マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
2020年度の診療報酬改定に向け、厚労省が提示した進め方は、人の一生を5つのステージに分けた上での患者の疾病構造や受療行動などを意識しつつ課題を整理することを1R(春から夏)とし、続く2R(秋以降)で外来・入院・在宅・歯科・調剤といった個別のテーマごとに検討を進めていくモデルが示されました。中医協側から強い反対意見はありませんでしたが、「(1Rで全てを議論するだけの)十分な時間はあるのか?」という指摘はあった模様です。
厚生労働省は27日、中央社会保険医療協議会・総会で、2020年度の診療報酬改定に向けた検討の項目と進め方を提示した。夏までに、周産期・乳幼児期や青年期、中年期といった患者の年代別の課題を整理するほか、医師らの働き方の見直しを踏まえた対応や、ICTの利活用など医療と関連性の高いテーマについて課題を洗い出す提案で、了承された。当面は、2つほどの議題を俎上に載せ、議論を進める方針だ。【松村秀士】
20年度改定への検討項目の案として、厚労省は、春から夏までの「1ラウンド」で、▽患者の疾病構造や受療行動などを意識しながら、年代別に課題を整理する▽最近の医療と関連性の高いテーマについて課題を整理する―方針を示した。診療報酬の項目にとらわれない活発な議論を促すのが狙い。
年代別の課題を整理する際には、「周産期・乳幼児期」「学童期・思春期」「青年期・壮年期・中年期」「高齢期」「人生の最終段階」の5つの人生のステージに分けて議論する。例えば「周産期・乳幼児期」については、周産期医療体制の確保、偶発合併症を有する妊婦やハイリスク妊婦への診療体制、新生児やNICUを退院した児に対する診療体制などをテーマとする。
「学童期・思春期」では、小学生の時期以降のかかりつけ医機能の在り方や思春期のメンタルヘルス対策、「青年期・壮年期・中年期」では産業保健との連携や生活習慣病に対する継続的な管理などを議論。「高齢期」に関しては、認知症への対応や重症度を踏まえた医療体制の構築、フレイル患者の特性に合わせた取り組みを議題とするほか、「人生の最終段階」では多職種による医療・ケアの取り組みやACP(人生会議)などの普及・定着に向けた取り組みなどを俎上に載せる。
最近の医療と関連性の高いテーマについては、▽患者にとって必要な情報提供や相談支援の在り方(診療計画書、明細書など)▽かかりつけ医機能と、かかりつけ薬剤師・薬局機能の連携▽紹介状なしで大病院を受診する時の定額負担▽医師らの働き方の見直しを踏まえた対応▽業務効率化の観点を踏まえた医師や看護師らの外来などの配置基準▽人口減少社会での医療体制の確保▽ICTやデータヘルスの利活用―などを取り上げ、課題を整理する。
■秋以降は外来・入院・在宅など個別テーマに分けて議論
「1ラウンド」でこれらをメーンに話し合う。秋以降の「2ラウンド」では、従来のように外来・入院・在宅・歯科・調剤といった個別のテーマに分け、他の審議会の議論などを踏まえて具体的な診療報酬での評価に向けて検討を進めるとした。
厚労省案に強い反対意見は出なかった。ただ、今村聡委員(日本医師会副会長)は、取り上げる予定の最近の医療と関連性の高いテーマは「非常に重要な項目ばかりだ」とした上で、「1ラウンドで全て議論するだけの十分な時間はあるのか。表層的な議論になっては意味がない」と指摘。どのように議論を進めるのか、厚労省の担当者にただした。
これに対して、同省保険局の森光敬子医療課長は、「ある程度はデータを出しながら説明をさせていただく。(毎回)2つぐらいのテーマで議論をしていきたい」と応じた。
このほか、委員からは、「重要なテーマを重点的にやっていただきたい」(猪口雄二・全日本病院協会会長)との要望や、「(患者の)年代別と、医療と関係性の高いテーマについて、評価上にエビデンスがあるのかないのかを踏まえて整理をしていただきたい」(吉森俊和・全国健康保険協会理事)といった意見が出た。
出典:医療介護CBニュース