導入は慎重に新専門医制度で懸念される点とは?|医師の現場と働き方

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導入は慎重に新専門医制度で懸念される点とは?

スケジュールが遅れていた新専門医制度ですが。ついに2018年4月、基本19領域で合計8378名(日本専門医機構「理事長挨拶」より)の専攻医が採用され本格的に始動しました。
スケジュールが遅れていたのも、新専門医制度の導入には慎重論があったためで、議論が重ねられていました。新専門医制度は今までの専門医制度に改善を加えたもののはず。なぜ導入に慎重になっていたのでしょうか? 新専門医制度で懸念されている点を説明します。

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1.新専門医制度と既存の専門医制度の違いとは?

既存の専門医制度には「研修内容や認定の基準がバラバラ」という欠点がありました。既存の専門医制度の認定プログラムは各学会が行っており、学会によって取得までの難易度に差がありました。専門医の種類によっては医療の質の担保をすることができない可能性があり、かつ仕組みが複雑で国民にとっても理解が難しいものとなっていて、新しい専門医制度のニーズが高まったのです。

新しい専門医制度と既存の専門医制度の一番の違いは「専門医制度の研究や認定の基準を第三者機関によって統一されているかどうか」というところにあります。新専門医制度では一般社団法人日本専門医機構によって、専門医育成プログラムが運営され、専門医自体も認定されます。

また、今までは100を超えるほどの専門医がありましたが、新専門医制度では19の基本領域と29の専門性の高いサブスペシャリティ領域に絞られます(今後、増減する可能性はあります)。またこれまでの専門医制度では専門医の取得は任意となっていましたが、新専門医制度では基本領域の専門医を取得することが基本となります。

基本的には新専門医制度を運用することで、医療の質が高まることが期待されています。ただし良い面だけではなく、問題点もあります。新専門医制度開始にあたって問題となっている事柄には以下のようなものがあります。

2.医療の地域偏在助長の可能性は?

新専門医取得のためには研修が必要になります。日本専門医機構によって作成されたプログラムに従い、地域の大学病院や総合病院などで中核施設とそのほかの連携施設で、研修を行うための協力・連携体制を取ることとなります。専門医のプログラムでは専門医を取得する専攻医3人に対して指導医が1人必要になります。しかし、そのために人気のある東京を中心とする都市圏に医師が偏在し、地域医療にダメージを与えてしまう可能性があるのです。

日本専門医機構のプログラムでは東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の5都道府県での専攻医採用の制限があります。だからといって、過疎地域や医師不足の地域では指導医・専攻医ともに不足し、医師の都市部偏重が助長されてしまう可能性は否定できません。とくに「地域医療に貢献したい」という希望を持っている若い専攻医が、その地域では自分の希望する専門医を取得できないため泣く泣く都市部で研修を受けるということもあるかもしれません。

新専門医制度の開始時期が近づいてきましたが、本当に医療の地域偏在を助長してしまうかどうかは運用を始めてみないと分からないところがあります。新専門医制度の議論の中では医療の地域偏在はそこまで大きな問題とならないようにプログラムされているはずですが、もし新専門医制度の始動で地域医療の質が低下するようならば早急に改善する必要が出てきます。

3.女性医師のキャリア形成が難しくなる可能性も

結婚や出産、育児で働き方が大きく変化する女性にとって、新専門医制度によってさらにキャリアプランが難しくなることが考えられます。新専門医を取得するためには、大学病院を初めとする中核施設だけではなく、そのほかの連携施設でも研修を受ける必要が出てきます。

専門医を取得するために3年程度の研修期間がありますが、その間、医療機関を転々とする必要があるため、結婚や妊娠、出産によっては専門医取得が大幅に遅れる可能性があります。また結婚や妊娠のため、そもそも専門医を取得しないという選択を取り、キャリアプランに大きな変化が出てしまうことも考えられます。

さらには新専門医の資格を取得した後の「更新」という問題もあります。せっかく専門医資格を取得しても、数年に一度は更新をする必要があります。更新にはさまざまな条件がありますが、医療機関での常勤医としての勤務や学術論文の発表、学会への出席、講習の受講などが単位となり、更新の可否が決まります。

女性は育児をしている期間、時間の融通が利く勤務形態を選ぶことが多い傾向にあります。しかし、更新のためには常勤医として就業することを強いられ、ライフプランとキャリアプラン、どちらかに支障がでます。

新専門医制度では「女性や地域で活躍する医師のために、プログラムを柔軟に運用する」という声明が出ています。しかし実際にどの程度柔軟になり、どの程度の負担になるかは始まってみないと分かりません。どんな制度であれ、開始当初は問題が出るものですが、医療の質を高め国民に安心を提供する新専門医制度では過度な混乱がないように願うのみです。

文:太田卓志(麻酔科医)

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