新型コロナ肺炎の早期発見で死亡者を減らせる~長尾和宏先生|スペシャルコラム

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新型コロナ肺炎の早期発見で死亡者を減らせる
~長尾和宏先生

都市圏のみならず全国各地で新型コロナウイルス感染の拡大が続いています。医療崩壊の危機にさらされるいま、とくに大都市圏において必要なのは「コロナ専門病院」ではないか、と長年在宅医療に携わる長尾和宏氏は指摘します。感染拡大を食い止めるために、医師、そして一般の人々がすべきこととは——Web医事新報よりお届けします。
※本記事は2020年4月5日時点の情報をもとに執筆されています。

本当のところ、医師の感染率は?

新型コロナウイルス感染者数の増加が続く4月5日現在、感染症の専門家や日本医師会はオーバーシュートの前に医療崩壊が起こると警告を発した。イタリアやスペイン、米国・ニューヨークの映像を見る限り妥当な判断だ。病院に勤務する医師や看護師の感染も相次いでいて、医療機関は緊迫している。

先日、某市で開業医の集まりがあった。そこに病院の医師も参加する、という知らせを聞いた重鎮が「病院の先生は困る」と呟いたという。それは「自分は感染者ではない」という思い込みから生じる偏見そのものだ。同様に世間の感染者への差別や偏見は、自分は感染者ではないという勝手な思い込みから生じている。所詮、感染は他人事なのだ。一方、都市部ではすでに発熱者の診療のたらい回しが起きている。しかし今、私は問いたい。「そう言う先生は本当に感染者ではないのですか?もし自分が感染者だったら、患者さんにウイルスを撒き散らしているかもしれないという自覚はあるのですか?」と。

血液検体でIgG抗体が迅速測定できる時期になれば日本医師会が音頭を取り、都市部の医師の一斉検査をすべきだ。医師のIgG抗体保有率はどれくらいか。ほぼゼロであれば医師は自分自身の感染を恐れなくてはいけない。しかし、もしも1割でもあれば、「自分は感染を広げるかもしれない」と思って診察する必要がある。緊急事態なので、ソーシャルディスタンスを保った診療形態に変えないといけない。

感染の有無ではなく肺炎の有無

日本は最もPCR検査数が少ない国として世界から注目されている。PCR検査の感度は低く労力も要するので、検査対象を制限してきた政府のやり方は間違っていないと考える。しかし今後、市中感染対策へと移行していくなかでPCR検査の意義も変容するはずだ。すなわち感染拡大のフェーズによって検査の意義は全く異なってくる。最終的に世界人口の6割が感染すると言われているので、国民の感染率が現在の1%以下から60%に至るまでの数年間に、最前線の医療機関は何をすべきか。それはきわめて単純である。新型コロナによる死亡者を減らす、その一点に尽きる。新型コロナの死亡病名は肺炎(死因第三位)だ。一次医療機関は新型コロナ肺炎の早期発見に特化すべきではないか。コロナ肺炎患者を厳重に経過観察し、もし重症化の兆しがあれば間髪入れずに人工呼吸器管理ができる感染症指定病院につなげることが役割だ。早晩、医療の役割は新型コロナ肺炎の早期発見・早期介入に変容してくる。これは、肺癌検診の戦略と類似している。

日本は世界で最もCTを保有している国として有名である。単純レントゲン撮影(図1)では新型コロナ肺炎を見落とす可能性が十分ある。新型コロナ肺炎の発見はCT検査が必須だ(図2・3、図1と同一患者)。つまりPCR検査よりもCT検査が優先される時期が来る。CTを有して動線の分離が可能な医療機関のピックアップが急がれる。

あったらいいな「コロナ専門病院」

既に大都市圏では発熱患者のたらい回しが起きている。進行が早いコロナ肺炎では1日の診断の遅れが予後を左右する。 

今、大都市圏において最も必要とされているのは「コロナ専門病院」ではないか。昔の結核病院のようにコロナしか扱わない病院があれば市民も医療者もどれだけ助かるか。そこでは抗原・抗体検査やCT検査などのコロナに特化した診療しか行わない。その結果は母子手帳のような「コロナ手帳」に記入し、それを持参して通常の医療機関を受診する。このような誰もが安心できる医療環境を行政が確立してはどうか。たとえば閉鎖した(しそうな)病院を丸ごと自治体が期間限定で借り上げ、コロナ専門医療機関に転換してはどうだろう。小児コロナ部門では児童のコロナ検診を行う。超高齢者部門では重症肺炎はリビングウイルを核とした人生会議を経ての平穏死も容認する。どこかの県で成功例をつくれば全国に広がるのでは、と夢想している。

距離を空けての「歩行」を啓発

自粛疲れや自粛うつがすでに表面化している。しかし家に閉じこもるとロコモティブシンドロームやフレイル、認知機能低下は必発だ。ソーシャルディスタンスを保ちながらの屋外歩行は何の問題もなく、ストレス解消の観点からもお勧めである。私はこれまで「歩行本」を4冊書いてきた。そして今回、第5弾として『歩くだけでウイルス感染に勝てる!』(山と渓谷社)を4月11日に緊急出版する(図4)。

コロナ時代において歩くことには二つの意味がある。一つ目は、ウイルス感染の予防である。ウイルスは紫外線に弱い。歩行で免疫能を高めておくことが感染予防になる。二つ目は、コロナに感染しても死なないためには、高い免疫力が「基礎体力」として役立つ。特効薬やワクチン開発の目途がつかない現在、コロナ感染で死なないためには免疫力しかない。今、医師が患者や市民に歩行習慣を説くことは大きな意味があると思う。

出典:Web医事新報 連載「町医者で行こう!!」第108回:コロナ肺炎の早期発見で死亡者を減らせる
※本記事は株式会社日本医事新報社の提供により掲載しています。

PROFILE

1984年東京医大卒。95年、尼崎市に複数医師による年中無休の外来・在宅ミックス型診療所「長尾クリニック」を開業。近著に『小説「安楽死特区」』(ブックマン社)など。

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