マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
相次ぐ災害被害に悩まされた平成時代の終焉、そして本格的な在宅医療時代の到来が予測される新元号の時代を前に、厚労省では「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(WG)」で各都道府県による取り組みの進捗状況の把握、そしてバラつきの是正を急いでいるようです。
厚生労働省は、18日に開いた「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(WG)で、都道府県による在宅医療の充実に向けた取り組みについて、2019年2月時点の状況を報告した。また、同日のWGでは人工呼吸療法を受けている患者の災害時の対策についても議論を開始した。災害時に活用できる患者情報リストの作成を検討することや、非常用電源の確保の方法など具体的な対応・方向性について合意形成を目指す。【吉木ちひろ】
同WGでは18年12月に議論の内容を取りまとめ、その内容を踏まえ、在宅医療提供体制の整備において、これまであいまいだった都道府県の役割について厚労省が通知を出した。都道府県に対して、在宅医療の取り組み状況の見える化(データ分析)や在宅医療圏ごとの入退院支援ルールの策定などを求めている。
在宅医療の取り組み状況の見える化について、厚労省が示した調査結果によると、KDB(国保データベース)を活用した分析を実施しているのは14都道府県、退院支援ルールを全ての在宅医療圏で策定・支援しているのは16都道府県など、取り組み状況に差がある項目があった。
厚労省では、取り組みが進んでいない項目について「好事例の横展開を行いながら、取り組み状況の均てん化を図ってはどうか」と提案したが、構成員からは個々の取り組みができていない都道府県に対して「課題を乗り越えられるような提案が必要ではないか」という指摘があった。また、データ分析についてもKDBだけでは不十分とする意見などもあった。
今後、構成員の指摘や意見を踏まえながら、都道府県の取り組みについて年に2回程度進捗を確認していく予定。
同日のWGではこのほか、大規模停電などの災害に備えた在宅人工呼吸療法患者への支援の在り方が議題となった。18年の北海道胆振東部地震で被災し、広域・長期の停電を経験した札幌市の医療法人稲生会の土畠智幸理事長が参考人として当時の対応を説明した。
医療法人稲生会では、震災前の14年に大雨災害に遭っていたことから、災害対策チームを立ち上げ、停電時の電源確保策の資料作成や配布をしたり、在宅患者196名(うち80%が在宅人工呼吸)を重症度別に3グループに分類してリスト作成と毎月の更新を行ったりするなどの対策を事前に行っていたという。
被災直後は重症度の高い患者を優先して、安否確認や電源確保・避難入院のための移動支援を実施。地震が起きた2日後に全ての患者の安全と電気復旧を確認した。こうした経験から病院や行政で取り組むべき今後の対策として、▽効率的な避難入院システム▽医療機関での自家発電ができる体制▽在宅医療拠点への早期の復電▽災害時の避難所の電源状況の把握―などを報告。在宅医療拠点における災害対策システム構築に向けて公的支援を求めた。
厚労省は、稲生会の事例も参考に、在宅酸素を使って療養している患者について使用している機器を含んだ患者情報のリスト化や非常用の電源の確保、後方ベッドの確保など、医療機関との連携を今後の論点としており、「焦ってルール作りをするのではなく、丁寧に実効性のあるシステムを作っていく」との考えを示した。
出典:医療介護CBニュース