家庭医療専門医制度とは?制度の現状と課題についても解説|医師の現場と働き方

家庭医療専門医制度とは?制度の現状と課題についても解説

2020年度からスタートした新・家庭医療専門医制度をご存知でしょうか? 総合診療専門医を基盤とし、地域密着型のプライマリ・ケアを発揮できる専門資格として注目されています。しかし、実際のところ、まだまだ認知度が低いのが現状です。家庭医療専門医とは、具体的にどのような活躍をする医師なのでしょうか。今回は、家庭医療専門医について、その概要や現状、課題について詳しく解説します。

こんな方におすすめの記事です!
  • 家庭医療専門医の役割や魅力について詳しく知りたい
  • 新・家庭医療専門医制度の内容や旧制度との違いを理解したい
  • 家庭医療専門医の現状や課題、将来性について考えたい

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目次

  1. 家庭医療専門医とは
  2. 家庭医療専門医の魅力と活躍の場
  3. 新・家庭医療専門医制度とは
  4. 家庭医療専門医になるには?資格取得の流れ
  5. 家庭医療専門医の現状と課題
  6. 家庭医療専門医資格を取得するメリット
  7. 家庭医療専門医の取得で未来の地域医療を支援しよう

家庭医療専門医とは

家庭医療専門医とは、総合医療専門医のサブスペシャリティ領域に当たる分野で、家庭医療学への理解を深めたとして認定される専門医資格です。日本プライマリ・ケア連合学会が、運営・支援するもので、国際基準に相当する質の高い総合診療医/家庭医としての活躍が期待されています。

家庭医とは

家庭医療について、厚生労働省は「家庭医療は、家庭医が提供する医療」と定義しています。また、家庭医について、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会は「地域住民の健康のために働く総合診療医のこと」と説明しています。

参照:家庭医とは|一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会

海外では「ホームドクター」として、診療科を問わずに相談でき、症状や疾患によっては専門家につなぐ医師の活動が認知されています。日本では、こうした相談・診療先としてかかりつけ医の普及が始まっていますが、家庭医はさらに踏み込んだ存在といえます。昔ながらの「まちのお医者さん」を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。家族や地域との関わりを深め、患者さんを取り巻く家庭や環境をより意識した診療を行うのが家庭医であり、その専門医資格に該当するのが「家庭医療専門医」です。

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家庭医療専門医の魅力と活躍の場

日本では地域医療構想の導入をはじめ、医療制度の大きな改革が進められています。今後ますます医療の集約化や機能分化などにより、総合診療のニーズが増えると考えられています。

そうしたなかで、総合医療全体の質向上に位置づけされる「家庭医療専門医」には、予防医療の提供による医療費削減や、地域医療による患者さんのQOL向上に取り組む役割があります。また、家庭医療専門医は世界標準の研修により、高度で包括的な知識を得ることで、今後の地域医療のリーダー的存在としての活躍が期待されています。

これから総合医療の知見を深めたい場合や、地域での診療所開業などを予定している場合、地域包括ケアに参入したい場合などに役立つ専門医資格といえるでしょう。

具体的な活躍の場としては、以下のようなケースが挙げられます。

1.地域の診療所で、全年齢層を対象として、保健・医療・福祉にわたり包括的・継続的な医療を提供する中核メンバーとしての活躍

2.中小病院で、臓器を問わず幅広い外来・救急・入院治療を提供するとともに、高度医療機関と地域の接点として、地域包括ケア病棟などの運営を通して、在宅支援ベッドの運用や、ポストアキュートのケアを提供する

3.大病院で、診断困難例の診療や、複数の健康問題を抱える患者のケアに当たるとともに、地域連携の窓口としての役割を果たす

4.大学などの教育研究機関で、後進の教育に当たるとともに、総合診療/家庭医療の発展のための学術活動を行う

新・家庭医療専門医制度とは

2018年度にスタートした新専門医制度において、「総合診療」が基本領域に追加されました。その後、2020年度には、サブスペシャリティとして「新・家庭医療専門研修制度」がスタートしています。総合診療専門医取得後の選択肢となり、研修や試験を経て、2022年夏以降、新制度による家庭医療専門医が誕生しました。

家庭医療専門医制度は、WONCA(世界家庭医機構)の研修プログラム認証 (accreditation)を受けており、国際標準のスキルを身につけられる内容となっているのが大きな特徴です。そのため、研修後には、「国際標準のトレーニングを受けた総合診療医/家庭医」として認定されます。

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旧制度との違い

旧制度では、以下の条件を満たした場合に、家庭医療専門医として認定されていました。

●3年以上の家庭医療後期研修(ver1、2の2種類のプログラム)の受講
Ver1:家庭医療専門研修、内科、小児科の領域別研修
ver2:総合診療専門研修、内科、小児科、救急科の領域別研修

●研修終了後、専門医試験の合格

新専門医制度により、基本領域の1つである「総合診療専門医」の取得が必須になった点が、旧制度との大きな違いです。

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家庭医療専門医になるには?資格取得の流れ

家庭医療専門医になるには、「総合診療専門医」取得後、サブスペシャリティ領域となる専門医試験(筆記試験、実技試験、ポートフォリオ評価から構成)に合格する必要があります。具体的には、以下の2つの方法があります。

①総合診療専門医取得後、サブスペシャリティ領域に進む

新専門医制度の基本領域の1つである「総合診療専門医」を取得後、24ヵ月以上の家庭医療専門研修を受ける方法です。研修プログラムは、以下の2種類があります。

▶家庭医療専門研修Ⅰ(おもに診療所・小病院)18ヵ月以上
継続的ケアの経験を担保するために、12ヵ月以上連続して同一の施設での研修

▶家庭医療専門研修Ⅱ(おもに病院)6ヵ月以上

なお、初期研修修了後4年以上の臨床経験があることも研修の修了条件となっています。

研修開始登録後の研修のみが、研修歴としてカウントされ、その後、24ヵ月以上の研修を受けることで、受験資格が得られます。

②総合診療専門医の連動プログラムを選択する

総合診療専門医との連動プログラムにより、初期研修終了後に合計48ヵ月以上研修する形で家庭医療専門医を目指すことも可能です。

学会の定める基準を満たした認定施設において、総合診療専門医と新・家庭医療専門医の研修プログラムを同時にスタートする方法です。この場合、総合診療専門研修は、家庭医療専門研修としてもカウントされます。3年プログラムと4年プログラムがあり、3年プログラム場合には半年程度の選択研修(産婦人科、整形外科など)を取り入れることも可能です。

なお、いずれの場合も、研修の場以外での研修(Off-the-job training)を受ける必要があります。必要単位数は、①臨床36 単位、うち災害医療とウイメンズヘルスは各3単位以上、②教育6単位、③研究6単位、④マネジメント6単位です。

加えて、認定後は5年ごとの更新が必要です。更新には生涯教育単位の取得(50単位、一部必須領域あり)、ポートフォリオ事例報告書の提出(6領域、6事例)があります。

家庭医療専門医の現状と課題

一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会のホームページに掲載されている家庭医療専門医(情報開示許諾をしている会員)は、2025年2月時点で、649名とまだまだ少ない状況です。

参照:あなたのまちの家庭医療|一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会

少子高齢化が進み、地域包括ケアシステムの構築が進むなか、総合診療医/家庭医の需要が高まっています。しかし、総合診療は、2018年に新専門医制度がスタートした時点で追加された領域であり、2021年に一期生が誕生したばかりです。他の診療科と比べて、専門医を取得している人数が少なく、そのサブスペシャリティ領域となる家庭医の人数も必然的に十分ではありません。実際に、2024年度に「総合診療領域」で病院採用となった専攻医の数は、290名で、最も多い内科の専攻医2,850名と比較すると約10分の1でした。年々、総合診療専攻医の採用者数は増加しているものの、社会のニーズに十分こたえられていないのが現状です。

その背景には、総合診療専門医や家庭医療専門医の役割や仕事内容において十分な情報が提供されていないことや、専門医取得後のキャリアパスが不明瞭であることが考えられます。実際のところ、総合診療専門医や家庭医療専門医のキャリアパスは多様であり、目的によってさまざまな活用が可能です。しかし、多様だからこそ、明確なキャリアパスがつかみにくいと感じることが多いようです。

この現状を変えるためには、総合診療や家庭医療に興味を持つ学生・研修医に「どのようなキャリアを重ねていけるのか」について明示し、それを確実に遂行できる制度や仕組みづくりの実現が期待されています。

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家庭医療専門医資格を取得するメリット

家庭医療専門医はこれからの地域医療を支える資格といえます。家庭医療専門医を取得するメリットを紹介します。

地域医療を支える存在として専門性を発揮できる

超高齢社会となり、地域医療の重要性が高まっています。そうしたなか、注目されているのがプライマリ・ケアです。プライマリ・ケアとは疾患の診断、治療だけでなく、患者さんの日常的な健康状態や生活環境までを考慮して、総合的に診ることを指します。これは、家族や地域、家庭環境などを多角的に考慮し、身近な存在として診療を行う家庭医療専門医の専門性と重なります。

基礎領域である総合診療専門医から、さらにステップアップし、国際基準での実践的なトレーニングが受けられる家庭医療専門医の取得は、よりレベルの高いプライマリ・ケアの提供が可能になります。地域密着型の医療を提供したい医師にとって、家庭医療専門医のスキルや経験は、大きな強みになります。今後の地域医療体制の重要度を考えても、家庭医専門医はニーズが高まっていくのではないでしょうか。

どのような領域でも、専門性が活かせる

総合診療は、地域医療としてのニーズが高いものの、総合病院などの大規模病院においても、家庭医療専門医の知識や経験が活かせます。内科や外科といった診療科であっても、患者さんの家庭環境や家族との関わりなどを考慮した診療を行うことで、信頼関係を構築し、スムーズな治療を進められるようになるでしょう。異なる領域から、新たに家庭医療専門医を取得するには時間がかかるものの、総合診療専門医との連動プログラムを活用することで効率のよい資格取得も可能です。現在の専門分野と掛け合わせることで、今後ますますニーズが高まると考えられる地域医療に対して大きな貢献ができる可能性があります。

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在宅医療の開業など、将来の選択肢が増える

家庭医療専門医は、患者さんの家族や家庭環境、地域性などを考慮した総合的な診療を行います。高齢化による在宅医療の増加を考えて、将来的な開業を検討する医師もいるのではないでしょうか。個人診療所やクリニックの開業を検討している場合には、地域医療への深い理解が欠かせません。家庭医療専門医を目指すことで、患者さんに寄り添った医療を提供するためのスキルや経験が得られます。国際基準でのスキルを身につけることで、より質の高い医療を提供しながら、患者さんに頼られる開業医としての活躍が期待できます。

家庭医療専門医の取得で未来の地域医療を支援しよう

家庭医療専門医制度は、国際水準の総合診療医/家庭医を養成する制度です。プライマリ・ケアの専門家である総合診療医/家庭医は、地域住民の健康を守るだけでなく、医療費の削減や健康寿命の延長など、国民のQOLの向上に大きく貢献できます。家庭医療専門医制度にて得られた国際水準の知識や技術は、医師としてのキャリアを積んでいく際にもさまざまな場面で役立てていけるでしょう。

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参考URL

記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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