人間関係や労働条件、給与……、「常勤医を辞めたい!」と思ったことがある医師の方も多いのではないでしょうか。常勤医を辞めたらフリーランス医として働くことになります。「フリーランスと聞くと聞こえはいいけど、その実態はアルバイトと変わらなくて不安……」、そんな心配がある人もいると思います。実際に常勤医を辞めたらどのような働き方になるのでしょうか?
1.定期非常勤と常勤はどう違うのか?
常勤医としての働き方は、一般の会社のサラリーマンとしての働き方に似ています。週に4日から5日、勤務する必要があります。給与は月給制で、年に2回の賞与がある病院がほとんどでしょう。有給休暇を取得することも可能で、慶弔休暇や夏季休暇などもあります(もちろん、人員配置により休暇がズレることはあります)。ただし残業や当直などは比較的多く、深夜であってもオンコールで呼び出されることがありますよ。労働条件面では厳しくなりやすいでしょう。
何より常勤医の最大のメリットは、福利厚生や社会保険が充実していることです。産休や育児休暇を取得できる病院も多く、中には院内保育の制度が整っている病院もあります。年金も厚生年金となるため、老後の不安をある程度解消することができます。また、退職金制度もあるため勤務した期間に応じて大きな金額を手にすることも可能です。1つの病院で30年以上勤務すると、数千万円の退職金を手にすることが可能です。さらに常勤医は急に雇用が切られる心配もありません。金融機関などでの信用も大きく、住宅ローンの審査が通りやすいこともメリットのひとつです。
一方で非常勤医としての働き方は、一般の会社のアルバイトや契約社員に近いです。週に1日から3日程度、勤務する日があり残業や当直の有無などはある程度契約で決めることができます。労働条件の面では常勤医に比べて楽になることが多く、ワークライフバランスを重視することができます。給与は日給制であり、給与水準自体は常勤医よりも高い傾向にありますよ。非常勤医の働き方は基本的に長期間同じ病院に属します。そのため、それぞれの診療科に応じた専門性の高い診療を行うこともあります。
ただし、非常勤医としての働き方は福利厚生や社会保険が充実していないため注意が必要です。産休や育休の制度が整っているところはほとんどありません。年金も国民年金で退職金も基本的にないため、将来への蓄えは自分で行う必要があります。金融機関の信用も常勤医に比べたら低いため、住宅ローンを受けるときに条件が悪くなる可能性もあります。
2.定期非常勤の勤務先を探すときのポイント
定期非常勤先を探すときのポイントは「何を一番重視したいか」で決めましょう。たとえば、「常勤医としての勤務が過重労働でつらかったため、労働条件がより穏やかな病院を選ぶようにする」など。非常勤勤務を募集している病院の場合、人員が不足する傾向にあり是が非でも入職してほしいというところが少なくありません。採用の要項に書かれている以上の条件を伝えても、可能な限り配慮してくれるところが多いため、希望する病院があったら正直に伝えてみましょう。
ただし、労働条件や給与の交渉はデリケートなものです。慣れていないうちは不安が残ることもあります。病院の心象を悪くしてしまわないよう、転職エージェントを頼るべきでしょう。転職エージェントは病院とのやり取りをしている中で、「どのくらいの条件ならば引き出せる」ということを把握しているはずです。「労働時間、日数はこのくらいにしたい」、「このくらいの給与はでないか」と相談すれば病院側と交渉をしてくれるため、非常に助かる存在です。
3.初めての勤務先で気を付けるポイント
非常勤で勤務する病院は、基本的には長期間就業することになります。その期間がどのくらいになるかはわかりませんが、通常の常勤医としての勤務と同じく人間関係は重要になります。挨拶などはしっかりとして、周囲の医師だけではなく看護師の方々やほかの科の医師とも有効な関係を築くようにしましょう。
また、勤務を決める前にその病院の内情がどのようになっているかを確認することも重要です。人間関係は悪くないか、あまりにも頻繁な退職者は出ていないか、非常勤医であっても急な残業対応などをお願いさせることが多くないか、といったポイントです。急な人員不足が出たら、その分業務が忙しくなり、非常勤医であってもそのしわ寄せが来る可能性があります。もともとの採用条件と大きく変わらないか、働きやすい職場であるかを事前に確認するようにしましょう。こういった病院の内情をあらかじめ知るのには、転職エージェントが有効です。医師を病院に入職させる過程で、病院の内情を把握しています。より働きやすい病院を探すためにも、一度転職エージェントに相談してみると良いでしょう。
文:太田卓志(麻酔科医)