公立病院・診療所の名誉回復策へ立ちはだかる壁|業界ニュース

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公立病院の不祥事、委員会報告書踏まえ「改革」も
~ガバナンス強化とコンプライアンス向上が鍵

マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
一度失った信頼を取り戻すことが容易でないのは、どの世界でも同じこと。診療報酬の不正請求や、職員の公金着服など不祥事が相次いだことで、市民からの信頼が失墜したのが公立病院や診療所です。現在、独立した委員会を設置してガバナンス強化とコンプライアンス向上に余念がありませんが、一方で一部公的医療機関では抜本対策が不十分との指摘も耳にします。不正請求関連に関しては、仮に保険医療機関の指定が取り消された場合、地域医療に及ぼす影響があまりに大きいという側面も影響していると思われます。

草加市立病院が公表した検証委員会報告書
草加市立病院が公表した検証委員会報告書

公立病院・診療所で診療報酬の不正請求や職員による公金の着服などの不祥事が相次いでいる。こうした医療機関では、失墜した市民らの信頼を取り戻そうと、独立した委員会を立ち上げるケースが少なくない。診療報酬の不正請求事案が起きた病院では、検証委員会がまとめた報告に関する病院事業管理者の「考え」をホームページに掲載し、「改革」や「信頼回復」に努める姿勢を示している。検証を踏まえ、ガバナンスの強化とコンプライアンスの意識向上を図れるのかが鍵を握りそうだ。【新井哉】

「今回、診療報酬上の制約を逸脱した婦人科手術により医療全体の信頼をも揺るがしかねない社会的な問題を生じせしめたことを改めて深く反省する」。草加市立病院(埼玉県草加市、380床)は4月23日、ホームページに市病院事業管理者の「考え」を掲載。ルールから外れた腹腔鏡下子宮頸がん手術と診療報酬の不正請求を検証した委員会の報告書を受け、組織体質を根本的に改め、「真に市民のための病院へと生まれ変わる」と“宣言“した。

委員会の報告書では、先進医療や保険診療の施設基準を満たしていないにもかかわらず、子宮体がん・子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術が長期間にわたって実施され、診療報酬請求が行われてきたことについて、「重大な医療事故につながりかねない問題だった」とした上で、「診療報酬請求の審査機関からの返戻がなかったことから、これを開腹手術として保険請求してきたことと併せて、病院事業管理上、問うべきことは多い」と指摘。病院事業管理者を筆頭とする「組織としての病院運営・管理体制」に問題があったとの見解を示している。

この報告書に対し、病院事業管理者は、産婦人科で不適切な診療が行われてきたことを「お詫び」。診療報酬の不正請求については、「請求事務担当職員の知識も不十分でかつ本来行うべき確認作業が行われていなかった」と不備を認め、報告書で求められた「病院内部統制者」(仮称)の導入を進める考えを示している。

また、医事業務の執行と医療安全管理の機能不全は、▽医事課の組織構成▽関連各部署の責任体制▽部署間の連携―の不備などが原因とされたことに触れ、他の病院の医療事務経験者の採用による医事課の体制強化や、日本医療機能評価機構が中立的、科学的・専門的な見地から評価する「病院機能評価」の受審準備などを進めているという。

職員の不正流用・着服の不祥事を受け、公金の取り扱いに関する方針をまとめた自治体もある。秋田県北秋田市は2018年12月、市立診療所で起きた公金の不正な取り扱いに関する「報告」と公金などの管理の適正化に関する「方針」を公表した。

同市の報告によると、18年7月、16年度と17年度の市立米沢診療所特別会計の決算額が、来院者の実績と照らして「不自然な状況」であることが判明。レセプト(診療報酬明細書)から概算した一部負担金などの収入と実際に市会計に納入された金額を比較したところ、17年度分について「大きな差異」が認められ、16年度分を含めて313万1400円が納入不足となっていた。

窓口納付された現金を市の収納代理金融機関に納入する事務を担当していた職員が流用・着服を認めたため、懲戒免職処分とし、関係職員の管理監督責任を問う処分を実施。全部局を対象とした調査で、窓口などで受領した現金について「不正を行おうとすれば、容易に流用や着服が可能」とする回答が複数あったという。

市は再発防止策として、管理監督職員が、▽前日からの繰越額▽当日の収納額▽当日の指定金融機関などへの納入額▽翌日への繰越額▽釣銭残高▽当日の保管残高―の確認を定期的に実施することや、指定金融機関に納入するため高額の現金を輸送する必要がある場合は、「原則として複数の職員による同行を命じて取り扱わせる」といったことを挙げている。

医療機器の不適切な使用も市民の信頼を損ないかねない。小樽市立病院(北海道小樽市、388床)は18年10月、感染症などを防ぐ目的で1回使っただけで捨てる「単回使用医療機器」(SUD)に関する調査結果を公表した。16年8月1日から18年4月20日までの間、48人に対して再使用した可能性があるとした。

SUDを巡っては、一部の医療機関で洗浄して再利用する「使い回し」が問題となっていたため、厚生労働省が17年9月、「特段の合理的理由がない限り、これを再使用しない」とする通知を都道府県に出していたが、同病院では、この通知が順守されていなかった形だ。

同病院は、「採血可能な全ての患者の血液検査を実施した結果、今回の事案を起因とした感染症は認められなかった」と説明。患者らに対する「お詫び」に加え、「今後、医療機器に関する情報について一括管理を行った上で、医療機器の使用方法について、感染の防止等の医療安全の観点から十分な確認、検討を行う」との方針を示した。

こうした事案が起きた際、委員会などの調査結果を再発防止に役立てようとする医療機関や自治体が少なくない。ただ、一部の公的医療機関では、抜本的な対策が不十分で、不祥事や不適切な事案が繰り返されるケースもある。特に診療報酬の不正請求に関しては、保険医療機関の指定が取り消された場合、地域医療に影響を及ぼすことが懸念されるため、あらかじめ防止策を考えておく必要があるだろう。

出典:医療介護CBニュース

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