場。ここでは、医師の転職市場全体の動向や、診療科目別のトレンドなど希望のキャリアを実現するナレッジを紹介いたします。
医師の現場と働き方
このコンテンツでは、勤める環境によって、医師がどんな働き方になるのかをデータや現場レポートを交えて紹介いたします。
DOCTORY(ドクトリー)
「Doctor=医師」+「Story=物語」+「Victory=成功、喜び」から成る造語です。第一線で活躍される先生方のキャリアや生き方に関するお話をうかがい、若き医師たちの指針となるようなメッセージをお届けします。
スペシャルコラム
最新の医療関連情報はもちろん「開業」のヒントや「お金」の話など、医師のライフスタイルを豊かにする情報満載。
世界の医療NEWS
世界の医療ニュースの中から、厳選した記事をギュッと凝縮して紹介します。1日数本を1分で、サクッと読むことができます。日々の情報収集、話のネタ探しにお役立てください。

求人検索

まずは【勤務形態】を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください

条件を選択してください(今泉テスト)

条件を選択してください

条件を選択してください