マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
社会に分散しているものの、現状では有効活用されていない元気高齢者の技能や知識をクラウド型のメディアで“因数分解”して抽出し、労働力として集約していく「高齢者クラウド」の経済効果の試算は「およそ23兆円」だそうです。この研究は現在、東京大学と日本IBMによって進められています――。
東京大などが進める「高齢者クラウド」の研究開発では、情報技術を用いて社会に散在している元気高齢者の知識や能力を集約し、労働力として再構築することを目指している。この研究成果が普及した場合の経済効果の試算は、「およそ23兆円」。この研究に関わる東京大の廣瀬通孝教授(情報理工系研究科)が「CareTEX2019」での8日の講演で紹介した。廣瀬教授は、介護助手としての活用の可能性にも触れた。【吉木ちひろ】
これから技能を身に付ける余力がある若年層に対して、高齢者の労働力の活用を考える上で重要な点は、現時点での知識や能力を生かす視点。廣瀬教授は「仕事と知識や能力の細かいマッチングが必要になる」と指摘した。
東京大と日本アイ・ビー・エム(東京都中央区)が進める研究では、社会に分散している元気高齢者の技能や知識を、クラウド型のメディアで“因数分解”して取り出し、労働力として集約していく。例えば、1人の高齢者の体力が不足して長時間働けなくても、複数の高齢者を仕事とマッチングさせることで“設計士1人分”、“営業担当者1人分”などに当たる労働力を捻出する。
現在、実証段階にあるツールの一つが、配車アプリの「Uber」(ウーバー)をもじったウェブプラットフォームの「GBER」(ジーバー)。仕事やボランティアなどの地域活動と登録した高齢者をマッチングする。特徴的な点は、登録した高齢者の行動を「プロファイリング」すること。オファーに応じて仕事を受けたり断ったりする高齢者の行動を分析して、マッチングの精度を上げていく。
研究は2019年4月に最終年度を迎え、こうしたツールの実用化と普及を目指しているという。
出典:医療介護CBニュース