女性医師レポート|医師の現場と働き方|マイナビ【DOCTOR】

医師の現場と働き方

女性医師レポート

離婚・流産・不妊治療を乗り越えて
命を生み出す仕事と育児の両立を達成!

育児や子育てなどで男性と比べ、キャリアの積み重ねが難しい女性医師が働き続けるためのヒントを紹介。レポート第一弾は、女性として、医師としてボランティア活動や情報発信を積極的に行っている『船曳美也子先生』です。

プロフィール

医療法人オーク会

船曳美也子氏

1983年神戸大学文学部心理学科卒業、1991年兵庫医科大学卒業。女性医学を専門とする医療法人オーク会(大阪府)にて、不妊を中心とした女性の悩みに寄り添う。産婦人科専門医、認定女性医師。日本肥満学会会員。女性医師のグループEn女医会にも所属。

En女医会

150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現をめざしている。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてよりよい情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら

1日の働き方

仕事と家庭の割合は9:1→5:5に激変!

医師として、結婚してからも仕事と家庭に割くエネルギーは9:1の比率で、日々の仕事に没頭していたという船曳先生。しかし子どもが生まれると状況は一変した。
「育児にはかけるべき時間の絶対量があると感じ、仕事と家庭で同じくらいのエネルギーを割くようになりました」
現在、週3日は17:00頃、夕方から夜にかけて外来を務め、週2日は19:00頃の終業というスケジュールで勤務している。通常業務に加え、学会や講演会に向けての準備が必要なこともあり、多忙な毎日だ。
「仕事に集中して取り組むのはもちろんですが、自転車で10分ほどの通勤時間の間に気持ちを切り替え、帰宅するときにはリラックスして笑顔になることを意識しています。持ち帰りの仕事はなるべく発生しないよう調整し、たとえばテレビを見ているときは子どもと一緒に笑ったり話し合ったりすることを大切にしています。1日は24時間しかないわけですから、全部を背負い込もうとせず、『自分にしかできないこと』に力を注ぐべきだと考えています」

ある日のタイムスケジュール

  • 起床、子どもの見送り
  • 出勤
  • ミーティング
  • 外来
  • 外来・処置
  • 終業
  • 帰宅・家事
  • 就寝

医師はプレイヤー、母親はマネージャー

もともと私は文学部出身なのですが、在学中に医療関係のアルバイトをしたことをきっかけに医師という仕事の素晴らしさに気づき、卒業後あらためて医学部へ進学しました。臨床に出てからは産婦人科医として経験を積み、現在は不妊治療の最前線で働いています。
プライベートでは、32歳のときに医学生時代から交際していた方と結婚したのですが、3年後に離婚。お互いに研修医という猛烈に忙しい時期でしたが、「それでも家庭のことはきちんとしてほしい」という考えだった彼とはうまくいきませんでした。その後、同じ医局に入ってきた年下の医師と出会い、37歳のときに再婚することになりました。「家事は外注してもいいから医師の仕事に邁進してほしい」という考えの持ち主で、おかげで夫婦関係はとても良好だと思います。

子どもができてしばらくは保育園を利用していましたが、夜まで診察があるときには、夕方に当院の保育士が保育園まで迎えに行ってくれ、院内の託児所で終業まで預かってくれていました。院内には子育て世代の女性医師が多く、多くの方のサポートを受けながら、同僚たちと一緒に育児を乗り切ったという感覚です。現在は息子も成長し、まもなく中学生になるため、仕事との両立はかなりしやすくなりました。

子育て経験を通して感じるのは、医師はプレイヤーである一方、母親はマネージャーの立場だということ。強きプレイヤーとして仕事に励んできた女性医師の中には、マネージャーとしての役割には不慣れな方も多いかもしれません。「相手の良さを引き出す」「環境を整える」という視点を持ち、子どもをサポートする立場となることを理解することが重要ですね。

命を生み出す仕事の素晴らしさ

医療法人オーク会で毎月第2土曜日に開催される「体外受精セミナー」では、体外受精についての説明を行っている。

実は、私自身も不妊治療の経験者です。子どもの頃から「いつかお母さんになりたい」とはっきり考えていた記憶があるくらい、子を持つことは自分の中でとても強い願いだったのです。具体的には、再婚後にタイミング人工授精や10回に及ぶ体外受精を経験しました。一度は流産もしましたが、ついに43歳のときに出産に至りました。この過程で感じたのは、どれだけ治療を頑張っても100%妊娠できるわけではないという不条理な現実です。月に一度のチャンスを逃したと分かったときは落ち込むこともあり、いつゴールできるのか見えない道のりを歩むことの苦しさを身を持って味わいました。
ただ、自身が患者さんの立場になって、どんな不安を覚え、それを解消するためにどんな情報が欲しいのか、どんな言葉をかけられたらうれしいのかを知ったことは、医師として大きな糧ともなりました。「この治療で妊娠する確率は○%くらいです」といった客観的な事実をきちんとお伝えするとともに、苦しい道のりを行く患者さんの伴走者となるべく、精神的なサポートも欠かせません。同じコップの中の水を見ても、「もう半分しかない」と感じる人もいれば、「まだ半分もある」と感じる人もいますよね。不妊治療中は悲観的になる方も少なくないので、「まだ水は半分ありますから、挑戦してみませんか?」と前向きな言葉をかけることは非常に重要です。
なかなか妊娠できずあきらめムードだった患者さんが、ダイエットなども含めて不妊治療を続けられ、待望の結果が出たときは本当にうれしいものです。命を生み出すという実感が強く、医師として大きなやりがいを得られる領域で仕事ができていることに幸せを感じています。

「選択と集中」で笑顔をキープ!

今後のキャリアについては、国内のみならず海外にも情報発信できるようになることが目標です。ケータイやスマートフォンと同じように、日本の中だけを見ていると、どうしてもガラパゴス化してしまいます。現在も海外の学会などにできるだけ参加するようにしていますが、世界の標準治療に敏感であり続けると同時に、日本ならではの治療法を海外に伝えていくことにも力を尽くしたいと考えています。
家庭と仕事を両立したいと考えている女性医師のみなさんに伝えたいのは、「選択と集中」を意識することです。育児をするようになると、絶対に家に帰らないといけない時間が決まってしまいますから、より集中して効率的に仕事を進める必要があります。さらに重要なのは、「今はこれをやる」「この時期はこの分野に集中する」など、その時々の優先順位を決めて集中することです。すべてに100%で臨もうとすると必ず無理が出て、マイナスの流れが生まれてしまいます。人に任せるべきことは任せ、自分でやるべきことだけに取り組むことで、職場でも家庭でも笑顔でいられるのではないでしょうか。
実は、このことを教えてくれたのは息子でした。仕事を抱えすぎていた時期、「どうしてそんなに怖い顔をしているの?」と聞かれてハッとしました。自分ではそんなつもりはなくても、余裕のなさが家庭でも顔に出ていたのですね。それからは、無理にでも笑顔でいることを意識するようになりました。逆に、どうしても笑顔になれないときは、自分がいろいろなことを抱え込みすぎている証拠。「笑顔でいられること」を最優先事項に、これからも走り続けたいと思います。

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