医学教育において、臨床実習の充実は欠かせないものです。「臨床教授」は、そうした未来の医療を担う医学生や研修医に対する経験豊富な指導者として関わります。では、実際に、どのような役割を担うのでしょうか。今回は、臨床教授の概要とともに、その役割や期待されること、やりがいについて解説します。
- 医学生や研修医の指導を行いながら臨床医としても活躍したい方。
- 臨床実習や初期研修医の教育に貢献したいと考えている方。
- 臨床教授になるための条件や準備を具体的に知りたい方。
目次
臨床教授とは

臨床教授とは、臨床研修を指導する外部の医師のことで、学生や研修医が必要な経験・実績を十分に積むことができるように導く存在です。
臨床教授は文部科学省が掲げる制度の一つで、各医療系大学によってその称号が与えられます。大学によって規定が異なるものの、おおまかには「優秀な医師の育成のために貢献できる、医療の現場に練達した優れた医療人」「研修医が医師として必要な経験を積んだり、医学への学びを深めたりするための指導者」といえます。
1-1.臨床教授の位置付け
臨床教授は、自身が臨床医師として活躍すると同時に、大学医学部や大学病院などにおいて指導医として育成に関わる医師といえます。臨床教授について、文部科学省は以下のように説明しています。
参照:「臨床教授(臨床助教授・講師を含む。)」(仮称)の称号の付与について(通知)|文部科学省
1-2.臨床教授の給与・報酬は?
臨床教授は、大学等の正規教員とは異なり、給与としての支払いはありません。ただし、所属する教育機関や医療機関によって、報酬や手当がつくと考えられます。
臨床教授と「教授」「客員教授」の違い

上述したとおり、臨床教授とは、高い実績を持つ「外部の医師」で、主に臨床現場において医学生や研修医の指導を行う役割を担うと同時に、自身も臨床医として活躍します。
一方、教授とは、教育機関や研究機関で指導的な立場にある、大学の正規教員のことです。文部科学省が法的に定めた職務称号で、大学において最高職階にあたります。また、「客員教授」は主に、大学などの教育・研究機関に「ゲスト(客員)」として招かれる非正規の教員を指します。
臨床教授の役割や期待されること
臨床教授は、主に大学医学部の実習協力機関や大学付属病院において、学生の臨床実習に携わるほか、初期研修医の指導医として、臨床医学教育に必要な職務を担う役割があります。臨床実習時の指導は、医学部と実習等の協力機関との間で作成された臨床協力カリキュラムや卒後臨床研修プログラム、選択臨床配属実習プログラムなどに従って実施します。
医療人の育成に向けて、臨床教育の充実は不可欠であり、大学教員とともに、人材育成に協力する経験豊富な医師が求められています。自身が臨床医師として活躍するだけでなく、これまでの経験や知見を踏まえて、学生や研修医に指導する臨床教授は、今後の医療の発展に大きく貢献する存在として期待されています。
臨床教授のやりがい

臨床教授は、これからの医療を担う医学生や研修医の指導に直接関わります。自身の経験や知見を後継していくという点で、やりがいを感じられるのではないでしょうか。また、専門的な知識を持つ医師を育てる働きは、地域医療の発展にも貢献します。
臨床教授になるには
文部科学省が発表した「『臨床教授(臨床助教授・講師を含む。)』(仮称)の称号の付与について(通知)」には、臨床教授になるための具体的な条件や基準などは記載されていません。しかし、各大学の責任において、選考手続きや基準、規定などを検討する旨が記載されており、場合によっては、必要な経験年数や専門医の取得などが求められます。臨床教授になるには、それぞれ就労を希望する大学の規定にある臨床経験、指導経験、研究実績の構築などに備える必要があります。
参考として、いくつかの例を見てみましょう。
5-1.千葉大学医学部における臨床教授等の資格
千葉大学が公開する「千葉大学医学部臨床教授等の称号付与に関する規程」第6条-1によると、「臨床教授等の資格」は「臨床教授は、臨床経験15年以上の者であって、実習等協力機関の院長もしくは診療科の責任者またはこれらに相当するもの」とされています。
5-2.佐賀大学医学部臨床教授等の称号付与に関する選考基準
佐賀大学では、臨床教授等の称号付与規定第5条に定められた選考基準として「佐賀大学医学部の卒前・卒後教育に協力的であり熱意を有する者」と提示しており、意欲的に役割を担うことのできる人材である必要性が明記されています。

また、「博士の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有する者」「専攻分野の学会において専門医の資格を有する者」「インパクト・ファクターのある国際的な学術雑誌への筆頭ないし共著論文があり、かつ、過去5年以内に筆頭ないし共著論文(商業誌を含む)の業績があること」など、専攻分野において高い専門性を修得していることも選考の基準になっています。その他、「過去5年間に学生または研修医への指導実績のある者」など、指導実績についても基準が設定されています。
いずれのケースにおいても、基本的には、大学や実習機関等から指名を受けるか、卒業大学からの声かけなどによって、臨床教授として称号が付与されるケースが考えられます。自身からの働きかけを行う場合には、各大学の称号付与規定を把握した上で、アピールすることになるでしょう。
臨床教授を目指すなら、キャリアパスを明確に
将来、臨床教授を目指したい場合は、キャリアパスを明確に立て、必要な経験や研究実績を効果的に積んでいく必要があるでしょう。また、積極的に人材育成に協力する姿勢も欠かせません。キャリアパスの立て方や進め方が分からないときには、医師専門のエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
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