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臨床研修は中断できる?「休止」との違いや中断前後で考えるべきことを解説

医師として初めて医療現場で経験を積む機会が「臨床研修」です。原則、臨床研修を修了していなければ診療業務には就けず、臨床医を目指すなら研修の履修は必須です。

しかし、いざ臨床研修に挑んだものの、業務内容や人間関係などが要因となって「臨床研修を続けていく自信がない」と考える研修医もいるかもしれません。また、「中断した後、どうなるのだろう」と、キャリアに不安を抱えることもあるでしょう。

本記事では、臨床研修の「中断」と「休止」の違いをはじめ、研修中断の割合とその理由や、中断の前後でやるべきことについて解説します。

こんな方におすすめの記事です!

  • 臨床研修がなぜ必要なのか、その目的や意義を整理したい
  • 臨床研修を中断するケースや理由を具体的に知りたい
  • 中断後のキャリア選択や再開方法について考えたい

目次

臨床研修は、なぜ必要なのか?

臨床研修とは、将来の専門分野にかかわらず、基本的な診療能力を身につけるために行われる2年間の研修です。法的に義務づけられた必須の研修で、未履修では臨床医として働くことができません。

研修では、必修診療科とされる内科や救急、外科などの7診療科をローテーションで回り、実際に患者さんの診療を担当しながら実地での経験を積んでいきます。指導医やメンターによるサポートを受けながら、医師としての姿勢や在り方を学ぶ期間でもあり、臨床医として働くためのスキル全般を身につける機会となります。将来のキャリアを考えるうえでも必要な期間であり、医師として将来的に進みたい専門領域や希望する働き方を検討するための土台となります。

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臨床研修を中断する割合は?

厚生労働省の資料によると、臨床研修を中断する研修医の割合は、2006年~2009年の平均は「1.3%」、2015年~2017年7月までの平均は「1.2%」でした。やや古いデータではあり、あくまで参考ではありますが、全体の1.2~1.3%の研修医は、臨床研修を中断していたと報告されています。

参照:臨床研修の中断・未修了について|厚生労働省

臨床研修における「中断」と「休止」の違い

臨床研修を離脱する場合の考え方として、「中断」、「休止」の2つの選択肢があります。

●中断……90日以上の期間で臨床研修を止める場合
●休止……90日以内に復帰できる場合

ここで指す90日とは、研修先で実際に研修を行う日数(いわゆる「稼働日」)が基準となり、医療機関の休日は含まれません。例えば、月の研修日数が20日なら、少なくとも4.5ヶ月以上の期間で研修を休むと「中断」として扱われます。

また、90日以内に復帰できる場合(「休止」の場合)、休んだ日数分の研修がそのまま延長されることはありません。例えば、体調不良で研修を5日間休んだとしても、5日分の研修は延長されません。

厚生労働省の通知では、休止日数の上限である「90日を超えた日数分以上の日数」で、なおかつ、研修目標を達成できるような内容で、追加の研修を行うこととされています。

なお、臨床研修の履修そのものを中止し、復帰しない意向であっても、「中断」、「未修了」の扱いとなり、長期間のブランクがあっても、希望に応じて再開が可能です。

参照:臨床研修を長期にわたり休止又は中止する場合の取り扱いについて|厚生労働省

臨床研修を中断する理由

厚生労働省の資料(2015年~2017年)によると、臨床研修の中断¬理由は、以下のように報告されています。

参照:臨床研修の中断・未修了について|厚生労働省

その他の理由を除き、病気療養(37.4%)が最も多く、次いで、妊娠・出産・育児、研修内容への不満や研修体制の不備、家族等の介護などが挙げられています。それぞれ中断に至った理由の背景について解説します。

病気療養

病気療養のために研修を中断するケースとして、同資料では、「メンタルヘルス上の課題が多い」と補足されています。医療に向き合う緊張感や院内の人間関係、慣れない当直・オンコール対応、長時間労働など、研修医はストレスを抱えやすい環境にあります。そうしたストレスが続いたことが影響して病気を発症し、療養を理由に研修の中断に至ったケースがあると考えられます。

ライフイベント(妊娠・出産・育児・介護)

産休・育休制度により、産前には6週間、産後は6~8週間の休業が取得できます。最短で復帰する場合には平日換算で約70日間ですが、妊娠・出産による体調のケアも必要であり、90日を超える可能性が高いでしょう。場合によっては、数ヶ月~1年以上のブランクが生じることも考えられます。また、親の介護などの事情が重なり、臨床研修を中断せざるを得ないケースもあります。

研修内容・研修先医療機関への不満など

研修内容や研修先の体制、指導医などに対する不満から、中断に至るケースもあります。「指導医との相性が悪い」「研修内容に納得できない」といった研修に関連する不満は、自己申告により変更できる場合もあります。しかし、状況が整わず、結果的に研修を続けるのが困難になってしまうのが中断の理由と考えられます。

人間関係・労働環境など

医業に取り組むうえで、看護師をはじめとしたコメディカルとのコミュニケーションは欠かせません。しかし、周囲との関係がうまく構築できずにストレスになることがあります。
また、患者さんやその家族との意思疎通が難しく、悩んでしまうこともあるでしょう。経験の浅い研修医にとって、患者さんとの関わりは学びの連続です。そうした人間関係の構築が心身への負担となり、研修の中断を選択するケースがあります。

臨床研修を中断する前にやること・考えたいこと

臨床研修を終えなければ、原則、臨床医としての仕事はできません。そのため、研修の中断は、その後のキャリアに大きく影響します。病気療養や妊娠・出産など、避けられない中断もありますが、その他の理由の場合、中断することが必ずしも良い選択になるとは限りません。中断を決断する前に、やるべきことや考えておきたいことについてまとめました。

中断を希望する要因を明確にする

なぜ中断したいのか、その理由を明確にしておきましょう。「研修先・指導医の対応が悪い」「コメディカルや患者さんとのコミュニケーションがうまくできない」など、不満に感じることや問題点を掘り下げて考える必要があります。悩みや課題を明確にしたうえで、解決策を検討し、本当に中断が最善なのかを考えましょう。

信頼できる人に相談をする

不満や悩みがあるのであれば、1人で抱え込まずに、同期や同僚、先輩、友人など、信頼できる人に相談してみましょう。現場の指導医や研修先の管理者に相談できる機会があれば、正直な思いを伝えることで、解決方法が見えてくるかもしれません。場合によっては、指導体制や環境を調整してもらえる可能性もあります。

厚生局の相談窓口に問い合わせる

厚生労働省のホームページには、研修医の相談窓口として、各地方厚生局相談窓口が紹介されています。身近な人への相談が難しい場合には、相談先として活用できます。

職場環境や人間関係の改善が必要な場合は、実際の対応・調整は研修先の管理者に依存するケースがほとんどであるため、解決に至らないケースも考えられますが、相談先の選択肢として覚えておきましょう。

参照:臨床研修を長期にわたり休止又は中止する場合の取り扱いについて|厚生労働省

中断後のキャリアを考える

臨床研修を中断した場合、その後のキャリアや収入の確保、今後の就職先など、将来について考えなくてはいけません。臨床医として仕事を続けるには、研修修了が必須であり、再開を考えていないのであれば、医師免許を活用できる臨床以外の道を探るか、まったく異なる業界への就職を検討することになります。

「自身がこの先どのようなキャリアを歩んでいきたいのか」をしっかりと考えたうえで、中断するかどうかを決断しましょう。

臨床研修を中断する場合の手順

臨床研修を中断すると決めたら、まずは研修先にその旨を申告します。中断を認められたら、研修先の指示に従って手続きを進めます

中断決定後、研修先から交付される「臨床研修中断証明書」は、今後、研修を再開する際に必要な書類です。研修再開時に証明書を提出できない場合、改めて2年間の研修を受けることになるため、必ず受け取って保管しておきましょう。

臨床研修を中断した後にやること

臨床研修を一度中断しても、復帰・再開が可能です。厚生労働省の資料(2015年~2017年)によると、臨床研修を中断した研修医のうち、約8割は研修を再開していると報告されています。では、研修を中断した後、今後に向けてどのようなことをやるべきでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

再開を希望する場合、新たな研修先を探す

上述した資料によると、「研修内容の不満」を理由に中断した人が研修を再開した割合は91.7%でした。「今の研修先が自分と合わなかった」という理由で中断し、再開を考えるのであれば、別の研修先を選ぶことから始めましょう。

研修中断者の受け入れを募集している医療機関を探す場合、卒業した大学や各自治体にある医師会に相談するほか、医師専門の求人サイトや各医療機関のホームページなどから情報収集する方法があります。中断した研修先からは、「臨床研修中断証明書」などの必要な書類を受け取っておくと、再開もスムーズです。

なお、臨床研修に「中断から再開までの期限」はありません。たとえ、数年のブランクがあっても、再開の意思があれば復帰できます。再出発を目指す研究医を受け入れる仕組みが整っているため、前向きに検討してみましょう。臨床研修の再開を考える際には、できるだけスムーズに復帰するためにも、可能な範囲で医学知識をアップデートし、医師仲間とつながりを保つといった準備をしておくとよいでしょう。

療養に専念する

病気療養が中断理由であれば、まずは十分に療養し、体調を回復させることを最優先に考えましょう。無理に復帰を急ぐと、かえって体調を崩す可能性もあります。主治医と相談しながら慎重に進めましょう。

医師以外のキャリアを考える

臨床医としての働き方そのものが向いていないと感じているのであれば、柔軟な視点で新たなキャリアを考えてみましょう。

医師免許を活用するなら、大学や研究機関での研究開発や、製薬会社で勤務するメディカルドクター、医療系企業の従業員などの選択肢が挙げられます。

ただし、医療分野での医師の求人には、「臨床研修の履修済み」「◯年以上の臨床経験を有する」といった条件が提示されている場合も少なくありません。幅広い業界にチャレンジする前向きな姿勢が、将来の選択肢を広げてくれます。

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臨床研修の中断は、その後のキャリアを考えることが大切

病気の療養や家庭の事情など、臨床研修を続けられないときは「中断」という選択肢もあります。90日以上休むと「中断」となりますが、希望により、いつでも再開できます。ただし、臨床研修が未修了のままでは臨床医として働くことができません。自身が納得できる働き方を選ぶためにも、「なぜ中断したいのか」「その後、どのようなキャリアを築きたいのか」を整理しておきましょう。人生を長い目で見て、自分にとって納得のいく選択をすることが大切です。

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[医師のキャリアにはどんな選択肢がある?]
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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)

小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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