「麻酔科」のリアル 現役の専門医に直撃!|新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

「麻酔科」のリアル 現役の専門医に直撃!

この科の医師は――女子力そこそこ高め・シャキシャキ・可愛さを希釈した『ドクターX』の城之内博美で、希釈した『医龍』の荒瀬門次⁉

イラスト:イケウチリリー
取材・文:マイナビRESIDENT編集部

このコーナーは元々、医学生と初期研修医に将来のことを考える材料にしてもらおうと、『マイナビRESIDENT』用に作りました。2018年に開始した新専門医制度で基本領域になった19診療科の専門医に、その科の魅力やイマイチなところ、どんな人が向いているのか、「あるある」、一日の仕事の流れ、典型的な医師像などを「ぶっちゃけ」で語ってもらった記事です。こういった他科の詳細な情報は、転科や診療領域の追加を考えている医師にとっても有益だと考え、『マイナビDOCTOR』にも掲載することにしました。
麻酔科は、専門医の川久保弥知(かわくぼ・みとも)さんに聞きました。

インタビューを受けていただいた医師

久保弥知(かわくぼ・みとも)医師 = 1987年生まれ

■所属
呉共済病院麻酔科(広島県、397床)
■主な資格
麻酔科専門医
■卒業大学
高知大学

* 医師の所属、主な資格は取材当時(2023年10~12月)

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インタビュー内容

Q1.なぜ麻酔科を専門に選んだのですか?

大学4年生ぐらいから、ぼんやりとではありますが、Doctor’s doctor(医師たちのための医師)と呼ばれる放射線科、病理、麻酔科に関心を持っていました。そのような中で、高知県内のある基幹病院に実習に行ったんです。広い範囲をカバーする、その地区の住民の命を守る「最後の砦(とりで)」の病院です。そこで女性の麻酔科医と出会いました。麻酔をほぼ一人で行い、ICUにいる重症患者もしっかり診た上で主治医にフィードバックして全身管理に生かしていました。外科医たちからもすごく尊敬されているのが分かりました。ものすごく格好良かったんですよね。その姿が。

医師国家試験では、麻酔科単独の出題範囲は少ないんです。でもその医師と話したら、各科についての深い知識を持っていました。そして、麻酔科というのは、生理学や薬理学といったものを全体的に見ながら患者を管理していくのだと教えてくれました。これが「体を診る」ということなのかと、感銘を受けました。

Q2.麻酔科の良いところを教えてください

理学・薬理学的にこうなるだろうという予想をしながら管理をしていくのは、すごく楽しいことです。

それから、「引き継ぎ」がしやすいという良さもあります。手術中も、実際に執刀している外科医に比べたら交代もしやすいですし。内科だったら、患者を引き継ぐときに、その人の長い経過を全て知る必要があるので、結構大変だと思います。

麻酔科は基本的に短時間勝負なので、メリハリのある働き方ができます。ただ、これは人が足りている場合です。全科の手術日程に合わせなくてはならないので、人が足りていない病院は結構厳しい勤務になると思います。

Q3.麻酔科のイマイチなところはありますか?

まず、患者と深く関わることがないところでしょうか。直接患者と関わるのは、患者のコンディションを整えて麻酔法を考える「術前診察」と、手術後の状態を確認する「術後診察」の時。それから、麻酔導入時と覚醒時です。

また、麻酔科の目標は、「何も起こらずに手術を終わらせること」です。いろいろと考えて麻酔管理をしているけど、「よくやったね」と言われることはないです。術前にビシッと立てた麻酔計画の通りにうまくいって、満足感があっても、「うん。今日も良い仕事をした」と一人で汗を拭うだけです(笑)。

Q4.専門医としての技術や知識を磨くためにやっていることはありますか?

X(旧Twitter)でいろいろな麻酔科医をフォローし、情報交換をしています。Xで他施設の麻酔科医の話を聞くのはすごく勉強になるんですよ。所属している施設の「常識」は出来上がるのですが、全国的にみるとどうなんだろう? というのがありますから。Xで情報収集することによって、研修医に「うちではこうしているけど、他はこういうのがメジャーみたいだよ」という教え方ができるようになりました。

それに最近もXで便利なことを教えてもらいました。医学、生命科学に関する世界中の論文を探せる検索エンジン「PubMed」と対話型の人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」を組み合わせて麻酔科系の論文の要約を読む方法です。それを使って新しい情報を吸収しています。

あとは日本麻酔科学会のeラーニングで勉強したり、学会の機関誌を読んだりはしています。

Q5.麻酔科は何年ぐらいで、自信を持って診療できるようになれますか?

周りを見ていると、早い人は専門医が取得できる4年目(卒後6年目)ぐらいでしょうか。私は6年目(卒後8年目)ぐらいで「任せとけ!」となった気がします。

現場で1人で麻酔を担当することになるのは、専攻医になって半年から1年の間だと思います。全ての手術室の麻酔を監視するスーパーバイザーという立場の人がいて、何かあればバックアップしてくれます。そのスーパーバイザーを任せられるのは専門医になる前後です。

麻酔の難しさは、手術の時間の長さや大きさで決まるものではありません。例えば、20~30分以内に完了しなくてはならないグレードAカイザー(超緊急帝王切開)は短くて手術自体は大きいものではありませんが、麻酔としては難しい部類に入ると思います。新生児の麻酔とか移植手術なども難しい麻酔になります。こういったものを1人でできるようになったら一人前と言えるでしょうね。それがだいたい専門医を取得した後ぐらい、という感覚です。

Q6.麻酔科に向いている人を教えてください

言うまでもありませんが、生理学や麻酔科学が好きであるというのは大前提です。それから、麻酔科の仕事は裏方なので、自分が目立ちたいという人は向いていません。「縁の下の力持ち」であることに満足できないと厳しいですね。

また、患者が急変した時に素早く反応しなくてはなりません。そういう予想と違ったことが起きても冷静に対応できる素質は必要です。

これは他の麻酔科医から共感を得られるかどうか分かりませんが、個人的にはゲームが好きで得意な人も向いていると思っています。カードゲームをやっていると、「麻酔と似ている」と思うことがあるんですよ。そこで起こる出来事に柔軟に対応しながら、勝つために一手一手どうするかを考えていく。私もカードゲームは好きです。

病院勤務の一日の流れ

Q7.麻酔科は開業に向いていますか?

痛みの治療を行う「ペインクリニック」として開業することはできます。ただ、ペインには独特の知識や技術がありますから、麻酔科専門医だからといってみんなができるわけではないんです。だから、ペインについてもちゃんと教育できる環境が整っている施設に勤めていないと難しいです。そう考えると、麻酔科は開業には向いていません。内科医としてクリニックを開いて「地域のお医者さん」みたいになるというのは理論上は可能ですが、まずあり得ないと思いますし。

Q8.もし麻酔科がなかったら、何科を選びますか?

救急科です。麻酔科と似ているんですよ。短時間で状態を診断する、病状を把握する、徐々に全身状態を落ち着けていく。一緒なんです。

Q9.他科の医師から一目置かれるのは何科ですか?

循環器内科と心臓血管外科でしょうか。

まず循環器内科は、専門的な知識をすごく持っているからだと思うんです。麻酔科は全身を診ますが、メインは呼吸・循環管理です。循環については我々も本職だし知識はあるつもりですが、循環器内科は一段上を行っているなと日々感じます。

そして心臓血管外科は、循環器内科と同様に専門である循環に深い知見があります。さらに外科という花形の診療科の中でも最もハードに仕事をしているからです。

Q10.麻酔科の「あるある」を教えてください

指導医ごとに麻酔方法や指導内容が異なります。目標は「何も起こらないこと」なので、これが一番いいというエビデンスが作りにくいんですよ。明らかに「これがいい」というのはあるのですが、それがはっきりしていないことは本人の裁量という部分があります。

また、手術中でも交代できるので、昼食が保障されているんです。なので、昼食に対する思いは強いです(笑)。ただ、もちろん、そんなに長い時間は交代の人に任せて外すことはできませんから、長くて30分、10~20分で食べ終えるようにするため、みんな「早食い」になります。それが分かっているので、昼休憩から戻ってくるのが少しでも遅いと、麻酔を交代してくれた人に嫌がられます。麻酔中、昼食時間になっても誰も交代に来ないなんてことがあったら、恨まれちゃいます。

Q11.典型的な麻酔科医とはどんな人ですか?

ドライな仕事人。麻酔科医が集まって仕事をすることはないので、仲間内で密に楽しげに関わることはありません。とはいっても、外科医や看護師たちと常にコミュニケーションを取っており、いわゆる「陰キャ」ではないんです。自分の世界観を持っているので、他科の医師からは「変人」と思われている節もある……と思います。

男性のイメージはくせを弱めた(フジテレビ系ドラマ)『医龍』の麻酔科医・荒瀬門次。女性は“強い”外科医と対等に渡り合うため、シャキシャキしています。女子力もそこそこ高め。イメージはかわいさを薄めた(テレビ朝日系ドラマ)『ドクターX』の麻酔科医・城之内博美でしょうか。

医学生・初期研修医へのメッセージ

学生の時に無理に専門を決める必要はないと思います。医学生から初期研修の間で志望科が変わることはよくあるんですよ。「この科に行きたい」ということで初期研修先を選んでも、初期研修の間でその科を回れるのは数カ月程度です。なので、いろいろな科を体験してみるという視点で研修先を選ぶのもいいかもしれないですよ。

麻酔科で培う知識や技術は、内科や外科や救急科でも役立ちます。だから、進路に悩んでいる人は「腰掛け」で麻酔科を選ぶのもありかもしれません。最初に麻酔科を選んで専攻医になったけど、総合診療科に移った人もいるし、救急科に行った人もいます。循環器内科と麻酔科で迷って、腰掛けで麻酔科に進んで、どっぷりハマり込んだ人もいます(笑)。

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