「リハビリテーション科」のリアル 現役の専門医に直撃!|新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

「リハビリテーション科」のリアル 現役の専門医に直撃!

この科の医師は――歩き方気になる・勝手にリハビリテーション診断・職業病・おせっかい⁉

イラスト:イケウチリリー
取材・文:マイナビRESIDENT編集部

このコーナーは元々、医学生と初期研修医に将来のことを考える材料にしてもらおうと、『マイナビRESIDENT』用に作りました。2018年に開始した新専門医制度で基本領域になった19診療科の専門医に、その科の魅力やイマイチなところ、どんな人が向いているのか、「あるある」、一日の仕事の流れ、典型的な医師像などを「ぶっちゃけ」で語ってもらった記事です。こういった他科の詳細な情報は、転科や診療領域の追加を考えている医師にとっても有益だと考え、『マイナビDOCTOR』にも掲載することにしました。
リハビリテーション科は、専門医の宮越浩一(みやこし・こういち)さんに聞きました。

インタビューを受けていただいた医師

越浩一(みやこし・こういち)医師 = 1968年生まれ

■所属
亀田総合病院(千葉県、917床)リハビリテーション科主任部長
■主な資格
リハビリテーション科専門医・指導医、整形外科専門医、日本臨床栄養代謝学会認定医、日本病院総合診療医学会認定医
■卒業大学
岡山大学

* 医師の所属、主な資格は取材当時(2023年10~12月)

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インタビュー内容

Q1.なぜリハビリテーション科を専門に選んだのですか?

「障害」を抱える患者に対して、全人的医療を行いたいと思ったんです。リハビリテーション科医の仕事は簡単にいうと、患者の体に起きている障害からリハビリを通した治療計画を作り、実践し、より良い状態で社会復帰してもらうことです。私は整形外科医として7年間働いてから転科しました。骨や関節などの局所を診るのではなくもっと広い範囲で、というより患者「全体」を診たいと思ったからです。患者は病気が治ったとしても、障害が残ることがあります。例えば、脳卒中で手足が動かなくなるとか、脊髄の病気で両下肢が動かなくなるなどです。患者としては、病気が治ったとしても障害が残っていたら満足できませんよね。病気だけでなく、障害も治していくことにやりがいを感じました。

リハビリテーション科は整形外科、脳神経外科、神経内科から移る医師も多いです。昔は初期研修の後すぐにリハビリテーション科に進む医師は比較的少なかったと思います。それらの診療科で診る疾患は、大なり小なり障害が残ることが多いので、診療の延長線上にリハビリがあるんですよね。ただ、新専門医制度になってからは、最初の専攻にリハビテーション科を選ぶ人も増えています。

Q2.リハビリテーション科の良いところを教えてください

「障害」であれば全て、リハビリテーション科の領域です。だから、さまざまな疾患を持つ患者を診られるので、日々新しいことに挑戦できます。そのためにも勉強し続けなくてはならないので、飽きないですよ。

また、疾患の診断、治療をした診療科の医師よりも患者の近くで社会復帰の手伝いができます。患者や家族は、疾患については診断した医師から説明を受けて治療を進めているわけですが、障害については理解が不十分で気持ちが追い付かないまま、リハビリテーション科に来ることもあります。そういう患者や家族の気持ちに寄り添いつつ、分かりやすいように説明して、社会復帰に向けて何をしていけばいいのかを伝えるのも我々の仕事です。「ああ、そういうことなんですね。納得できました」と言ってもらえると、力になれている実感があります。

Q3.リハビリテーション科のイマイチなところはありますか?

診療科の知名度が低いことです。機械を使って検査をしたり、手術して治療したりするわけでもないので、医師から見ても、患者から見ても、リハビリテーション科医が何をしているのかがイメージしづらいと思います。我々は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったセラピストとチームで働くのが特徴です。彼らと医師の仕事は何が違うのかと、疑問に感じている人も多いでしょう。簡単にいうと、患者の障害の原因や経過を基に、治療計画を立てるのが医師です。それに加え、注射をしたり、身体機能の補助を目的とする装具や、内服薬の処方をしたりします。それには、あらゆる疾患に対応する膨大な医学的知識が必要です。対して、主な治療である「訓練」を担当するのがセラピストで、非常に重要な役割を担っています。経験年数の浅いセラピストだと、疾患の知識や経験が十分でないこともあるので、治療の質を落とさないように教育するのも我々の仕事です。

Q4.専門医としての技術や知識を磨くためにやっていることはありますか?

診療科の枠を越えた知識のアップデートです。あらゆる疾患の治療方法や治療成績をキャッチアップしておかないと、疾患の治癒や自然経過の予測ができないので、リハビリ治療の計画が立てられません。急性期の患者は合併症のリスクもあり、その管理も難しくなります。さまざまな疾患について、最新診療のガイドラインはできるだけ目を通すことにしています。これまでリハビリテーション医学会で、複数のガイドラインの作成に携わってきたので、読むことが習慣になっているんでしょうね。

Q5.リハビリテーション科は何年ぐらいで、自信を持って診療できるようになれますか?

専門医を取得する卒後6、7年目には、ある程度の自信が持てると思います。うちの病院にいる8年目の若手医師にも一通りのことを任せています。仕事上、セラピストから相談や質問をされることが多いです。「この患者さんの予後はどうでしょう」とか「合併症が心配なので、こういう訓練をしてはいけないでしょうか」という専門職の彼らでも判断に迷うことを聞かれるので、それに滞りなく答えられたら専門医取得レベル、一人前かなと思います。

Q6.リハビリテーション科に向いている人を教えてください

興味を持って新しいことにチャレンジし続けられる人、根性と元気のある人です。あらゆる患者に対応しなくてはいけないので、求められる知識の幅は広く、量も多いです。アップデートし続けないと、リハビリテーション科医として置いていかれます。セラピストからの相談に適切に答えられなければ「この先生は頼りないな」と思われ、仕事がやりづらくなるでしょう。

そして、リハビリテーション科はチーム医療なので、チームプレーが好きな人や得意な人ですかね。他科と比べて、患者やその家族との距離が近く、コミュニケーションが大事です。障害との向き合い方を教えるのも仕事です。患者に寄り添い、社会復帰に向けて前向きになってもらえるといいですよね。

病院勤務の一日の流れ

Q7.リハビリテーション科専門医を持っていることは開業に有利ですか?

疾患の守備範囲が広いので、開業しやすいと思います。ただ、障害を診られるということをどう患者にアピールするかが課題です。訪問診療を行っているクリニックはうまくいっているところが多い気がしますね。訪問診療では、セラピストを伴う訪問リハビリテーションもかなりニーズがあります。そうなった場合、セラピストのリクルートが必要です。勉強意欲のある人は、リハビテーション科専門医を持っている医師と一緒に働きたいと思うはず。意欲の高い人材が集まってくるという観点でも、開業しやすいと思いますよ。

Q8.もしリハビリテーション科がなかったら、何科を選びますか?

総合診療科ですかね。昨年、日本病院総合診療医学会認定医を取得しました。全人的医療を行うためには、障害だけでなく疾患の知識も身に付けなくてはいけないと思い、勉強したんです。疾患を治すだけでは患者に満足してもらえません。臓器別ではなく、患者の全体像を把握して治療のサポートをするというのが、私のやりたい仕事です。

Q9.他科の医師から一目置かれるのは何科ですか?

昼夜を問わず、24時間365日働いている救急科です。彼らのおかげで、我々はリハビリテーションの仕事ができています。回復期リハビリテーション病棟で急変患者が出た場合、僕らでは診療できないので、救急医によく助けてもらうんです。個人的に尊敬していますし、一目置かれる診療科の一つに挙がるのではないかなと思います。

Q10.リハビリテーション科の「あるある」を教えてください

街中で特徴のある歩き方をする人や、歩きづらそうにしている人を見ると「あ、この人ここが悪いからああいう歩き方なんだ」「こうしてあげたらもっと良くなるのに」と心の中で、勝手にリハビリテーション診断しちゃうんですよ。おせっかい、職業病ですね(笑い)。一方で、車いすや装具を利用している人を見かけると、勝手にその人たちの背景を想像して「社会復帰している。立派だな」と尊敬の目を向けてしまいます。

Q11.典型的なリハビリテーション科医とはどんな人ですか?

世話好きな人が多いかもしれません。先頭に立つような目立ちたがり屋ではなく、縁の下の力持ちみたいなタイプです。ドラマや映画で例えると、もちろん主役ではなく、さらに脇役でもなくて、「大道具さん」とか「照明さん」とかの完全に裏方のイメージです。

医学生・初期研修医へのメッセージ

リハビリテーション科がしっかりしている病院は、主たる診療科が安心して業務に専念でき、病院機能全体が向上します。そういった意味では、病院の「インフラ」を整備するやりがいのある仕事なんじゃないかと思っています。診療面では、緊急性を要する「ドタバタ」がありません。幅広く疾患の勉強ができて、診療も行えます。穏やかな環境で、自分のペースを保ちながら、やりがいのある仕事ができますよ。

あまり体力が要求される仕事ではありません。他科に比べ、女性が活躍しやすい職場ではないでしょうか。例えば、産休・育休で1年間のブランクがあっても、勉強しておけば、腕が鈍って何かができないということはないです。職場復帰しやすいですし、時間外の仕事は基本的にないので、時短勤務とかパートタイム勤務なども採りやすいです。男女比は、今は少し男性が多めだと思いますが、これからは女性がどんどん増えてくるのではないかと思っています。

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