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医師のドロップアウトとは? ドロップアウトの理由や決断前にやるべきことを解説

ドロップアウトはそもそも「脱落」という意味ですが、医師の間では「大学の医局を離れた医師」を指すことが多いです。医師には、医局以外にもさまざまな働き方がある中で、どうして医局を離れることが「ドロップアウト」とされるのでしょうか。

本記事では医師のドロップアウトの概要やドロップアウトに至る理由、ドロップアウトするときの注意点、決断する前にできることなどを解説します。ドロップアウトと聞くとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、実際には医局を離れた後もさまざまな選択肢があります。ドロップアウト後のキャリアの選択肢も解説するので、医局を離れるかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

こんな方におすすめの記事です!

  • 医局を離れることを考えている方
  • ドロップアウトした後のキャリアに不安がある方
  • ドロップアウト後の選択肢を知りたい方

目次

医師の「ドロップアウト」とは?

医師の「ドロップアウト」とは、医局を離れることを指す言葉です。「ドロッポ」と表現することもあり、医局を離れた医師は「ドロッポ医」「泥医」と呼ばれることがあります。

かつては「医師の成功=医局でキャリアを構築すること」と考えられてきました。現在もその風潮は残っており、医局から離れることで「成功へのルートを外れた」と考える医師も少なくありません。そのため今でも医局から離れることに対し、マイナスな印象がある「ドロップアウト」という言葉が使われることがあります。

しかし医師の働き方は時代とともに多様化し、現在は医局を離れることにネガティブなイメージを持たない人も増えてきました。従って「医局を離れること=ドロップアウト」という考え方は、少しずつ過去のものになりつつあるのが実情です。

医師がドロップアウトに至る理由

では、なぜ医局を離れる医師がいるのでしょうか。ここからは、医師がドロップアウトに至る代表的な理由を解説します。

職場環境が合わない

医師がドロップアウトに至る理由の一つは、職場環境が合わないことです。

職業にかかわらず、職場の環境はとても重要な要素です。長時間を過ごす職場だからこそ、働きにくさを感じると大きなストレスになります。

例えば「施設が老朽化している」「設備投資が十分に行われていない」といった状況では、患者さんに十分な医療を提供できないことにより、医師としてのやりがいを失い、医局を離れるという決断に至るケースも少なくありません。

またオンコールや当直、サービス残業が多過ぎるといった理由で、体力的にも精神的にも限界を感じ、転職をする医師もいます。

家族との時間を確保したい

「家族との時間を確保したい」と考えて、ドロップアウトを選ぶ医師も多いです。

医局勤務ではオンコールや当直、残業が重なり、非常にハードな働き方を求められることがあります。その結果ワークライフバランスが崩れ、家族との時間を十分に取れないケースも多いです。

そのため、家族と過ごす時間を大切にし、プライベートを充実させるために医局を離れる医師もいます。特に出産や育児といったライフイベントをきっかけに、医局を去る決断を下すケースは少なくありません。

人間関係に問題がある

医局の人間関係に疲弊し、ドロップアウトを選ぶ医師もいます。

上司や同僚との関係がうまくいかないと、仕事に行くこと自体が大きなストレスになります。また医局特有の派閥争いに嫌気が差し、医局を離れる医師もいるでしょう。

医師の仕事はチームワークが欠かせないため、一緒に働く人と良い関係を築けなければ、業務にも支障が出てしまいます。その結果、より気持ち良く働ける環境を求めて転職を考える医師も多いです。

給与・待遇を改善したい

「給与や待遇を改善したい」と、ドロップアウトを決断する医師もいます。

医局で勤務する医師の給与は、市中病院で働く医師と比較すると低い傾向にあります。2012年に労働政策研究・研修機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、経営形態別の医師の年収の中で、最も低いのが私立大学病院を含む「学校法人」、二番目に低いのが国立大学病院を含む「国立」ということが分かりました。

激務を求められる一方で、それに見合う対価が得られないと感じ、医局を離れるケースは珍しくありません。実際に医局を離れたことで収入が増え、より納得感のある働き方ができるようになった医師も多くいます。

参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

スキルアップを目指したい

スキルアップし、医師としてさらなる成長を目指すためにドロップアウトを選ぶ医師もいます。

例えば「今の医局では専門医取得に必要な症例数が不足している」といった理由で、より多くの症例を経験できる医療機関へ転職するケースがあります。また将来の開業を視野に入れ、経営やマネジメントのノウハウを学べる環境を求めて、医局を離れる医師も少なくありません。

特に専門医取得や更新に必要な症例数が確保できない場合、医局に残るよりも転職して経験を積む決断をする医師は多いでしょう。

やりがいを持って働きたい

医師としてよりやりがいを感じられる働き方を求めて、医局を離れる医師もいます。

医局での勤務は診療や研究、学会準備に加えて、お茶出しやお中元・お歳暮の手配、カルテや資料の整理といった雑務に追われることも多いです。そうした環境の中で、本来の医療に向き合う時間が十分に取れず、仕事の面白みを感じられなくなってしまう医師もいます。

また「医療格差をなくしたい」「地域医療に貢献したい」といった使命感から、都市部を離れて新たな環境に飛び込む医師もいるでしょう。自分の理想の医師としてのあり方を実現するために、医局を離れる決断をする医師は少なくありません。

異動の指示があった

自分の意に沿わない異動の指示があったことをきっかけに、ドロップアウトを選択する医師も一定数います。

医局に所属すると、いわゆる「医局人事」によって異動の辞令が下されることがあります。医局人事は原則断ることができないので、突然過ぎる辞令や納得できない辞令を受けて、医局を離れるケースは多いです。

転科したい

転科を希望して医局を去る医師もいます。

医師として働く中で、他の診療科に強い興味を抱くことは珍しくありません。また将来のライフプランを見据えて、より自分に合った診療科へ移るケースもあります。

こうした転科を理由としたドロップアウトは、比較的周囲の理解を得やすく、退局の時期を引き延ばされにくい傾向にあるといわれています。

ドロップアウトの注意点

医師のドロップアウトは、以前のように必ずしもマイナスなイメージを持たれる時代ではなくなりました。しかし実際にドロップアウトを決断する際には、いくつか注意しておきたい点があります。

迷っている方は、これから紹介する2つの注意点も踏まえた上で、最終的な判断を下しましょう。

学位取得のチャンスを失う

医師がドロップアウトをすると、学位取得のチャンスを失うことになります。

大学院を卒業し、その際の研究が認められた医師は「医学博士号」という学位の取得が可能です。学位は教授にしか授与できないので、医学博士号を目指すには医局に在籍し続けなければなりません。そのため、医局を離れる=学位の取得を諦めることになります。

学位の取得は医局内でのキャリアを構築するためには重要ですが、一般的な医療機関で医師として活躍するのであれば、必須ではありません。この先どのようなキャリアを構築するかを考え、医学博士号が必要だと考える場合は、学位を取得するまでドロップアウトを避けた方が良いでしょう。

人間関係が希薄になる

ドロップアウトを検討する際に理解しておきたいのが、人とのつながりが減る可能性です。

医局に所属していれば、スキルや実績の高い医師と関わる機会が多くあります。また他の医療機関への派遣や学会への参加を通じて、人脈を広げるチャンスにも恵まれやすいです。

もちろん医局を離れたからといって、人脈作りが不可能になるわけではありません。ただしこれまでよりは、関係を築く機会が少なくなる可能性があります。これまで培ってきたつながりも、医局を去ることで次第に薄れてしまうかもしれません。

ドロップアウトを決断する前にできること

ドロップアウトを考えてはいるものの、まだ決断できずに迷っている方もいるでしょう。そんなときは、結論を出す前に取り組んでおきたいことがあります。

ここからは、ドロップアウトを決断する前にできる具体的な行動を紹介します。

なぜ辞めたいのかを言語化する

ドロップアウトを決断する前に、まずは「なぜ医局を辞めたいのか」を言語化してみましょう。

辞めたい理由は人それぞれですが、その理由によって今後のキャリアの方向性が見えてきます。例えば「家族との時間を大切にしたい」「ワークライフバランスを重視したい」という理由であれば、次の職場は柔軟な働き方ができる環境を探す必要があるでしょう。

辞めたい理由を明確にし、その上で次の職場に何を求めるのかを整理しておくことが、後悔のない選択につながります。

周りの人に相談する

ドロップアウトを迷っているときは、一人で抱え込まず周りの人に相談してみましょう。信頼できる人に話すことで、自分では気づけなかった視点や解決の糸口が見つかることがあります。特に職場環境や人間関係などの悩みは、一人で抱え込むと思い詰めてしまいがちです。客観的なアドバイスをもらうことで、新たな選択肢が見えてくるかもしれません。

周囲の意見も参考にしながら、自分にとってより良い選択肢を見つけていくことが大切です。

臨床研修を一時的に中断する

妊娠や出産、育児、けがや病気、留学、研究など、やむを得ない理由があれば、臨床研修の中断を認めてもらえる場合があります。ライフイベントや将来のキャリアを考えたときに「今は医局で働き続けるのが難しい」と感じるなら、一時的な中断を検討してみても良いでしょう。

中断した臨床研修は希望すれば再開できるため、必ずしも大きなリスクを伴うわけではありません。

転科を検討してみる

ドロップアウトを考えているのなら、転科を検討してみるのもおすすめです。

医局を離れたい理由によっては、転科によって状況が改善されることがあります。例えばより精神的・体力的にゆとりのある働き方や、専門性を生かした働き方をしたい場合、転科によってより良い環境に出合えるかもしれません。

前述した通り、転科が理由のドロップアウトなら引き留めにも遭いにくい傾向にあるので、スムーズに次のキャリアに移れる可能性もあります。

「ドロップアウト」の先にある新しいキャリアの選択肢

最後に、医師がドロップアウトした後の新たなキャリアの選択肢の例を、3つご紹介します。

民間病院

医局を辞めた後の代表的な選択肢の一つは、民間病院です。

一概にはいえませんが、一般的に医局から民間病院への転職は、ワークライフバランスを重視した働き方が実現しやすく給与や待遇が改善されやすい傾向にあります。これまで培った専門性を生かして働くこともできるので、やりがいをより感じられる環境を見つけられる可能性も高いです。

クリニック

医局を辞めて、クリニックで働くという選択もあります。

外来診療が中心となるクリニックは、当直や夜勤がなく、勤務時間も比較的自由が利くので、プライベートを重視した働き方が実現しやすいです。また特定の診療科に専念して働けるため、専門性も生かすことができます。大学病院と比べると規模も小さいので、一人ひとりの患者さんとしっかり向き合いながら医療を提供することができるでしょう。

 医療系企業

医局を離れて、医療系企業に転職する医師もいます。

医療機関からは離れることになりますが、これまで医師として培ってきた知識やスキルを生かせるため、新たなやりがいを見つけられる可能性も高いです。

民間企業での代表的な職場・職種には、以下のようなものがあります。

・産業医
・保険会社の社医・診療医
・製薬会社のメディカルドクター
・医療系企業のコンサルタント
・ヘルスケア関連企業

企業への転職は収入が下がる可能性もありますが、ワークライフバランスを重視した働き方が実現しやすいです。

また知識や経験を生かして自ら起業し、会社を立ち上げるという選択肢もあります。

キャリアに悩んだら、一人で抱え込まず相談を

医局で働き続けるか悩んだら、周囲の人に相談するのがおすすめです。周りに相談できる方がいない場合は、医師専門の転職サービス「マイナビDOCTOR」にご相談ください。医療業界に精通した専任のキャリアパートナーが、お一人おひとりの理想の働き方を実現できるアドバイスを行っています。

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記事の監修者

久高 将太(くだか しょうた)

久高 将太(くだか しょうた)

経歴
琉球大学医学部医学科卒業 / 琉球大学病院勤務 / 専門は内分泌代謝・糖尿病内科、総合内科、公衆衛生学・疫学/医学博士(博士号)/職位は助教

免許・資格
・内科専門医
・産業医
・内分泌代謝・糖尿病内科専門医


【監修医コメント】
一昔前の医師のキャリア形成が卒業大学の医局に入局するのが大半であったのに対し、現在では民間病院、保健・医療・福祉施設、企業など多様な働き方の選択肢が用意されています。どのような形で医師として社会に貢献したいかは人それぞれであり、それに即して働き方は自由であり、またライフイベントなどで途中で職場を変更するのも今後は普通になるでしょう。診療に加えて研究・教育にも興味があり、大学病院に勤務したが給与や待遇を理由に大学を離れざるを得ないことは避けるべき事態であり、早急に大学病院の給与・待遇の改善が求められています。

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