マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
厚労省検討会では、「循環器病情報センター」(仮称)設置に向けた報告書を大筋で了承。これまで患者さん本人や家族からの聞き込み以外に、循環器病の既住歴等を包括的かつ統一的に把握する方法が普及していないと指摘されてきましたが、センター設置によるデータベース構築により、救急搬送時に過去の治療歴などを閲覧できるメリットがあります。
厚生労働省の「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」(座長=永井良三自治医科大学長)は5日、公共性の高い診療情報を医療機関から収集し、集約・管理・提供する「循環器病情報センター」(仮称)を設置する方向性を盛り込んだ報告書案を大筋で了承した。データベースの構築によって救急搬送の際、医療機関が患者の過去の治療歴などを閲覧できるようになるメリットがあるという。【新井哉】
脳卒中や心疾患などの循環器病は、急性期には発症後、速やかに適切な診療を始める必要があるが、患者が疾患を再発した際、これまで受診していた医療機関とは違う医療機関に救急搬送される可能性がある。
報告書案では「現状では、急性期医療現場(救急搬送、医療機関搬入直後等)で、患者本人や家族からの聞き取り以外に、循環器病の既往歴等を包括的かつ統一的に把握する方法は普及していない」と指摘。こうした課題を踏まえ、診療情報を収集し、急性期医療に活用する必要性を挙げている。
診療情報を収集する対象疾患として、▽脳梗塞▽脳出血▽くも膜下出血▽急性冠症候群▽急性大動脈解離▽急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)―を提示。登録する際の留意事項も明記しており、例えば、脳出血では「外傷を伴う脳出血は対象とせず、内因性の脳出血のみを登録対象とする」としている。
診療情報収集の対象施設に関しては、当初は関連学会が認定する医療施設や救命救急センターを含めた「協力を得られる医療施設」を対象とするが、「将来的には、医療計画で脳卒中や心血管疾患について各種機能を担う医療機関として記載されている施設等も対象とすることを検討する」としている。
「循環器病情報センター」(仮称)については、関連学会などと連携した取り組みの実績を踏まえ、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)がその機能を担うことを想定。このほか、具体的な登録事項案もまとめており、例えば、脳梗塞では、「喫煙歴」「主幹動脈の閉塞・狭窄」「急性期血管内再開通療法実施の有無」などの項目を設けている。
収集した診療情報を公衆衛生で活用することも視野に入れている。循環器病分野では、政府統計や研究者・学会などがデータを収集してきたが、取り組みは限定的で、地域における正確な患者数や治療内容が明らかになっていないといった課題があるからだ。
このため、▽発症患者数▽医療機関への搬送状況▽急性期から回復期・維持期への転帰―といった診療情報を収集し、医療機関ごとや地域で把握する方向性を提示。収集された情報を地方自治体における診療提供体制や救急体制の構築、評価などに活用することで「公衆衛生の向上や地域間の医療の平準化にもつなげることが期待される」としている。
出典:医療介護CBニュース