マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
2015年、医療事故の再発防止を目的に創設された医療事故調査制度ですが、このたび、院内調査結果を報告した医療機関と遺族を対象に、制度その物に対するアンケートを実施。医療機関によって調査や体制、コミュニケーションに違いが見られました。
日本医療安全調査機構の医療事故調査・支援センター(センター)はこのほど、医療事故調査制度に対する意見などを問うアンケートの結果を公表した。医療事故調査を実施した医療機関では、調査中の遺族に対する連絡対応について、過半数が「遺族の心情を理解するよう心がけた」などと回答していた。一方、遺族からは医療機関の丁寧な説明を評価する意見が一部であったが、「納得できない」「納得できない点を遺族の意見として送付したが返答がない」などの意見もあった。同制度は、医療従事者が提供した医療に起因し、予期しなかった死亡事例を報告するもの。【吉木ちひろ】
アンケートは、実施期間が2018年の約4カ月。院内調査結果を報告した医療機関と遺族に対して行った。回答数は医療機関が80件、遺族が23件。
アンケート結果では、医療機関によって調査の体制や患者とのコミュニケーションに違いが見られた。医療機関がセンターに報告した事例について「医療事故」と判断したのは、「院内の複数医療者で合議し、管理者が判断」していたケースが最も多かった(58件)。そのほか「院内の複数医療者で合議し、かつ外部に相談した上で管理者が判断」(12件)、「外部に相談した上で管理者が判断」(5件)、「管理者のみで判断」(4件)などがあった。
医療事故調査を実施することになった経緯は、「医療機関が調査を実施することを決定し、遺族に説明した」が76件で95%を占め、「遺族から院内調査実施を提案し、医療機関が調査を実施することを決定した」が3件だった。「その他」は1件で、「他院で死亡し、他院から届出の必要性を示唆されて実施」との自由記載があった。
医療事故調査の結果に対する遺族の理解については、「医師や第三者的立場の医療者から疑問点について時間をかけて詳しく教えてもらい、その場で答えられない点も、その後に回答があった」などの意見と、「専門用語が多く、『わからないところは説明する』と言われたが、何を聞いてもいいのかも分からなかった」などの意見があり、受け止め方に差があった。また、調査には「概ね理解できた」と回答しながらも、「医学的な説明は理解できたが、スタッフの対応が悪かった。質問しても『分からない』『予測がつかない』ばかりであった」と、医療機関の対応について不満を感じている意見もあった。
院内調査後の医療機関との関係について、「関係性に問題はない」と回答した遺族は6件、「話し合い中」が6件、「示談した(和解済み)」が3件だった。「その他」としては、「弁護士に相談しようと考えている」「ただ、調査の結果を伝えてくるのみ」などの意見があった。
医療事故調査制度は医療事故の再発防止を目的に15年に創設された。医療事故の起きた機関が遺族に説明した上で、センターに報告。まず院内調査を開始し、その結果を遺族に説明、さらにその結果をセンターに報告する仕組み。
出典:医療介護CBニュース