「小児科」のリアル 現役の専門医に直撃!|新専門医制度 19基本領域まるごと図鑑

「小児科」のリアル 現役の専門医に直撃!

この科の医師は――胸にキャラクター・子どものことになると人格変わる⁉

イラスト:イケウチリリー
取材・文:マイナビRESIDENT編集部

このコーナーは元々、医学生と初期研修医に将来のことを考える材料にしてもらおうと、『マイナビRESIDENT』用に作りました。2018年に開始した新専門医制度で基本領域になった19診療科の専門医に、その科の魅力やイマイチなところ、どんな人が向いているのか、「あるある」、一日の仕事の流れ、典型的な医師像などを「ぶっちゃけ」で語ってもらった記事です。こういった他科の詳細な情報は、転科や診療領域の追加を考えている医師にとっても有益だと考え、『マイナビDOCTOR』にも掲載することにしました。
小児科は、専門医の今西洋介(いまにし・ようすけ)さんに聞きました。

インタビューを受けていただいた医師

西洋介(いまにし・ようすけ)医師 = 1981年生まれ

■所属
大阪大学大学院医学系研究科特任研究員
■主な資格
小児科専門医、新生児専門医
■卒業大学
富山大学

* 医師の所属、主な資格は取材当時(2023年10~12月)

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インタビュー内容

Q1.なぜ小児科を専門に選んだのですか?

小児科医療は一つのインフラになっているし、困っている人を自分の仕事で助けられるなんて素晴らしい、と割と漠然と選びました。ただ、小学6年生の時から小児科医になりたいと思っていたんです。幼少期は体が弱くて、よく近所の小児科クリニックで夜中に診察してもらっていました。医師は嫌な顔一つせずに診てくれて、その姿に憧れを持つようになりました。医師を目指したのは、戦前に産婦人科医をしていた曽祖父の影響も大きいですね。僕が生まれる前に亡くなったので、祖父母や母から聞いた話ですが、曽祖父はお金のない人からは診療費を取らない「赤ひげ先生」(山本周五郎の小説『赤ひげ診療譚(たん)』の登場人物)のような医師だったそうです。地域の人からとても慕われていて、曽祖父の葬式では、地元の消防団が消防車をずらっと並べて感謝の気持ちを示していたとか。

余談ですが、大学時代には整形外科に一瞬、傾きました。僕は小中高、大学とずっとバスケットボール部で、医学部のバスケ部員は靭帯を切ったことがある人が多いからか、みんな整形外科を選ぶんです。それ以外の選択肢を選ぶのは「人じゃない」みたいな扱いだったんですよね(笑)。

Q2.小児科の良いところを教えてください

長い間感謝されるのは、すごく良いところだと思います。それだけ人生に大きな影響を与えられるということですから。僕は小児科の中でも新生児科歴が長く、生まれたての赤ちゃんから8歳くらいまでを診てきました。子どもとも家族とも付き合いが長くなるので、第3の親と思ってもらえることが多く、小児科から卒業しても交流のある人たちが多いです。診療した子の母親に「娘の結婚式で、一緒にバージンロードを歩いてください」と言われたこともあります。そこまで言ってもらえる仕事ってあまりないですよね。

自分が診た患者が医療従事者になることもあります。直接は診ていなくても、自身もかつては未熟児でNICU(新生児集中治療室)に入っていたという医師や看護師に出会うと、自分の仕事が誰かの未来につながっていると感じられます。

それと、社会的に立場の弱い人や、その人の抱える問題に出産・育児という切り口から関わることができるのは、小児科と新生児科の魅力だと思います。初期研修医時代の夜間診療で軽症の子どもを診た後に、指導医に言われた言葉が私の原点です。「そんな(緊急度の低い症状)ことでと思うのではなく、夜中に病院まで出向かなければならなかった背景を考えなさい」と教えられました。小児科医をしていると、いろいろな親と出会います。貧困層だけど支援が得られていなかったり、発達障害を持っていたり――。ニュースでも取り上げられている「産み捨て」問題では、出産した母親の生い立ちに虐待や貧困がある場合があって、母親だけの責任ではないと感じています。

Q3.小児科のイマイチなところはありますか?

常勤医時代は自分の健康を維持するので精いっぱいでした。当直が月に7、8回あって、NICU(新生児集中治療室)は急変する赤ちゃんも多いので寝られません。残業も結構多かったです。あと、今は出生前診断の技術が進んでいて、持っている病気が生まれる前にだいたい分かる時代なんですよね。病気を持っていることなどが分かった場合には、お父さん、お母さんと話し合わないといけないことがたくさんあって……。やっぱり肉体的にも精神的にもタフさが求められる環境でしたね。ただ、小児科の労働環境に関しては、一人当たりの負担を減らすように工夫している施設が増えてきていると思います。もっというと、ワーク・ライフ・バランスにはかなり敏感な診療科ですよ。小児科が「育休反対」とか言っていたら意味が分からないんで(笑)。

Q4.専門医としての技術や知識を磨くためにやっていることはありますか?

最新の情報を入手するために論文は常に読むようにしています。常勤医時代は忙しい中でも、研究をして論文を書いていました。今は大阪大学大学院に特任研究員として在籍しているので、研究がメインです。なので、現場感覚を忘れないために、当直に入るようにしています。新生児の点滴や採血、気管挿管といった手技はやり続けないと、すぐに腕が鈍ってしまいます。当直は一人で全て対応しないといけないので、ある意味独り占めできていいですよね。やっぱり現場にいるのが楽しいです。

Q5.小児科は何年ぐらいで、自信を持って診療できるようになれますか?

専門医を取ってから5~10年(卒後10~15年)で、外来診療を一人で対応できるようになれば、少し自信が付いてくると思います。ただ、小児科医が診療する対象年齢は、新生児から成人までとされていて、発達障害や学習障害、不登校も診療領域になるので、すごく幅が広いんですね。だから、僕は新生児科医として10年以上働いているので、全国どこのNICU(新生児集中治療室)でもやっていける自信はありますが、小児科医としてはまだまだ自信がないです。

Q6.小児科に向いている人を教えてください

子どもが好きな人は向いていますよ。あと小児科は総合診療的な側面もあるので、一般内科的なことがやりたい人にもお勧めします。というか、子どもが嫌いでなければ、どんな人でもいいと思います。向き不向きは、あまり気にしなくていいんじゃないかな。僕は、初期研修先の大勢いる同期の中で、採血が一番下手だったんですよ。周りからは「小児科医に向いてないんじゃないか」とからかわれて、若かりし頃の僕はすごく傷つきました(笑)。それでも小児科医が好きで続けていたら、今では「新生児の点滴が入らないんですが……」と同僚から頼られるくらい、採血や点滴がうまくなりましたから。

病院勤務の一日の流れ

Q7.小児科は開業に向いていますか?

診療報酬が安いという残念な点もありますが、開業医が最前線を担っている診療科なので、向いていますよ。絶対に患者はたくさんいますから。僕の知り合いで小児科医、新生児科医で開業した人は、軌道に乗っていることが多いですね。子育て世代が住むマンションの近辺など、開業する地域を吟味すれば、失敗するようなことはないと思います。あと、子どもだけじゃなくて大人も診られる小児科医はかなり需要がありますし、診療報酬も大きく上がるのでお勧めです。

Q8.もし小児科がなかったら、何科を選びますか?

小さい頃に重度のアトピー性皮膚炎を患っていたのもあって、皮膚科か形成外科はちょっとやってみたいです。小児の病院にも形成外科はあって、例えばやけどを皮膚移植で治すことがあります。どちらの診療科も、子どもの将来のための治療ができるし、再建術の需要はあるし、それができれば子どもを診る上で強いと思いますね。あと、「トラウマ」を抱える子どもを認知行動療法で治していくのも大事だから精神科もいいな――と、子どものことを思うと、やりたいことがたくさんあります。

Q9.他科の医師から一目置かれるのは何科ですか?

あえていうなら、小児心臓血管外科ですかね。未熟児の心臓ってめちゃくちゃ小さくて、その道で10年やっていてもできない手術とかがあるんです。熱心な人も多いし、職人の世界ですね。手術の機会を得るために病院に泊まり込む人もいますから。僕にはできないなと思います。

Q10.小児科の「あるある」を教えてください

子どもの1カ月健診や予防接種で、「元気ですか?」と尋ねると、お母さんが「私ですか?」と聞き返してきて、「いや、私(お母さん)じゃなくて、お子さんです」というやり取りをして、お互いに気まずくなってしまう。これを人生で何百回と繰り返していますね(笑)。「もちろんお母さんの健康も大事なんですけど、ここ小児科なんで」というフォローまでが一連の流れです。

NICU(新生児集中治療室)はテレビドラマにもなった漫画「コウノドリ」で有名になりましたが、それ以前は全然知られていなかったんです。産院での出産で状態の良くない新生児がNICUに搬送されてくるんですが、後から来るはずの父親が一向に現れないことがありました。そこで父親に電話をすると、病院の入り口で守衛さんのところにいるというんです。現場にいる守衛さんに説明をお願いしようと思い、電話を替わってもらうと「お父さん、『にく』ってところに行きたいんだけど、分からないんだって」と言われて……。「NICU」を「にく」と読んでいたんですね。

Q11.典型的な小児科医とはどんな人ですか?

男性は小柄で、穏やかで謙虚な人が多い印象です。でも子どもが関わることになると、ひょう変します。そこは譲れないんですよ。漫画「スラムダンク」に登場する安西監督みたいなイメージですね。普段は仏のように穏やかなのに、譲れない場面では「鬼」になる、まさにそういう感じです。女性はオールマイティでコミュニケーション能力が高く、穏やかで世話好きな人が多いです。おしゃべり好きで、笑顔が絶えない感じですね。

医学生・初期研修医へのメッセージ

「向き不向きよりも、前向き」というのが、僕の好きな言葉です。どんな仕事でもそうですが、好きなら慣れます。手先の器用さは後からどうとでもなるし、「自分に向いていないな」と最初に決めつけてしまうのはもったいないと思いますよ。やってみないと分からないことが多いですし、10年続けてつらいなと思ったら、仕事を変えたらいいでしょう。でも、10年続いた時点で素質があると思いますよ。

小児科については、長い間、少子化問題が叫ばれていますが、小児科医の需要は常に大きく、仕事は減らないと思います。すごく感謝されるし、未来がある子どもたちを治療することは絶対的な魅力があるので、お勧めします。

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